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絶対彼女作らせるガール!【感想】

 

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

 

  2020年10月14日読了。

あらすじ

 恋愛必勝の女神は実在する――!? 優秀賞受賞作!

この学園には必勝の女神がいる――。白星絵馬の手のひらに願い事を書くと叶う、そんなジンクスといつも笑顔な人柄で学園でも人気のクラスの太陽・絵馬を尻目に、目立たず冴えない自称幽霊の大地は生徒会室へ。憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務のためだ。が、ある日、大地が偶然絵馬の「とある秘密」に触れたことで、絵馬が大地の恋愛を全力応援すると宣言! さらに絵馬を信奉する学園トップ美少女の猪熊みりあと鷹見エレナまで巻き込んで大地のモテ改革を開始!! 大地の学園生活は瞬く間に一変していき――!? 第13回新人賞<優秀賞>の正統派青春ラブコメ、爽快に登場!

出典:https://mfbunkoj.jp/product/zettai-kanojo/321708000294.html

  第13回MF文庫Jライトノベル新人賞<優秀賞>受賞時の審査員・志瑞祐による講評がこちら。

  恋愛ハウツーラノベという今風のコンセプトを上手く料理しており、テーマとエンタメのバランスが良く、構成の巧みさ、文章の読みやすさなど、投稿作の中でも抜群に完成度の高い作品でした。コンセプトを明確に打ち出した作品は、ともすればキャラクターのほうが疎かになってしまいがちなのですが、この作品はヒロインたちがそれぞれ魅力的で、可愛く描かれていたと思います。作中で語られる知識も豊富で面白く、これを読めば引きこもりラノベ作家でもコミュニケーション強者になれるかも、と思えた作品でした。

 

 

感想

 昔のラノベのように、陰キャネクラぼっちオタク主人公くんが特に理由もなくモテるのではなく、陰キャネクラぼっちオタク主人公くんがそのままでモテるわけないんだから、ちゃんと自己改革して陰キャネクラぼっちオタクを脱してからからモテなさいという、割と身も蓋もないマジレス感のあるものの、最近のラノベでは結構見かけるタイプの作品です。アニメ化も決まった『弱キャラ友崎くん』なんかはその急先鋒にあたるでしょう。選評の言葉を借りれば、「恋愛ハウツーラノベ」としての出来はむしろこちらに軍配が当たるかも知れません。例えば服選びについて、結局たどり着く結論は『友崎くん』と同じ「マネキン買い」なのですが、その結論に至るまでの説明が丁寧でした。あと主人公が何故モテないかを指摘するサブヒロインたちの台詞には時々こちらがハッとするものがありました。「女神スイッチ」を持つメイン(?)ヒロインも、ともすればうさんくささが際立ちそうですが、主人公にとってどこまでも都合が良い面と、その裏に隠された危うさが上手く表現されていた魅力的だったと思います。

 一方でストーリーは、終盤の処理が少し甘いと感じました。サブヒロインの過去とメインヒロインの過去が続けてネタばらしされるんですが、そのどちらもが本人もしくは家族から台詞でただ聞かされるだけで、もう少し工夫があっても良いのでは、と思いました。1人分ならまだしも、都合3人分を連続で聞かされるとややだれてしまいます。あと、成長した主人公を示す場面が、「名前いじりに対応できるようになる」ってのはどうなんですかね……。確かにコミュ力が向上したことをわかりやすく示す例ではありますが、同時に人間関係の不愉快な面という要素も強調されているように見え、そういう意図的な演出でなければもう少しポジティブな場面で成長を示して欲しかったです。

 ただ、全体としては十分面白かったので機会があれば続刊も読みたいと思います(2巻で打ち切られたみたいですが……)。