あすはひのきになろう

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文学少女対数学少女【感想】

 

文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 

 2021年3月7日読了。

 

あらすじ

絢爛たる華文×青春本格ミステリ

高校二年生の〝文学少女〟陸秋槎は自作の推理小説をきっかけに、〝数学少女〟韓采蘆と出逢う。彼女は作者の陸さえ予想だにしない真相を導き出して……犯人当てをめぐる論理の探求「連続体仮説」のほか、ふたりが出逢う様々な謎とともに新たな作中作が提示されていく華文青春本格ミステリ連作集。解説・麻耶雄嵩

 出典:https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014712/

 

 

感想

 文学少女と数学少女が手に汗握る熱い戦いを繰り広げる……なんてことは一切なく、何なら別に対立もしないので、まぁタイトル詐欺と言えばタイトル詐欺な作品。

文学少女対数学少女〉というシリーズ名は、麻耶雄嵩の『貴族探偵対女探偵』 へのオマージュだ。(「あとがき」p.318)

 だそうなので、あんまりタイトルにとらわれない方がよさげ。あとがきや解説では「後期クイーン的問題」が云々かんぬんと論じられており、それはそれで興味深くはあるんですが、そんなことは知らなくても十分楽しめると思います(ソースは自分)。数学に関する蘊蓄は僕のような数学嫌いからしてみればやや辟易とするところもありますが(これは完全に僕のせい)、それを推理小説の手法と重ね合わせる表現は非常に巧みで、面白いと思いました。特に一話目の「連続体仮説」はオチで韓采蘆の示した結論が非常に明快で気持ち良く、個人的にお気に入りの一編です。「複数通りの犯人が考えられる」という作中作を扱う四話目の「グランディ級数」も残りページ数でどうやって解決するんやこれと思いながら読んでいったらあのオチで、決して悪い意味ではなく肩すかし食らった気分になりました。

 あとタイトルで検索かけるとサジェストに「百合」と出てくるんですが、それ目的で読むにはさすがに物足りないですね。確かにそれを意図してるっぽい匂わせはありますが、そういう情緒的な読み方が適している作品とは言いがたいでしょう。二人が仲良くなる過程を描くのではなく、仲良くなったという結果から二話目が始まっているところからもそう言わざるを得ません。

 最後に感想漁ってたら面白い考察を見つけたので、リンクを貼っときます。作者がどこまで意図してるのかしりませんが、こんなん気づけないですよ、さすがに……。

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