あすはひのきになろう

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黒猫の遊歩あるいは美学講義【感想】

 

黒猫の遊歩あるいは美学講義

黒猫の遊歩あるいは美学講義

 

 2020年9月24日読了。

あらすじ

でたらめな地図に隠された意味、
しゃべる壁に隔てられた青年、
川に振りかけられた香水、
現れた住職と失踪した研究者、
頭蓋骨を探す映画監督、
楽器なしで奏でられる音楽……。

日常のなかにふと顔をのぞかせる、幻想と現実が交差する瞬間。
美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」は、
美学理論の講義を通して、その謎を解き明かしてゆく。

第1回アガサ・クリスティー賞受賞作!

 出典:https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000007347/author_MAgyo_MO_4218/page1/order/

 

 

感想

 ミステリーが好きな生徒におすすめの本を探している。 | レファレンス協同データベースで、『ビブリア』とか『タレーラン』とか『櫻子さん』とかと並べられてたので興味を惹かれて読んでみました。が、どうも僕には合わなかったようで……。

 あらすじにあるとおり、美学が専門の若き大学教授「黒猫」を探偵役に、ポオを研究している女性の「私」が語り部を務めるわけですが、この黒猫のペダンチックなうんちく語りがとにかく鼻について仕方ありませんでした。大多数の読者に馴染みのない分野の専門的な知識を有している探偵役は創作物中にごまんとおり、彼ら彼女らは作中においてそれらの知識を披露するわけですが、黒猫の専門である「美学」がとりわけ一般にとっつきにくい/あるいはとっつきにくそうな学問であることを差っ引いても(というかだからこそ)、もう少し読者のレベルまで下りてきて話してくれても良いのではと思わされます。せめて「美学」という学問がどういうものか、というところから話を始めてくれても良かったのではないでしょうか。重要な謎解きの部分についても、いわゆる一般的な日常の謎とも違い、事件(といえるかどうか微妙なものもありますが)関係者の心情を重視している点は面白いのですが、黒猫が彼ら彼女らの複雑な心情とそれに起因する行動をまるで全て理解しているかのように(一方であくまで他人事として)「私」に語って聞かせる種明かしの手法は、論理的な整合性は別に、心証としてはあまり愉快なものではありませんでした。語り部である「私」についても、ポオを研究しているというわりには黒猫にポオの話題で後れを取っているような印象は否めず、また推理の過程において何か重要な貢献を果たすといった場面もほとんどなく、黒猫とのラブロマンスの要素を取り入れるためだけに女性として設定しているのではないかと疑りたくなってしまいます。そもそも本作にその要素が必要かどうかという議論もあるでしょうが。

 一方で、本作が長く続いている人気シリーズであることは間違いないですし、ペダンチックな語りについても、僕が理解しようとする姿勢にかけているだけだと言われればぐうの音も出ません。物語全体に流れる空気感には統一感があって好ましく感じたのも確かですし。ですが続刊を読むかと言われると微妙です……。