あすはひのきになろう

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劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト【感想】

cinema.revuestarlight.com

 2021年6月4日鑑賞。たまたま時間があったので初日に行ってきました。結論だけ書いとくと、テレビシリーズが気に入った人はなるたけ劇場で見た方が良い。逆に合わなかった人は避けるのが吉。あと、初見は回れ右して帰った方が良いです。初見でもわかります」とか嘘も良いとこ。何ならテレビシリーズとロロロ見ててもわからんかったもん。途中からネタバレありの感想になります。未見の方はご注意下さい。

 

INTRODUCTION

スタァライト」――それは遠い星の、ずっと昔の、遙か未来のお話。
この戯曲で舞台のキラめきを浴びた二人の少女は、運命を交換しました。
「二人でスタァに」「舞台で待ってる」

普通の楽しみ、喜びを焼き尽くして、運命を果たすために。
わずか5歳で運命を溶鉱炉に。

――危険、ですねぇ。

やがて二人は再会します。
一人は悲劇の舞台に立ち続け、もう一人は飛び入り、引き離され、飛び入り、
二人の運命を書き換えて……キラめきに満ちた新章を生みだしたのでした。

もう目を焼かれて塔から落ちた少女も、幽閉されていた少女もいません。
ならば……その新章の結末は?

スタァライト」は作者不詳の物語。
キラめきはどこから来て、どこに向かうのか。
そして、この物語の『主演』は誰か。

私は、それが観たいのです。

ねぇ――聖翔音楽学園三年生、愛城華恋さん?

出典:https://cinema.revuestarlight.com/

 

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感想

 時系列としてはテレビシリーズの後、第99期生たちが学園の3年生になり、皆が進路希望の面談を行うところから始まります。それぞれがそれぞれの理由で進路を選択する中、華恋の希望書だけは白紙のまま。そして神楽ひかりは何故か自主退学していた……みたいなプロローグ。そんな中、再びレヴューに誘われた99期生たちが各々に「けりをつける」ことを迫られる中、華恋はひとりだけ別の電車の中に取り残されます。ロンドンにいたひかりはレヴューの開幕を知り、華恋のもとへと急ぐが……という感じのお話です。内容としては半分弱くらいがひかりとの出会い~別れてからの華恋の回想、もう半分がレヴューって体感でした。本当は第101回聖翔祭の戯曲「スタァライト」公演に向けての話がチラッと出てきたり、もっと色々な話があるんだけどね。

 今回のレヴューは「ワイルドスクリーンバロック」と銘打たれていて、これは恐らく「ワイドスクリーン・バロック」をもじったもの。Wikipediaの引用をさらに引用させてもらうと*1

時間と空間を手玉に取り、気の狂ったスズメバチのようにブンブン飛びまわる。機知に富み、深遠であると同時に軽薄
— ブライアン・W・オールディス、『十億年の宴』p.305より 浅倉久志

出典:ワイドスクリーン・バロック - Wikipedia

 な作品のことを指すらしい。なるほど、レヴューにおいて空間が縦横無尽に使い尽くされることは言うまでもないし、特に過去と未来に視点が拡張される本作はまさに「時間と空間を手玉に」取っているし、冒頭初っぱなで爆ぜるトマト*2に代表されるように非常に暗喩的なモチーフが多用される一方で、テレビシリーズ第12話の「約束タワーブリッジ」のようなぶっ飛びすぎてて笑うしかない、みたいな演出をシリアスなシーンでも平気でぶっこんてくる様は、「機知に富み、深遠であると同時に軽薄」と表現しうるでしょう。ちょっと脱線すると、この「ぶっ飛んでて下手すると笑っちゃうんだけどやってる方は至って真剣でシリアス」っていうのが舞台というのをよく象徴していると思っていて、例えば漫画『弱虫ペダル』の舞台は、この画像のように、棒っぽいものを持つことで自転車のハンドルを表現しているんですが、ここだけを切り取って醒めた目で見てしまうと絵面としてはとてもシュールだし、ともすればなんだか幼稚にも見えてしまいます。しかし、この棒を真に迫った自転車に変えてしまうのが舞台であり、演者と演出であるのだと思います。これはスタァライトにも共通していて、端から見れば、また現実的に考えれば荒唐無稽で意味不明ですが、それこそが魅力というか、世界観に没入し、クリエイターの意図を直感により理解することを求められている感じが、非常に舞台っぽいなぁと個人的に感じています。まぁ舞台を見たの、小学生の時に1回劇団四季の公演見ただけなんだけどね。

 で、具体的な鑑賞した感想ですが、めちゃくちゃ良かったのは作り手側がマジで好きに作ったんだろうなっていうのがひしひし伝わってきたところ。もう本当にやりたい放題で、見ててホントに楽しかった。鑑賞後、正直なところ「意味わからん」って感想だったんだけど、決して不満足では無かったし、むしろ大満足でした。2時間くらいのはずなんですが、映像体験の濃密さとしてはその倍くらいの体感時間があった気がします。映像そのものでぶん殴ってくる感覚はかなり久しぶりというか、何なら僕の人生の中では一番すごかったかもしれません。一方で、物語の方は割とわかったようなわからんような……って感じで、多分大意は十分伝わってきたんですけど、何分演出がアレでアレなもんで、1回見ただけだとどうしてもちょいちょいつながりがよくわからんというか、どうしてこうなったんだろうみたいなところがありました。全体的に抽象的だしね。というわけで、テレビシリーズを完走した方は是非劇場で鑑賞することをおすすめします、全然つまらんかった!とは絶対ならないはずなので。

 以下の内容は本編のネタバレを含みます! 未鑑賞の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 ざっくり場面ごとに分けて感想をメモ代わりに書いときます。

・進路の面談をする99期生

 何人かが書いてた国立第一歌劇団(曖昧)みたいなのはもしかしなくても多分宝塚歌劇団っぽい。見学先のシアターも宝塚っぽかったらしいし(華恋たちは行けなかったくさいけどね……)。あとは第二希望に劇団四季もじったのもあったし、純奈は早稲田もどきも選択肢に入れてましたね。まぁそのせいでこの後ばななにブチ切れられるわけですが……。一人終わるごとに壁にとめてある「聖翔学園の歴史」的なボードが映ってたんだけど、単純に進路の話ってだからでいいのかな。そして華恋は一人だけ進路が決まっていないと。恐らくそれまで指針となっていたひかりが側を離れたことで行くべき道を定められなくなってたんでしょうね。

・香子さんイライラ

 「しょーもない」というフレーズが印象的でしたね。これに限らずスタァライトは重要フレーズは死ぬほど繰り返し聞かせてくれるので、そこは親切ですね。キリンとか多分3回くらい「電車は次の駅行くけど、舞台は?お前は?」みたいな話してたぞ。ここでオーディション当時の熱量が失われていることが指摘されるわけですが、初見的にはえ?そうなん?みんな立派に将来のこと考えれてて偉いやんみたいに思ってました。その辺は後々分かってくるところ。てかレヴュー見た後なので今思うとここの香子、双葉と進路違ったイライラを八つ当たりしてるだけでは?ってなりますね(だから「うちが一番しょーもない」んでしょうけど)。で、ばななさんはばななさんで「みんな喋りすぎ」とかいう謎の理由でイライラしてたみたい。いや、見た目全然イライラしてなかったんだけど、この後のレヴュー見たらガチギレしてて引いちゃった。正直よくわからんですが、多分テレビシリーズのころはそれなりにみんな仲良くても、込み入った相談事は互いにしてなかったというか、レヴューで殴り合って気持ちを伝え合ってたので、今みたいに言葉で馴れ合わずに舞台少女なら舞台で語れやみたいな意味合いなんかなと受け取ってます。

・皆殺しのレヴュー

 当然のように変形する電車*3。これはオーディションではない。ばなな無双。流血。うろたえるなッ! 強いお酒を飲み過ぎちゃったみたい。

 かつてない緊張感でしたね。純奈ちゃん、一瞬マジで死んだかと思ってクソビビった。電車の変形シーン、異様に気合い入っててもう一回みたい。オーディションではない=トップスタァを決めるレヴューではない≒自分自身にけりを付けるワイルドスクリーンバロックという本作の中心軸を繰り返し明示してたんですね。で、ばなながめちゃくちゃ強い。1対5*4やぞ。ばなな、二刀流なんですけど確か最初脇差しだけで戦ってて、その後届けられた太刀も解放して無双、って感じだった気がします。今思うとなんでかわかんないんですけど見てるときはずっとスターウォーズ見てる感じでしたね。そんくらい殺陣にも力入ってた。で、強い酒が云々が一番解釈できてなくて、例えば年齢とタイムリープを絡めてこのばななが未来から来てる、みたいな考察もできると思うんですけどなかなか確証は持てなさそう。個人的には、「強いお酒を飲み過ぎたみたい」という現在の状況にそぐわない台詞≒舞台の台詞を口にした、つまり舞台の幕が上がっているにもかかわらず、誰もその世界観に応じることができずまごまごしてるばかりだったのが気にいらんかったんかなぁみたいに思ってます。

・第100回聖翔祭に向けて

 舞台創造科は良いとして、俳優育成科も結構な人数いたけどあれ全員「スタァライト」でちゃんと役もらえてるんですかね……? 脚本の子と演出の子の話がチラッと。マジでチラッとだったので何ならなくても良い気がしたけどみんなが気持ち切り替えるのに必要な描写ではあったかな。というか手書き原稿あがったのあんなにギリギリだったのに次のカットでもう製本ずみの脚本配付されてるのすごすぎでしょ。どんな魔法使ったんだよ。

・怨みのレヴュー

 痴話喧嘩。マジでそれ以外の何物でもない。ヤクザだったり、賭博だったり、デコトラ*5だったり。全編通しての話ですが、どのレヴューでもキャラの顔がアップになって歌ってるカット入るんですけど、そこの口パクがめっちゃ歌詞の発声とぴったし合っててすごい気持ち良かった。双葉は香子に並び立てるようにと進路を決めたんですが、香子からしてみればそれは欺瞞だと。双葉が初めて風〇来た純情少年みたいになってて草生えた。なんやかんやあって仲直りって感じ。まぁそろそろお互いに一回距離取った方が良いでしょうって気はする。

・競演のレヴュー

 まさかのオリンピックネタ。いつこの演出で行くと決めたのかわかりませんが、昨今の情勢的に結構ヒヤヒヤしながら見てたら、今度はホラー演出的な意味合いでのヒヤヒヤが始まって、ここは劇場に見に行くアドが結構デカいと思います。皆殺しのレヴューを経ているかどうかの差が明確に出てましたね。まぁ華恋が心配でロンドンから爆速で帰って来たら待ってたのがヤンデレって確かにひかりの方からしたら意味わかんないですもんね。まひる的にひかりが華恋を託すに足るかどうか計ってた感じ。お前は保護者か?

・狩りのレヴュー

 がーお。まひるとばななの中の人はテレビシリーズのころよりずっと演技上手くなってたと思います。いつの間にか純奈が偉人の名言botになってて、まぁそりゃ借り物の力じゃばななさんには勝てないよねっていう。鑑賞時は「テレビシリーズじゃちゃんと自分の言葉で語ってた*6じゃん、なんで今更bot化してんの?」って思ってたんですが、それ自体がテレビシリーズ当時からの退化を表してたんでしょうね。あんまり理解できてなかった。で、ブチ切ればななから切腹を迫られるんですが、これがその後の「殺してみせろよ 大場なな」につながるんですね。はえ~。渡された短刀と砕かれた宝石を合体させて武器が生まれ変わる≒再生産されるわけですが、弓使いってなんで最終的にみんな弓使わなくなるんですかね……。いや胸熱展開ではあるんだけどさ。で、お話としてはどっちかというとばななが純奈への未練を捨てるって話の方が大きかったかなと。もともと再演無限ループもみんなを守ろうという考えに基づくものでしたしね。最後ばななが泣いて、お前人の心があったのか……と思っちゃった。失礼。

・魂のレヴュー

 This is キャンセル。クソデカ鳥バード。「私はいつだって可愛い!」っておっしゃってましたけど、すみません真矢さん、僕あなたのこと可愛いとは思ったことなかったです……。映像美という点で言うとここが一番すごい。なんかふわっとした言葉なんですけど、すごい芸術的なんですよね。絵画のモチーフ*7が良い味出してた。他の組みと違って途中までガチで舞台を演じてるので、あんまりきちんと覚えてないんですが、なんか最後らへんお互いにめっちゃ褒めあってたのは覚えてる。結構中味も抽象的だったので多分二人の関係性をあんまり理解できてない。どうぶつしょうぎするくらい仲が良いってだけじゃダメ?

・キリン

 場面というか、サブリミナル的に登場してたのでまとめてここで。キリン=舞台の観客≒我々って認識で正しいと思うんですが、我々は野菜だった……? 真面目に参考となる知識をメモっとくと、イタリア・ルネサンス期の画家、ジュゼッペ・アルチンボルドの作風をモチーフにしていると思われます。この人が描いた絵を見たらあ~なるほどね、となるはず(参考)。で、最初は「間に合わない……!」と焦りながら爆走していたキリンですが、最終的には燃えます。キリンが親指を立てながら溶鉱炉へ沈んでいくシーンは涙なしでは見れなかった。冒頭のシーンで登場したトマトと同様に、野菜でかたどられたキリンもまた舞台少女の燃料だった。要は、キリン的には舞台少女がキラめきを失うくらいなら、自分がその舞台を見れずともその身を捧げる方を望んだってことでしょうか。わかりま……わかり……わからん。

・レヴュースタァライト

 ひかりと離れた後華恋がどういう人生を歩んできたかという回想を挟みつつレヴューが進行していたわけですが、パンフで監督と脚本が劇場版は「スパダリ」的存在だった華恋を人間にする話、みたいに言ってたのが印象的でした。過去と現在を行ったり来たりするのは結構見てる側の混乱を招きがちなのですが、まぁそう言われると必要な手続きだったかなぁと。舞台少女の華恋が3人くらいの過去の華恋と決別するシーンが印象的でしたね。いや舞台少女、修羅の道すぎる。あとは第四の壁の話ですね。アニメ見てて「おっこの娘俺のこと見てんじゃ~んw」みたいなことはちょいちょいありますが、ガチで「アニメキャラがアニメキャラを見てる俺のことを見てる」体験はなかなかできないんじゃないですかね。キャラと目が合ったと感じたのは人生で初めてでした。ただ言ってる内容は正直よくわからんかった(小声)。ひかりと華恋の話、ホントに1回見ただけだとよく分からなくって、なんか途中で1回華恋死ぬし、と思ったらT(ポジションゼロ)になってマスドライバーを駆け上るし、そしたら生き返ってるしで多分劇場で見てなかったらケタケタ笑ってたぞ。ここらへん勢いがホントすごくて、わけわかんなかったけどテンションはばちくそ上がった。でもとりあえず東京タワーには一回謝っといた方が良いんじゃないか? 多分円盤買うんでそのときもう一回見ようと思います。

・ED~ラストカット

 めばち絵~。さっきの第四の壁の話も相まって、これもみんなが僕に語りかけてんのかなとか思ったんですが、それだと確かクロの台詞だけ違和感あったような。ラストシーンは華恋役の小山百代が実際にスタァライトのオーディションを受けたときの服装だったそうで。華恋「スタァライトしちゃいます!」面接者「???」周り「ざわざわ……」みたいにならなかったかだけが心配。

 ダラダラとまとまりがない感想とも言えないメモでしたが、実際のところ一時停止しつつ他の誰かとここどんな意味なんだろうねーと語り合いながら見たいアニメです。繰り返しますが、もし未見でここまで突っ走ってる人がいたら、テレビシリーズが気に入ったなら(できれば再生産総集編『ロンド・ロンド・ロンド』も見た上で)、是非劇場へ。損はしないはずだから。

 最後に神曲「私たちはもう舞台の上」貼って終わりますね。この感想書きながらずっと流してたので冗談抜きで100回くらい聞いてるんじゃないか? フルはよ。

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 ネタバレありの感想として、以下を参考にさせていただきました。最後らへんの解釈とか、多分大体あってそう。

note.com

*1:研究じゃ絶対にやっちゃ駄目なやつ

*2:恐らくこの映画を見なければ一生結びつかない単語同士だろう、「爆ぜる」と「トマト」

*3:ちなみに電車の席割はみんなの進路と一致してるらしい

*4:華恋はいつの間にか消えてた

*5:そもそもこの単語を思い出すのに鑑賞中まぁまぁ時間がかかった

*6:個人的に口上は純奈のが一番かっこいいと思ってる

*7:というか額縁を使った演出と言うべきか