あすはひのきになろう

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さよなら異世界、またきて明日II 旅する轍と希望の箱【感想】

 

2021年9月21日読了。

 

あらすじ

今日から明日へ。ぼくたちは「さよなら」の轍を残して往く。

滅びかけた異世界で旅を続けるケースケとニトは、“物語”を探しているという届け屋の女性・シャロルと出会う。彼女の探し物を手伝ううちに、三人はとある村に伝わる“灯花祭”を復活させることになるのだが――!?

出典:https://fantasiabunko.jp/product/202002sayomata/322003001183.html

 

 

感想

 かなり良かったです。正直1巻からここまで伸びるとはちょっと思ってなかった。前巻と違い、1冊で一つのエピソードを丁寧に描ききったことが功を奏しています。新たに登場したキャラクターたちが、一人一人主人公たちと対話を通じて親交を深めていき、その人物像が掘り下げられていく描写が非常に丁寧で、それぞれの縁がつながって最後のお祭りにつながっていく展開も綺麗。その根底には、何故世界が滅びかけているのか、といったマクロな視点はあえて放置し、それよりも滅び行く世界で今を生きる人々のミクロな視点に寄り添おうという姿勢が見て取れます。前巻に引き続き、適度に詩的な表現が光る文章も作品の雰囲気にマッチしており、キャラのセリフ回しも、それぞれの背景、人生を背負った上で発せられているように感じられるところも好ましいです。キャラの丁寧な描写に裏打ちされた心に響く物語を紡ぐことによって、前巻の物足りなさを見事に克服しており、ポストアポカリプスものとして高い完成度を持つ作品に仕上がっています。今のところ次巻の音沙汰はない状態ですが、是非期待したいところです。