あすはひのきになろう

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ぼくたちのリメイク9 怪物のはじまり【感想】

 

2021年8月10日読了。

 

あらすじ

いま何かを頑張っているあなたの為にある青春作り直しストーリー、第9巻!


「福岡に――いっしょに来てくれん?」体調を崩し倒れてしまったシノアキの付き添いとして福岡の実家へと向かった僕、橋場恭也。彼女が生まれ育った故郷を見て、家族と触れ合い、知らなかった一面を少しずつ知っていく。夜、連れてこられたのは彼女の亡くなったお母さんのアトリエだった。絵を描くことに向き合ってきたシノアキと家族との本当の関係性を知った僕は、一つの決断を下すことに――。大芸大では貫之、ナナコ、河瀬川、九路田、皆が一人一人で夢を追っていくなかシノアキを追い続けてきた斎川はとある異変に気付き……。青春作り直しストーリー、失ってしまったものを取り戻すための第9巻。

出典:https://mfbunkoj.jp/product/bokutachi-remake/322103001904.html

 

 

感想

 βも完結し、アニメも放送中で今をときめく本作ですが、思った以上に踏み込んだテーマを描くなぁというのが正直なところです。めちゃくちゃ単純化すると、「クリエイターにとって健康と作品のクオリティ、どっちが大切?」って話。「クオリティを人質にすんな」*1という言葉が思い出されます。思想的には僕は茉平寄り*2なので、主人公の選択は作中で「地獄」と喩えられている通り、非常に重いものととらえています。特にシノアキについては、今回ご実家にまでお伺いしてあんだけ丁寧に前振りしてるので、さぞかし大変なことになるんやろなぁ……って感じです。チラッと気になったのは、主人公がタイプスリップするに当たり残ってる記憶が「個人的な体験と、エンタメ周りの流れ」と雑学くらいで、「天災やギャンブル」についてはなんにも覚えてなくて、ニュース見て思い出す(p.237)ってあるとこ。これもしかして震災のこととかもまるっと忘れてるんですかね? 作中時間が今2008年からラストで2009年になったところで、恐らく2011年までは描かれるんじゃないかと思うんですが、もしどんなインパクトある天災も忘れてるとしたらこれ結構大事な伏線くさい気がします。

 今巻とは直接関係ないですが、アニメ見てると主人公の万能感は今になってちょっと引っかかりますね。「ぜってぇなんとかする」、台詞としてはアツいですが全部ひとりで背負い込んで他人に手出しはさせない感じがして、好感は持てないなぁと思ったり。あと主人公と出会わなくても最初の世界線ではプラチナ世代プラチナ世代として既に大成していたわけで、そこには主人公の代わりとなる人間ないしは出来事が存在すると仮定され、そこが今後物語と関係してくることがあるのかは気になります。ただ、そこが話の主軸じゃないからきちんと描かれるかは微妙かも……。

*1:アニメ『SHIROBAKO』第21話サブタイトル

*2:クリエイターの犠牲の上に成り立つエンタメ作品を楽しみたくない、より正確に言えばクリエイターの犠牲の上に成り立っているという事実自体が作品を楽しむことのノイズになると思っている