月とライカと吸血姫 2
2021年3月31日読了。
あらすじ
高度百キロメートルの宙から君を想う。
『ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフ・レプス中尉は、晴れて念願の宇宙飛行士候補生に復帰する運びとなった。それに合わせて吸血鬼の少女イリナ・ルミネスクを監視する任務からも解かれることになる。昼を生きるレフと夜を生きるイリナ。ふたりは同じ基地内でもすれ違ってしまう、そんな生活が続いていた。イリナの様子を気にかけつつも、レフは自身の夢を叶えるために「人類史上初」をかけた宇宙飛行士選抜試験に挑み、優秀なライバル達と鎬を削る。
その一方で、不穏な空気がイリナの周りを包もうとしていた。
「実験体が帰還したようです」
「……もう用済みだろう。廃棄処分を」回り始めた運命の歯車は、果たしてどこに行き着くのか――。
世界に渦巻く巨大なうねり。一枚岩ではない共和国政府。追いつけ追い越せと躍起になっている連合王国。いまだ人類が宇宙に行くことが奇跡だと思われていた時代。様々な思惑に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が織りなす、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。
感想
なるほど、こうきたかって感じ。
人類史上初の宇宙飛行士と祭り上げられれば祭り上げられるほど、イリナのことが想起され、彼女との距離が離れていくと感じるレフの心の動きの描写が非常に丁寧でした。銅貨というアイテムの使い方もきれいだし、場面の盛り上げ方も上手い。レフとイリナのまっすぐな思いと、常に不穏な空気が付きまとうお国柄、二人の思いすら掌の上で自らの利益のために利用する国のトップの対比もよく効いています。とても普遍的な面白さを持つ物語になっていると思います。
次巻では視点が変わり、連合王国側にスポットライトが当たる模様。期待して読みたいと思います。