あすはひのきになろう

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楽園ノイズ【感想】

 

楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

 

 2021年3月27日読了。

 

あらすじ

それでも音楽はまだ鳴り続けている気がした――あの日のあの場所で。

 出来心で女装して演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生(男だけど)ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまう。顔は出してないから大丈夫、と思いきや、高校の音楽教師・華園美沙緒先生に正体がバレてしまい、弱みを握られてこき使われる羽目に……
 無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち――ひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音――によって騒がしく悩ましく彩られていく。
 恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!

 出典:https://dengekibunko.jp/product/paradise_noise/322001000035.html

 

 

感想

 一周回って最近こういう青春ど真ん中王道ボーイミーツガールラノベって最近見かけない気がする。僕が読んでないだけ?

 単巻完結もののお手本みたいな作品……って書いていたら来月新刊が出るらしい(リンク)。え、続きあるの?作者は音楽もののラノベを書くのが得意な人みたいで、あとがきによれば、本作は以前書いた『さよならピアノソナタ』というシリーズを意識して書いているそう。『さよならピアノソナタ』、ず~~~っと前から読もう読もうと思って読んでないんですよね、この機会に手を出すか……。

 お話はあらすじの通りで、まぁ大筋は割と既視感あるというか、テンプレラノベ(キャラ造形とか特にそう)って感じなんですが、最初に書いたとおり個人的にはこういうのを久しぶりに読んだので、そこまで面白さを損なってる印象はなかったです。物語や会話のテンポの良さもさることながら、本作において特筆すべきは音楽を文章であらわす表現力でしょう。ともすれば冗長にも感じられそうですが、ライブシーンやセッションシーンにおける主人公の一人称語りに臨場感があってとても良かったです。特に印象的だったところを引用しときます。

 けっきょくまたセッションだ、と僕は思う。

 しかたない。僕らにはこれしかないのだ。言葉は不確かで、不完全で、ときに不実で、ひとの心に伝わるまでに簡単に歪んだりねじ曲がったり壊れたり消えたりする。音楽は決してそんなことにならない。音楽にはそもそも意味なんてないからだ。弾き手と聴き手の心が空気の波を媒介としてただ震え、共鳴して、思い思いの幻想を作り出すだけ。(p.242より)

 ちなみに作中に登場する楽曲は作者本人がブログで動画を載せつつ解説しているので興味があったら見てみるのも良いかも。 

hikarus225.hatenablog.com

 で、このブログの末尾にも書いてありますが、p.335にあるQRコードは実際に読み込めるようになっており、あるイラストを見ることができます。こういうの、オタク好きですよね。僕も好きです。

 正直単巻完結でも全然良い気がするんですが、まぁ確かにもう少しヒロインも主人公も掘り下げる余地があるとは思うので、続きも読みたいと思います。