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月とライカと吸血姫 3【感想】

 

月とライカと吸血姫3 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫3 (ガガガ文庫)

 

 2021年4月6日読了。

 

あらすじ

宙と青春の物語、連合王国編始動!
――これは人類史に残る偉大なる一歩。連合王国に、その礎を築いた若き二人がいた。

人類史上初をかけた有人宇宙飛行計画で、共和国に惨敗した連合王国。劣勢に立たされた王国議会は、途方もない計画を宣言する。
「我々は、人類を月面へ送り込み、帰還させることを約束する!」
王国南部の宇宙開発都市<ライカ・クレセント>の研究所では、同時にとあるプロジェクトが進んでいた。アーナック・ワン――それは『民族融和と科学技術大国推進』を打ち出し、汚名を払拭するための広報プロジェクトだった。
新人技術者のバート・ファイフィールドは、連合王国初の宇宙飛行士アーロンの弟であることを理由に、その人間代表に選ばれてしまう。そして、吸血鬼の末裔である新血種族代表は、アーロンの飛行を成功に導いた才媛カイエ・スカーレット。
研究所での仕事と、宣伝活動の二足の草鞋。不慣れな日々の中、バートはカイエの秘めたる想いを知っていく。
「――私は月なんて、大嫌い」

華々しい宇宙飛行の裏側には、語られることのない数多の人々の情熱が確かに存在した。宇宙を夢見る技術者の青年と新血種族の才媛が紡ぐ、宙と青春の物語がここに!

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09451720

 

 

感想

 前巻までの共和国から今度はアメリカをモデルとした連合王国編へ突入。今度のヒロインも吸血鬼ですが新血種族(ダンピール)と呼ばれる種族。恐らく当時の黒人差別をベースとして描写されていると思われます。ネタバレになりますが、終盤のリベルテ・エンジェルによるプログラム、『ハロー・ワールド』という行進は1963年のキング牧師によるワシントン大行進*1を想起させます(反転ここまで)。共和国編よりも差別そのものに焦点が強く当たっており、これまで以上に宇宙開発競争の負の面が強調されているように思いました。こっちの主人公はレフと比べると大分なよっとしていて頼りない感じなんですが、だからこそ後半にかけての成長が追いやすく、またヒロインのカイエと少しずつ共有する秘密が増え、絆を深めていく描写も丁寧で良かったと思います。

 ただし、レフとイリナの物語を踏まえて読む以上、今巻の内容は既定路線という感も否めず、次巻以降両国の主人公同士が出会ってからどのように物語が動くかに期待したいと思います。

*1:I Have a Dream.」の演説で有名なやつ