あすはひのきになろう

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弱キャラ友崎くん Lv.9【感想】

 

弱キャラ友崎くん Lv.9 (ガガガ文庫)
 

 2021年5月13日読了。

 

あらすじ

付き合って初めて、わかること。
冬。彼女である菊池さんとすれ違ってしまった俺は、言葉を重ねてもう一度心の距離を近づけようとする。

そのなかで、俺は自分の業とも呼ぶべきものに向き合うことになる。
それは、今まで気付かなかった菊池さんの一面をも明らかにして――。

弱キャラのままでは絶対に気付かなかったこと。気付けなかったこと。
そして、俺にとっても菊池さんにとっても特別な、日南葵という存在。

俺は初めての彼女と、この難問をクリアすることができるのだろうか。

人生のバイブル的青春小説、待望の第9巻!

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09451878

 

 

感想

 アニメが結構良くも悪くも平凡な出来でしたが、やはり内省的な要素が多い分文章の方が入り込みやすいですね*1。改めて本作の非凡さを再確認できたと思います。今回めちゃくちゃ印象的だったのは、登場人物がみんな異常に論理的なとこですね。正直ちょっと引くくらい。主人公をはじめとして、日南も菊池さんも自分の考えを明確に言語化して、一つ一つ組み上げた上で結論を出していってる印象を受けました。この人たち、感情で物事を選択しないんですよね。同じようなことは作中で日南にも言われてましたけど友崎も菊池さんもそこらへんは変わらんように思います。もしくは自らの選択に後追いであろうときちんと説明を付けずにはいられない、と言っても良い。菊池さんが絡むと比喩が増えるせいか「弱友は文学性が高い」みたいな言説もしばしば見かけますが、個人的にはどっちかっつーと説明文に近いと思います。国語の時間で説明文の論理展開を図式化とかして追ったことあると思うんですけど、本作でもそれができるんじゃないかと思っちゃうくらい筋道立ってる。やりませんけど。まぁあくまでも通り一遍読んだだけの印象なんで、いや違うという反論もあろうとは思います。

 興味深かったのは中盤の足軽さんとの会話。これ結構本質臭いんですけど、個人として強く自立している友崎とか、そうあることを自らに課して「寂しくても平気」(p.221)と言う日南が他者と生きる意味ってなんなんでしょうね。

 僕は初期からずっと菊池さん派であるとはいえ、それを差っ引いても結構満足したんですが、密林のレビューとか見てると結構酷評も目立ってて*2、確かにヒロインレースものとしてみると不満が多いのも分からなくはないです。特にみみみファンとかは泣いていい、ほとんど踏み台だもんね……。まぁでも多分この作品恋愛にそんな力点置いてないというか、大事なのはそこよりももう日南葵がどういう変化を遂げるのか、もしくは遂げないのかですよね。友崎が誰とくっつくかってのはまぁみんな何パターンか考えられると思うんですが、ここから日南をどう崩していくのか、最終的に彼女がどういう理屈を付けてどういう選択をするのかってのはちょっと予想が付かない。一般的な文脈で言えば友崎が口八丁手八丁で人生の面白さ的なものを伝えて彼女の生き方を変えて終わりですが、ここまできてさすがにそれはないでしょ。

 で、次巻では日南自身が変化を望んでいるのか、その変化は彼女にとってプラスに働くのか、といったことを検討することになりそう。引っ張りに引っ張った彼女の過去はそろそろ明かされるんでしょうか。

*1:というか似たようなノリなのにアニメが流行った俺ガイルが異常な気もする。まぁ語りの面白さとかヒロインの可愛さとかウケる要素はいろいろあったと思うけど

*2:もちろん評価全体としては星5が圧倒的ですが