あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

時空旅行者の砂時計【感想】

 

2021年10月日読了。

 

あらすじ

瀕死の妻のために謎の声に従い、2018年から1960年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の祖先・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相を解明することが、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを呑み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は2018年に戻ることができるのか!? 
“令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第29回鮎川哲也賞受賞作。

選考委員絶賛
・何が飛び出すかわからないびっくり箱的な魅力が、この方にはある(加納朋子
・こういう頭の働きは、まさに本格の魅力に繋がる(北村薫
・ロジカルな謎の解明と、理外の理のドラマ設定を両立させたSFミステリ(辻真先

出典:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488025625

 

 

第29回鮎川哲也賞受賞作品。ちなみに28回の受賞作は川澄浩平『探偵は教室にいない』。

 

感想

 27回で受賞した今村昌弘『屍人荘の殺人』のころからよく見かけるようになった気がするいわゆる特殊設定ミステリもの。タイムトラベルを題材としたSFミステリです。面白かったんですが、自分にはなかなかハイカロリーでしたね。複雑な血縁関係の一族、見取り図付きの広いお屋敷というゴリゴリの本格ミステリのお約束に加えて、SF関連の設定までついてくるので、情報量は結構多いです。「タイムトラベル」という非現実的設定を読者に対してフェアに用いているところは素直にすごいと思いますし、一族のドロドロとした人間ドラマを描きながらも、主人公の目的が「妻の命を救うこと」というある種の王道である分、読後感も爽やかなものに仕上がっています。主人公と行動を共にするのが女子中学生というのも、陰鬱になりがちな作中における一服の清涼剤となっています。ただ、全体としてややこしく感じたのは確かで、そもそもがミステリ好きな人向けに間口が設定されているんだろうなぁと思いました。