あすはひのきになろう

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月とライカと吸血姫 5【感想】

 

 2021年5月28日読了。

 

あらすじ

誰がために、月を目指すのか
共和国の宇宙開発が停滞するなか、それまで後手に喫していた連合王国は資金力と組織力を武器に目覚ましい成果を上げ続けていた。一方、焦りを募らせる共和国政府上層部は、人命を軽視した無理難題を現場に押し付ける。
〈ライカ44〉の訓練センターの副長官に昇進したレフは、同じく教官を務めるイリナと後進の育成に励みつつ、自らも月への飛行のため訓練を続けていた。
そんな中、レフの同期であるミハイルとローザが結婚するというニュースが飛び込む。しかしそれは、停滞気味の宇宙開発を隠蔽したい政府によって仕組まれた強制結婚。憤るレフとイリナだが、さらなる理不尽が彼らを待ち受けていて……。
宇宙飛行士は、技術者は「人類の夢」のため、いつだって命がけだ。しかし、国家の威信という名の下に、政府の駒であり続けるのは本当に正しいことなのだろうか。
これは、世界が東西に二分され、月を目指し争っていた時代の物語。その光と陰、表と裏の歴史に、宙に焦がれた人と吸血鬼がいた。
宙と青春のコスモノーツグラフィティ、新章「月面着陸計画編」ここに始動! 

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09451804

 

 

感想

 あとがきにもあるとおり、「既巻は「主人公とヒロインは最後良い感じに勝って終わるだろう」的なハリウッド王道感でしたが、今巻は「え? あ? あー……あ……エ……」という感じ」(p.335)でした。過去になく重苦しく暗い雰囲気が続き、遂に取り返しのつかない事態が発生します。一方で、だからこそ困難な状況でも活路を見出そうとする主人公とヒロインや、残された希望、若者たちの青春と恋の描写が強く映えているのではないかと思います。今巻では「自由が制限される社会主義国家の中でいかにベストを尽くすか」という点に焦点があてられていて、たとえ優秀な人材が揃っていても、その上に立つものが無能では何の意味も無いという好例だったと思います。レフの周りの人たちが良い人ばかりで、彼らとの関係性もすっかり安定していて(ついてにイリナともイチャイチャして)いるからこそ、環境や状況に縛られるどうしようもなさが痛烈に伝わってきて、なかなかしんどいところでした。ただ、展開としても、その明るい暗いの違いはあれどこれまで以上に盛り上がる場面が多く、飽きることなく一気読みできました。いよいよ真のラスボス(というよりは黒幕?)の目的が明らかになった感もあり、クライマックスへ向けて物語が加速しそうです。やはり月面着陸して終わりかな? ここまで史実に拠ってきた物語だからこそ、大きくズレてきた今後の展開が気になります。

 テレビアニメ化も決まっている本作ですが、アニメではどこまで描かれるんだろう……丁寧に作って欲しい反面、この辺まで映像で見たいという欲求も……。