その日、朱音は空を飛んだ【感想】
2021年2月20日読了。どこか歪な思春期の人間関係を描いた傑作でした。
あらすじ
大ヒットシリーズ「響け! ユーフォニアム」の著者初の青春ミステリ
誰もが"あの時“経験したはずの(そして忘れてしまった) とても静かで生々しい青春のざらつき。 どうでもいいことが、死ぬほど大切だった–—本当に? 最後一ページ。歪められた青春の真実が明らかになるスクールミステリ。
感想
ある日学校の屋上から飛び降りた高校2年生の川崎朱音の死の真相に、彼女自身を含む7人の生徒の視点を通じて迫っていくというストーリーで、ほとんど関係性のない男子→クラスメートの女子→……→幼馴染→本人という風にだんだん彼女に近しい人物へと焦点が絞り込まれていき、「自殺するまでの彼女が何を考えていたか」が明らかになっていく様は鳥肌ものでした。エピローグ後の最終ページはなかなかに辛辣かつ衝撃的で、何とも形容しがたい読後感でした。一気読みでしたがなかなかしんどかったので、十分元気があるときに読むことをおすすめします。
一応ミステリに分類されてるようですが、どっちかというと謎解きに主眼が置かれているというよりは、視点が変わることによって人に対しても事象に対しても見方が変わることを生かした青春小説という方が適しているように感じます。単純な善悪では割り切れない、善意や悪意が意図したとおりに働くとは限らない思春期の少女たちの関係性が濃密に描写されており、伏線の隠し方も巧みです。非常に満足度の高い一冊でした。