ひきこまり吸血姫の悶々【感想】
2021年9月3日読了。
あらすじ
「たとえ世界がひっくり返っても私は引きこもる!!!」
第11回GA文庫大賞《優秀賞》
自己評価↓最低 他者評価↑最高 ダメダメ美少女が大勝利!
「……ふぇ? な、なに?」
引きこもりの少女テラコマリこと「コマリ」が目覚めると、
なんと帝国の将軍に大抜擢されていた!しかもコマリが率いるのは、下克上が横行する血なまぐさい荒くれ部隊。
名門吸血鬼の家系に生まれながら、血が嫌いなせいで
「運動神経ダメ」
「背が小さい」
「魔法が使えない」
と三拍子そろったコマリ。途方に暮れる彼女に、腹心(となってくれるはず)のメイドのヴィルが言った。
「お任せください。必ずや部下どもを勘違いさせてみせましょう!」
はったりと幸運を頼りに快進撃するコマリの姿を描いたコミカルファンタジー!
引きこもりだけど、コマリは「やればできる子」!?
第11回GA文庫大賞《優秀賞》受賞作品。受賞時の選評は以下の通り。
引きこもりの吸血鬼であるコマリが、つかぬことから帝国の将軍になってしまい、しかも率いるのが最も危険な奴ら……というギャップが楽しいコミカルファンタジー。
コマリのことを溺愛し、将軍職への斡旋に奔走した父親や(コマリから見れば余計なお世話)、忠実なんだか失礼なんだかわからない専属メイドのヴィル、自身も美少女である皇帝陛下(コマリに対してセクハラ三昧)、そして血なまぐさい脳筋な部下たち(コマリの実力を信じて疑わない)といった具合に、ひきこもりのコマリを取り囲む面々との対比が明快で、その掛け合いがじつに楽しい。
全体としてコメディとしてまとめていながらも、ストーリーも骨格がしっかりしていて、中盤以降のシリアス度が増していく展開の中でコマリのキャラ特性がキラリと光る。ダメダメな引きこもりに見えて……じつは! というカタルシス演出も見事。
コマリの特性やメイドのヴィルとの関係など、伏線の張り方も巧みで、最後まで読み手の心を捉えて放さない。緊張感があって、痛快で、しかも感動できるという、各要素が高い次元で融合された笑って泣ける優れた逸品。
感想
あとがきで作者が、「自信満々で書き上げた作品がキャラしか褒められなかった」という趣旨のエピソードを披露しているとおり、主人公が可愛い。ひきこもりですがなんだかんだ働いてますし、変態メイドとのやりとりも楽しい。キャラもコミカルで楽しいし、ギャグ描写が全体的に好みでした。死んでも生き返ることのできる世界観もギャグ展開によく貢献していたように思います。
一方で、後半のシリアスパートはそこまで刺さらず。めちゃくちゃ弱いと思わせて実は……というありがちな展開はこの際置いておくとして、結局ボコボコにするならミリセントに感情移入させようとする意図が読めません。カタルシスを演出したいならもうちょっと勧善懲悪に寄せても良かったのではないでしょうか。というか、一番責めを負うべきは主人公の父親なんだよなぁ。既に結構続刊が出ているようなので、機会があれば読みたいと思います。