2021夏アニメ振り返り
やります。核心的なネタバレは避けて書いているつもりですが、ものによってはネタバレしないと何も話せないやつとかもあるので、未視聴作品の感想を読む際には十分ご注意下さい。あと負の意見もあります。並びは五十音順で、スタッフとかの補足情報も併記していますが、興味ない人適当には飛ばしながら読んで下さい。人名のリンクはWikipediaかアニメ@wikiに飛ばしています。
光る作品はあったものの、総じて見れば伸び悩んだ作品が多かったクールでした。個性的な作品が揃ったものの、手放しで安心して見られる作品は少数にとどまっていた印象です。
- ヴァニタスの手記
- うらみちお兄さん
- EDENS ZERO
- 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X
- かげきしょうじょ!!
- カノジョも彼女
- 現実主義勇者の王国再建記
- 極主夫道
- 小林さんちのメイドラゴンS
- Sonny Boy
- 死神坊ちゃんと黒メイド
- ジャヒー様はくじけない!
- SHAMAN KING
- 白い砂のアクアトープ
- SCARLET NEXUS
- 精霊幻想記
- 探偵はもう、死んでいる。
- チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜
- 月が導く異世界道中
- 出会って5秒でバトル
- D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION
- 転生したらスライムだった件(第2期第2部)
- NIGHT HEAD 2041
- ひぐらしのなく頃に卒
- ピーチボーイリバーサイド
- 100万の命の上に俺は立っている(第2シーズン)
- 不滅のあなたへ
- 平穏世代の韋駄天達
- ぼくたちのリメイク
- マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-
- 魔法科高校の優等生
- 迷宮ブラックカンパニー
- 女神寮の寮母くん。
- ラブライブ!スーパースター!!
- RE-MAIN
ヴァニタスの手記
「手記」と書いて「カルテ」と読みます。「月刊ガンガンJOKER」にて連載中の望月淳による漫画作品が原作。2009年には前作『PandoraHearts』でテレビアニメ化を果たしており、2作連続でのテレビアニメ化となります。監督は『〈物語〉シリーズ セカンドシーズン』監督などシャフト作品に携わってきた板村智幸、シリーズ構成は直近ではライトノベル原作を多く手がける赤尾でこ、キャラデザは『スペース☆ダンディ』『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』『ひそねとまそたん』など、アニメーション制作を担当するボンズ制作作品で多くキャラデザを務める伊藤嘉之。最終話放送後、分割2クールであることが明らかになりました(リンク)。第2クールは来年1月より放送予定。
吸血鬼(本作では「ヴァンピール」と呼ばれる)の青年・ノエが、「吸血鬼に呪いを振り撒く」とされる魔導書「ヴァニタスの書」を持つ人間・ヴァニタスと出会うところから物語が始まります。割と専門用語が多いし、キャラそれぞれの立場と思惑が絡み合うので、ぼーっと見てるとちょいちょい置いていかれそうになりました。画面作りは結構力が入っていた印象で、戦闘シーンもよく動いてたし、ギャグシーンの崩した絵とシリアスなシーンの絵とでしっかりメリハリがついていたと思います。監督の影響か、演出がシャフトっぽいという意見も聞きました。そうそう、1話時点だとBLっぽいんですけど、ジャンヌちゃんというちょろカワヒロイン*1も出てくるので、そういう理由で敬遠することはないと思いますよ。
うらみちお兄さん
pixivコミック内のWeb漫画誌「comic POOL」にて連載中の久世岳による漫画作品が原作。アニメーション制作は2011年に『ロウきゅーぶ!』(project No.9と共同)、2017年に『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』(ディオメディアと共同)を制作したスタジオブランで、30分アニメの単独元請は恐らく初。どうでもいいけどこの会社、驚くべきことに公式サイトに制作実績がない。監督は『ソウナンですか?』『ランウェイで笑って』の長山延好で、シリーズ構成の待田堂子、キャラデザ(共同)の柴田裕介や総作監の中山和子などスタッフにも同作に参加してる人がチラホラ。これは『ソウナン』『ランウェイ』にスタジオブランが制作協力として参加してるつながりでしょう*2。もうひとりのキャラデザは『ナカノヒトゲノム【実況中】』の髙橋瑞紀*3。
基本的に声優の演技を楽しむアニメだと思うんですけど、12話のうらみちお兄さんの過去を掘り下げる回は良かった。この方向の掘り下げにもっと尺割いてくれてた方が好みだったかもしれません。もし2期があったらお兄さんが体操選手を諦めた理由とかも分かるんですかね? ガキ相手に大人の悲哀というか、人生訓めいた説教を垂れる様式があんまり受け付けなくて、鼻白むところもあったんですけど、言ってること自体は間違ってるわけじゃないし、水樹奈々&宮野真守という豪華キャストで送る謎挿入歌がやたら挟まれたり、次から次へどんどんピーキーなキャラが増えたりと、ガキに愚痴を言うネタ一辺倒じゃなかったので楽しめた方だと思います。大体のギャグはフィクションのネタで済ませられる範囲だったんですが、番組のPが炎天下で演者たちに真冬の恰好させて撮影する回だけは妙にリアルな危機感あってなんか印象に残ってます。社会人になったらこの作品に対する見方もまた変わってきたりするんでしょうかね。まぁいずれにせよ30分は長いと言われるとそれはそう、と思うんですが。
EDENS ZERO
2クール目。ヴァルキリーのエピソードは、EDのカットを回収するシーンなども相まって、良かったですね。王道少年漫画的で、個人的には良くも悪くもあんまり引っかかるところがなかったんですが、2クール振り返ってみると、「家族」というテーマを最初から最後までしっかり貫きながらも、小エピソードごとにきちんと起承転結を作っているあたり、さすがの手腕と安定感だったと思います。引きを見るに続きを作る気も満々みたいですし、長期シリーズになるんだろうなぁと予想されます。
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X
昨年春クールに放送された第1期に続く第2期。放送終了後には映画化決定の告知がありました(リンク)。ちなみに「X」は「エックス」ではなく音楽記号の「ダブルシャープ」らしい。どういう意味でつけたんだろ。「小説家になろう」発の山口悟による一迅社文庫アイリスのライトノベルが原作。監督の井上圭介、シリーズ構成の清水恵、キャラデザの大島美和以下、スタッフの多くは続投。アニメーション制作もSILVER LINK.から変更なし。
蛇足感がなかったというと嘘になりますね。キャラに強い愛着があればもっともっと楽しめたかもしれません。Twitterでフォロワーの誰かが言ってたんですけど、もはや乙女ゲーム要素も破滅フラグ要素も悪役令嬢要素もほぼないんですよね。普通に貴族社会が舞台のファンタジーです。1期がきれいにまとまっていた分、予想されていたこととはいえ、肩すかし感は否めません。新キャラが増えて、既存キャラが掘り下げられて、というエピソードひとつひとつは良いんですけど、やはり1クールの作品として振り返ると、ややまとまりに欠けるというか、散漫な印象を持ちました。物語の主眼も、1期における「破滅フラグの回避」という目的が失われたため、「カタリナの恋模様」に移っていますしね。というかみんな思った以上にグイグイ来てて笑った。1期のストーリーが好きだったのか、キャラや雰囲気が好きだったかによって評価は分かれる気がします。
かげきしょうじょ!!
はじめ「ジャンプ改」にて『かげきしょうじょ!』として連載された後、同誌の休刊に伴い白泉社の隔月刊漫画雑誌「MELODY」に移籍、『かげきしょうじょ!!』に改題して連載中の斉木久美子による漫画作品が原作。「ジャンプ改」連載分は『かげきしょうじょ!! シーズンゼロ』と題して花とゆめコミックススペシャルから刊行されています。監督は『暁のヨナ』『魔法少女なんてもういいですから。』『グレイプニル』の米田和弘、シリーズ構成はテレビドラマの脚本を多く手がける森下直*4、キャラデザは『デュラララ!!』『魔法少女まどか☆マギカ』『グレイプニル』の岸田隆宏。アニメーション制作は『魔法少女なんてもういいですから。』『ゲーマーズ!』『グレイプニル』のPINE JAM。音楽は実際に宝塚歌劇団の舞台音楽も手がける斉藤恒芳が担当します。
紅華歌劇音楽学校の100期生として入学した少女たちの、演劇にかける熱い青春が描かれます。間違いなく、今期の白眉として衆目の一致する作品でしょう*5。アニメ放送中に原作も読みましたが、原作の魅力を最大限に引き出したアニメ化だったと思います。題材が演劇というだけあって、声優による演技や音楽、アニメーションとしての動きが加わることによるアドバンテージは計り知れませんでした。まず単純にお話がすごい面白いんですよね。シナリオ面での原作からのアレンジが非常に丁寧だったと思います。もともと原作が面白いというのは大前提ですが、その上で、アニメではノイズになりそうなさらさの他作パロを減らしたり、情報を小出しにしたり、逆に増やしたり、順序を入れ替えたり、といった取捨選択に過不足がなかった。お芝居もめちゃくちゃ良かった。原作だと、自分はさらさがたまにウザ~く感じちゃう場面もあったんですが、アニメの演技によってあっけらかんとした嫌みのないキャラに仕上がっていました。お芝居に関連して単話で言及したいのは、5話と8話ですね。前者では、部屋に閉じこもる山田に対する飛田展男演じる小野寺先生の熱い説得に思わず目頭が熱くなりましたし、後者はエピソードとしての完成度の高さもさることながら、芸に身を投じる者と一人の女の子との間で揺れる薫の心情に胸を打たれました。学校の校歌を歌いながら波打ち際を歩くシーンとかもう、ね……。演技を題材とする作品で、演技で心を動かされる、これほど説得力のある作品もないでしょう。それぞれのキャラがどういう背景をもって学校に集っているかという掘り下げがしっかりしてて、当番回の度に推しが変わると言っても過言ではない。時間はかかるかもですが、続きも是非アニメで見たいと思える作品でした。あと原作未読民、アニメで描かれなかったエピソード満載の原作も是非読んでくれ。
OP・EDもめちゃくちゃ好き。OPの、今日日なかなかないくらい底抜けに明るい歌詞とメロディもめっちゃ好き*6だし、それぞれのキャラに寄り沿った歌詞のEDもとても良い。必聴です。
カノジョも彼女
「週刊少年マガジン」にて連載中のヒロユキによる漫画作品が原作。作者にとっては『ドージンワーク』『マンガ家さんとアシスタントさんと』『アホガール』に続く驚異の4作品目のテレビアニメ化になります。ちなみにアニメ化決定は連載開始から8ヶ月後の昨年11月で、これはマガジン史上最速とのこと。『五等分の花嫁』『安達としまむら』でおなじみの監督・桑原智、シリーズ構成・大知慶一郎、アニメーション制作・手塚プロダクションの座組。キャラデザ・総作監は『あだしま』で総作監、『池袋ウエストゲートパーク』でサブキャラデザ(共同)などを務めた豊田暁子。今作は各話総作監や作監の人数が異常に多いことが特徴で、原画動画等はほとんど海外スタジオに任せている制作スタイルのようです。作画は、近年の同社の作品の中でも最も安定していたように感じたので、こうしたスタイルが確立されたのかもしれません。
この作者の作品は全部そうだと思いますが、作中のノリについていけるか、というハードルが本作は特に高かったような気がしないでもない。誠実であろうとするあまりそれ以外の大事なことがすっかり抜け落ちたクレイジー主人公と、やはりこちらもどこかズレたヒロインズによるラブコメ。「何、この……何?」つってたら1クール終わってました。とにかく異常な行動を取る奴しかいないので、なんか視聴するのにすごい体力持っていかれるんですよね。いまいち刺さるヒロインがいなかったのも大きかったかもしれません。個人的にはギリ参戦しなかった紫乃が一番好みだったので、もう少し出番あげて欲しかったなぁとか。あと、あんまりマジレスするのも野暮とは思いますが、親に叱られたエロ売りYouTuber活動を擁護されることでヒロインが主人公に惚れるの、単純にストーリーとしてヤバくない? いや、多重交際を肯定する以上、世間的に是とされないあれこれを肯定しようという意図なのかも知らんけどさ……。まぁ勢いだけはすごかったし、頭空っぽにして見るにはこれくらいがちょうど良いかも。
現実主義勇者の王国再建記
「小説家になろう」発……ではあるのですが、現在はpixivにて更新中の、どぜう丸によるWeb小説がオーバーラップ文庫より書籍化されたライトノベルが原作。どうも「なろう」版はコメントに替え歌の歌詞で返したら著作権違反で削除されたとか。そうした事情から、現在pixivで閲覧できるのは書籍6巻より後の話のみのようです(ソース)。監督は『スレイヤーズ』『灼眼のシャナ』『緋弾のアリア』など往年のライトベル原作作品で多く監督を務めた渡部高志*7、キャラデザは『のんのんびより』『まちカドまぞく』の大塚舞、各話総作監に『さくら荘のペットな彼女』『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』キャラデザの藤井昌宏など、アニメーション制作の J.C.STAFFにゆかりのあるスタッフが集められています。脚本は『ブレンド・S』『ぼくたちは勉強ができない』『ネコぱら』などでおなじみ雑破業と、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』『ゲゲゲの鬼太郎(第6期)』の大野木寛が担当します.
放送終了後、来年1月より第二部の放送が告知されました(リンク)。
不遜な言い方になって恐縮ですが、強いメンツが揃っている割に画面からはそういう印象を受けなかったです。戦闘シーンを含め迫力のある描写に欠け、全体的にあんまり力が入っているとは思えない感じでした。話の切り方がちょいちょい異常で、一回マジで意味分からないところでED流れはじめたときは、声に出して「は?」って言ってしまいました。ただ、ストーリー的にはいわゆる「建国もの」のアニメを見るのが初めてということもあり、新鮮なところもありました。まぁ主人公SUGEEEに変わりはないんですけど、現実世界の理論を異世界の状況に援用している分それなりに説得力があったと思います。港を建築するくだりとかね。ただ、主人公が太っちょ食いしん坊を登用したら参謀みたいなキャラの好感度が爆上がりしたのには笑った。
どうでもいいですけど、この主人公がマキャベリの「君主論」を指南書としているのは、「サバンナに一つだけ物を持っていくとしたら?うーん…俺ならマキァヴェリの『君主論』を選ぶかな」的なネタなのか、「ガチ」なのかはちょっと気になります。
極主夫道
新潮社のWeb漫画サイト「くらげバンチ」にて連載中のおおのこうすけによる漫画作品が原作。今年4月よりNetflixにて独占配信されました。監督の今千秋、シリーズ構成の山川進、アニメーション制作のJ.C.STAFFは『Back Street Girls -ゴクドルズ-』の座組。作りとしては、いわゆる一般的なアニメーションというより、ボイスコミック的なイメージ。また、主人公の龍を演じる津田健次郎が包丁研いだり障子を張り替えたりするミニドラマ『極工夫道』と抱き合わせになっています。
全くつまらん、ってわけではないですが、マジでヤーさんが主夫っぽいことをやってる(+謎の猫パート)というネタしかないので、さすがにもう少しひねりが欲しかったというのが正直なところです。なんで主人公が一般人っぽい奥さんと結婚することになったのか、とかいずれ描かれるんですかね。匂わせみたいな描写はありましたけど……。実写ドラマではオリジナルの娘が付け足されたそうですが、そうした製作側の気持ちもわからなくもないです。ミニドラマはツダケンが思った以上にイケオジでびっくりしたくらいですかね。ゴミの分別回は普通に勉強になりました。
小林さんちのメイドラゴンS
「月刊アクション」にて連載中のクール教信者による漫画作品が原作。2017年の第1期に続く第2期。人間とドラゴンが織りなす「異種間コミュニケーション」の日々を描きます。監督は2019年に死去した武本康弘から『涼宮ハルヒの憂鬱』『中二病でも恋がしたい!』『響け!ユーフォニアム』の石原立也が引き継ぎ、武本氏はシリーズ監督として今作でもクレジットされています。シリーズ構成の山田由香、キャラデザの門脇未来、総作監の丸木宣明は続投していますが、他のスタッフの一部は交代しています。
バケモンみたいに精緻な作画と他ではあり得ないほど一話当たりのスタッフが少ない*8のが印象的でしたね。ファミレスの席で、カンナがお尻をずらしながら移動するとことか、お茶を汲む仕草とか、テントウムシが羽を広げる様子とか、何気ない動きが非常に丁寧に描かれており、単に「絵が整っている」だけではない良質なアニメーションを毎週楽しませてもらいました。新キャラ・イルルのエピソードを含め、トールやエルマの過去が描かれるなど、ストーリー的には1期よりもシリアス寄りのお話が目立ちましたが、ともすれば押しつけがましい説教臭さも醸し出しそうな内容を、演出*9や演技によってよく中和していたのではないかと思います。OP・EDもめちゃくちゃ良かった。
Sonny Boy
『ワンパンマン』『ACCA13区監察課』『ブギーポップは笑わない』監督の夏目真悟が原作・脚本・監督を手がけるオリジナルアニメ。突如として学校ごと異世界に漂流した中学生たちの生き様を描きます。キャラ原案は 『すすめ!!パイレーツ』『ストップ!!ひばりくん!』の漫画家・江口寿史、キャラデザは『ACCA13区監察課』の久貝典史、アニメーション制作は上述3作品も制作したマッドハウス。主要スタッフのほとんどは監督の以前の作品に参加しています。
玄人向けの香りがプンプンしますが、その理解で間違いないです。劇伴なし、背景はずっと真っ黒で進む1話とか、4話のやたら長い一人語りとか、挑戦的な表現が散見され、過度に抽象化された暗喩的な物語が続くため、なかなか作品に没入することが難しかったというのが率直な感想です。何がやりたいのかわからん回と、やりたいことがわかっても納得しがたい回があり、その中で作品全体を貫く謎や伏線がまかれたり、結構さらっと回収されたりするので、その緩急についていくのも大変でした。何しに出てきたのかよく分からないまま出てこなくなったキャラも結構いたし。オチもかなり好みが分かれそうで、個人的にはすっきりはしなかったかなぁって感じ。8話の津田犬の回は結構好きでした。ストーリーラインが追いやすくて話自体も好みだったし、焦点が二人に絞られていたので集中しやすかったからですかね。ただ、好みや合う合わないが分かれるのは前提として、こういう監督の色の強く出た「攻めた」作品が生まれること自体は良いことだと思います。
死神坊ちゃんと黒メイド
小学館の提供する漫画アプリ「サンデーうぇぶり」にて連載中のイノウエによる漫画作品が原作。魔女によって触れたものに死をもたらす呪いをかけられた貴族の坊ちゃんと、彼を慕うメイドの少女によるラブコメ。監督の山川吉樹、キャラデザの桑波田満、CGディレクターの鈴木勇介、アニメーション制作のJ.C.STAFFは『ハイスコアガール』の座組。シリーズ構成は『デート・ア・ライブ』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『モンスター娘のお医者さん』の白根秀樹。放送終了後、続編の制作決定が発表されました(リンク)。
ギャグが逆セクハラのワンパターンしかなさそうだったこともあり、1話時点の印象は決して良くなかったのですが、その後の丁寧な描写の積み重ねによって見事に自分の中で評価を覆した良作でした。背景が油絵っぽく加工されてたりとか、結構細かいところまでこだわって作られている感じがあり、作品によっては違和感の強い3DCGキャラも表情豊かで生き生きとしており、よくなじんでいたと思います。回を重ねるごとに、様々なエピソードを通じて坊ちゃんとアリスの人となりが伝わってきて、どんどん二人に対して愛着が湧いていきました。ギャグの方も、キャラが増えたり*10、中盤以降呪いに関するメインストーリーが進んだりすることもあって、逆セクハラ一辺倒から早めに抜け出していたことも上手い作り方だったと思います。いや、ホント坊ちゃんとアリスがお互いを思い合ってるのがすごく伝わってくるし、彼らを取り巻く人々も(坊ちゃんの母親も含めて)基本良い人ばかりだからか、設定からすればもっと悲壮な感じになっても良さそうなんですけど作品全体がすごく優しい雰囲気なんですよね。あと、OPがめちゃくちゃ良い。二人のデュエットによる楽曲の良さもさることながら、本当に触れあうことはできなくても、影なら手を重ねることができる、というシルエットを効果的に使ったアニメーションも素晴らしい*11。続編も楽しみに待っています。
ジャヒー様はくじけない!
「月刊ガンガンJOKER」にて連載中の昆布わかめによる漫画作品が原作。魔法少女によって魔界を滅ぼされ、人間界に落ち延びてきた元魔界No.2のジャヒー様が、極貧生活を送りながら魔界復興を目指し魔石集めに励む、というお話。近年では珍しく、コメディ作品ですが連続2クール放送を予定しています。BD情報によれば全20話みたい。アニメーション制作はSILVER LINK.、監督はシルリン作品でおなじみ湊未來。今期は同じくSILVER LINK.制作の『迷宮ブラックカンパニー』との掛け持ちです。シリーズ構成は『SHIROBAKO』『じょしらく』『天地創造デザイン部』の横手美智子。キャラデザ・総作監は『ツキウタ。THE ANIMATION 2』などで作監を務めた仲敷沙織が初キャラデザ。
こういうのが2クールあるのは非常にありがたいですね。さすがに作画は回によってムラがあるものの、キャラ良し、ギャグ良し、テンポ良しで言うことないです。ケラケラ笑ってたらいつの間にか30分過ぎてます。ジャヒー様役の大空直美が*13めちゃくちゃハマり役なんですよね。ここまでキャラとイメージが結びつくのはすごいと思います。ちなみに僕は大家派です。
ED、「明日はジャヒー」って聞こえるとこがあって、「明日はジャヒー」ってなんだよって思って歌詞見たら「明日は Just hit」ってあって、一瞬へぇ~と思ったけどこれやっぱ意味わかんないすね。
SHAMAN KING
2クール目。いよいよ始まったシャーマンファイト。ED*14で走っていた誰だかわからん少女が思ったよりも強烈な思想の持ち主でした。ハオの正体も徐々に明らかになり、着実に話が進んでいる感じはあります。試合はたまに間延びした印象を受けることもありましたが、概ね悪くはなかった。ただ、より物語が盛り上がるのはもっと後ろの方かな?
白い砂のアクアトープ
『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』のお仕事シリーズなどで知られるP.A.WORKS最新作。連続2クールで放送されるオリジナルアニメ。監督の篠原俊哉、シリーズ構成の柿原優子、キャラデザ・総作監の秋山有希は『色づく世界の明日から』の座組。キャラ原案はメディアミックス企画『ラピスリライツ』のU35。沖縄を舞台に、一人で沖縄にやってきた元アイドルの少女と、祖父の経営する閉館間際の水族館「がまがま水族館」の営業継続のため奮闘する館長代理の少女が出会い、絆を深めていくというお話。
正直あんまり伸びきらなかったな、という印象。素材は悪くないはずですし、毎週楽しみに見てたのは確かなんですが、推すにはちょっと首をひねるところがチラホラあったことも確かです。とりあえずキジムナー、お前はもう船降りろ。
一番首をひねったのはがまがまのファンタジー空間設定。水族館の経営危機(というより老朽化か)という現実的な問題に取り組もうという展開に対して「亡くなった大切な人と会える」というともすればオカルティックな設定を前面に押し出していくのはちょっと食い合わせが悪い気がしました。案の定、くくるががまがまをファンタジー空間として売り出そうとして失敗してましたし、視聴者としても「アニメというフィクション作品の中におけるリアリティのライン」をどこに定めれば良いかが掴みづらくなっていたように思います。あと病院訪問の回、カニが苦手な師長さんがいるから絶対カニ逃がすなよ→逃げた!とかで話の大枠作っちゃうのもマジでやってんのかふざけてんのか判断に困る。キャラは、視野狭窄になっているくくるとかにはちょっと……みたいな場面もありましたが、風花との関係性の描き方は悪くなかったし、女がいると酸素が取り入れられなくなる空也さんとか、大活躍なのに何故か公式サイトのキャラクター紹介でハブられている海やんとか、サブキャラも魅力的でした。がまがま水族館にまつわる1クール目でやるべきお話はしっかり描ききっているとは思うので、2クール目の社会人編にも期待したいと思います。
SCARLET NEXUS
今年6月にバンダイナムコエンターテインメントより発売されたアクションRPGゲームが原作。『デルトラクエスト』『ダンボール戦機』キャラデザ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』総作監の西村博之*15がテレビアニメ初監督。シリーズ構成は『アイカツ!』『妖怪ウォッチ』『宇宙兄弟』の加藤陽一と、『ログ・ホライズン』『マクロスΔ』『バクテン!!』の根元歳三。キャラデザは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』作監の伊藤裕次が監督と共同で務めます。アニメーション制作はサンライズ。蓋を開けると連続2クール作品でした。
「超脳力者」からなる「怪伐軍」に入隊した主人公が、仲間とともに「怪異」と呼ばれるモンスターや、国家・世界の秘密に迫っていくSFアニメ。1話時点では、もう何もかもが既視感のあるような世界観・設定かつキャラも凡庸で、「よくこれを新作として出してきたな」と思ったんですが、ストーリーは(ちゃんと見れば)多分面白いんだと思います。ただ、原作のゲームをアニメに落とし込んでいるせいで、キャラも設定も用語もストーリーも情報量が多くって、なかなかついていくのがしんどいとこがありました。いわゆるキャラ紹介回みたいなのもなくて、序盤からガンガン話が進むので、名前もきちんと覚えられてないキャラが退場したり*16、裏切り者が出てきたり、かと思ったら未来にぶっ飛ばされたり……みたいな展開が続きます。正直、ゲームをしっかりやった方が楽しめるんじゃないか……?と思ってしまう。怪異のデザインはキモくて良かったです。
精霊幻想記
「小説家になろう」発の北山結莉によるHJ文庫のライトノベルが原作。路線バスと電車が踏切内で接触するとかいう日本交通史に残りそうな大事故で亡くなった主人公が異世界に転生します。監督・シリーズ構成は『薄桜鬼』『ACTORS -Songs Connection-』のヤマサキオサム。キャラデザは『ACTORS -Songs Connection-』『グレイプニル』『彼女、お借りします』作監の油布京子。アニメーション制作は『神様はじめました』『八月のシンデレラナイン』『彼女、お借りします』のトムス・エンタテインメント。
女の子が可愛かった。そこ一点においてはすごい良かったですね。セリア先生をはじめ、キャラデザがやたら良い。作画もそこそこ頑張ってたと思います。内容の方は、いかにも主人公のCVが松岡禎丞なアニメって感じ。伝われ。主人公があっちこっちで女の子にモテる話でした。いや、主人公の前世での親がどうこうみたいな話もあったんですけど、やたら現地妻作ってた印象が強すぎる*17。しかも人助けする→勘違いされてバトルになる→和解して女の子と仲良くなるみたいなパターンばっかだったような。あと途中で主人公がキリトさんそっくりな黒ずくめの剣士になったのは笑った。他の普通の恰好のキャラたちの中でバチクソ目立ってました。前世匂わせもいまいちはっきりと回収されなかったし、まぁ原作がもう20巻出てる結構長いシリーズなんで、アニメは多分まださわりのあたりで終わっちゃったのかもなぁと思います。でもまぁ最終話でそれなりにキリよく終わったと思ったら、Cパートで分割2クールアニメばりのぶっこみかましてきて、訳が分からなかった。
演出で言えば、異世界語を普通の台詞を逆再生することで表現してたのが印象的でした。お手軽にできるメリットは理解しますが、手抜き感は否めないし、声優の演技も逆再生によって棄却されてしまう気がして、いまいち好きではないですね。それならもう全部日本語で良いと思う。
探偵はもう、死んでいる。
二語十によるMF文庫Jのライトノベルが原作。美少女探偵の助手だった主人公が、探偵の死後、その意志を継いで敵と戦っていく、みたいな話。アニメーション制作はKADOKAWA系列の制作会社・ENGI。監督は『宇崎ちゃんは遊びたい!』キャラデザ・総作監の栗原学で、ENGI作品で三浦和也以外が監督を務めるのは初。三浦はアニメーションスーパーバイザーという役職に就いています。シリーズ構成は『アサシンズプライド』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』の赤尾でこ。キャラデザ・総作監は『京都寺町三条のホームズ』『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』の伊藤陽祐。
ミステリじゃないです。大事なことなのでもう一度言いますが、ミステリではないです。『虚構推理』も「推理じゃねーじゃん!」って言われてたりしてましたけど、そう言ってた人たちに見せたら憤死するんじゃないでしょうか。原作既読で、もともとそんなに好きな作品ではなかったんですが、それにしたってあんまりな出来と言わざるを得ません。1話の飛行機ハイジャックシーンなんかは作画も力入ってましたが、それ以降は画面も凡でしたし、ストーリーの方はもうハチャメチャでした。耳から触手が生えたり、CV子安武人の巨大トカゲが出てきたり、探偵がロボで戦ったり……。「そうはならんやろ」のオンパレードで、推理と称されるのはほとんど後出しネタばらしだし、死んでるはずのシエスタが大活躍で、渚とか唯とか後半空気でした。また、ハードボイルドを気取って失敗したような主人公の語り口や掛け合いはずっと空回りしているように感じられ、戦闘シーンでもそれを続けているから、バトルしているはずなのにやたらシーンが冗長。そもそも「探偵」を謳いながらやってることはヘンテコ超生物とのバトルなんですから、そこから既に視聴者を置いてけぼりですし、説明も行き届いているとは言えません。既読勢でこれなんだから初見勢の印象は推して知るべしです。
ちなみに僕が一番笑ったのは子安トカゲの「あ~つ~い~、死~ぬ~」ってシーン。ギャグかと思ったら真面目なシーンだったみたいで、これをOKしたのはちょっと信じられない。
チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜
「小説家になろう」発のケンノジによるブレイブ文庫のライトノベルが原作。監督は『デンキ街の本屋さん』の佐藤まさふみ、シリーズ構成は『俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している』『ミュークルドリーミー』の金杉弘子、キャラデザは『ユリ熊嵐』『徒然チルドレン』『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』の住本悦子。アニメーション制作は『雨色ココア』『恋愛暴君』『くまクマ熊ベアー』のEMTスクエアード。社畜生活を送っていた主人公が突然異世界に転移し、そのまま流れでドラッグストアを開く話。なんだそりゃ。
1話で既に主人公が狼少女と幽霊少女と一緒にドラッグストアを営業しているところからいきなり始まります。え、それまでの経緯は? 狼の方はともかく幽霊の少女と当然のように暮らしているのは何? とかの疑問はとりあえず措いておきましょう。内容は虚無と女の子カワイイヤッターの狭間。僕は結構好きでしたが、つまらない人にとってはとことんつまらないでしょう。特筆すべきは主人公が薬を作る際に挟まる謎のバンク。画面の四隅を妖精が舞い、主人公は明らかにそんなサイズは必要ないバカデカ中華包丁を両手に持って菜っ葉を切り刻み、狼少女と幽霊少女は踊り……。そして薬ができあがるのです。完全使い回しかと思いきやちょいちょいカット変わってるし、長かったり短かったりするし、1話に複数回あったかと思えば全くない話もあって、視聴者たちはその要不要を議論する者からバンクがないとキレだす者まで、みんなバンクに振り回されていました。話は困り事が起こる→薬で解決!の黄金パターンがほとんどなんですが、キャラが時々妙に突飛で、絵柄とか表面上のストーリーは子ども向けか?みたいな感じなんですけど、ちょいちょい主人公が狼娘をナチュラルに動物扱いしてたり、幽霊娘が実は腹黒(ネタバレにつき反転)だったことが明かされたり、狼娘に恋する少年が「生理的に無理」と辛辣に拒否られてたり、どこに向かいたいのかよくわからんとこもしばしばありました。脳死で見れると見せかけてたまに狂気高かったですね。独特な作品でした。
ちなみに、冒頭の疑問は見続けてたら普通に描かれます。いわゆる最終話で時系列1話のエピソードをやるタイプ。これは原作の突飛な設定をフックに使った上手い構成だったと思います。
月が導く異世界道中
「小説家になろう」発のあずみ圭によるアルファポリスのライトノベルが原作。Web版の連載開始は2012年と、『転スラ』とか『本好き』とか『無職転生』とかより早い。監督は『FAIRY TAIL』『ログ・ホライズン』『無能なナナ』の石平信司、シリーズ構成は『幼女戦記』『慎重勇者 ~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『社長、バトルの時間です!』の猪原健太、キャラデザは『はるかなレシーブ』『ひとりぼっちの○○生活』作監の鈴木幸江。終盤で出てきた新キャラとバトり始めて、終わるんかこれ?と思ってたら放送終了後、第2期の制作決定が告知されました(リンク)。勇者として異世界に召喚された高校生の主人公が、女神に「顔が不細工」と嫌われ、勇者の資格を剥奪された上、そのまま異世界に落とされます。ル、ルッキズム~~~~~!
コテコテの異世界転生ものですが、和風に振っているのが特徴ですかね。1話EDが水戸黄門のテーマなのは笑った*18。どうもこの主人公、異世界では相当不細工な部類らしく、人間に全然相手にされないので、亜人とともに国(というより集落?)を作ります。ここらへん、後発の『転スラ』っぽさもあります。で、行商人として仮面で顔を隠して冒険してみたり*19、集落を襲った人間に復讐してみたりするんですが、さほど突っ込みどころがなかった代わりに、個人的にはいまいち盛り上がりどころも見つけられなかった感じ。なんか色々やってたとは思うんだけど、面白かったかと言われると……みたいな。全くつまらんわけでもなかったんですけどね……。作画は終始安定してましたし、戦闘もよく動いてました。ダブルヒロインの巴と澪がどっちもそんなに好みじゃなかったのもハマれなかった原因の一つかもしれません。あと、復讐話の方は(転スラ2期の第1部でも似たようなことを考えましたが)、どっからどう見ても悪役!主人公が殺しても全然悪くない!みたいなのを出してボコることでスカッとしたい作者のマッチポンプくさく見えて、どうも自分には受け付けがたいみたいです。
出会って5秒でバトル
「裏サンデー」および「マンガワン」にて連載中のはらわたさいぞう・原案、みやこかしわ・漫画の漫画作品が原作。原案のはらわたさいぞうが自身のWebサイトにて連載していた漫画を原作に、みやこかしわがリメイクする形で連載されているよう。原作範囲はあっという間に飛び越してるので、現在はみやこかしわがシナリオも考えているんでしょうかね。『ガンダムビルドダイバーズ』『プリンセス・プリンシパル』などで絵コンテを手がけた内藤明吾が総監督、『BANANA FISH』『ドロヘドロ』などで演出を務めた新井宣圭が監督を務めます。シリーズ構成は『SHOW BY ROCK!!』『まえせつ!』『うらみちお兄さん』の待田堂子。キャラデザは『SHOW BY ROCK!! STARS!!』キャラデザ(共同)の永作友克。アニメーション制作はシンエイ動画の子会社であるシナジーSP(『絶対可憐チルドレン』『ハヤテのごとく!』など)と、本作が18年ぶりの元請制作となるベガエンタテイメント。CGアニメーション制作には『球詠』『装甲娘戦機』のStudio A-CATが参加しています。
二昔前くらいの異能バトル×デスゲームものをイメージしてもらえれば、大体それで合ってます。最近の作品で言えば『ダーウィンズゲーム』が一番近いかな。ちなみに、タイトルの5秒の意味はほとんど何もないです。バトル前に申し訳程度に5秒カウントダウンする演出があるけど、それがストーリーに及ぼす影響は皆無です、皆無。
主人公の能力がトリッキーで、その使い方を軸に頭脳バトル的な展開をしていくんですが、面白いかと言われると個人的には微妙。ものすごい慎重ぶってて、全然人を信用しないみたいなスタンスだったくせにいつの間にかヒロインには心許してるのがよくわかんなかった。あと普通に能力で差がすごいんですよね。ショボい能力のやつが逆転!みたいなことも一切無くて普通に瞬殺されてたし、あんまり意外性がないというか。いや、ヒロインと戦ったド変態おじさんとか、主人公の入ったチームのおばさんとか変なところでは意外性出してきていたんですけどね。あと木の枝が必要な能力多すぎん?
D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION
『この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ』などを運営するサイバーエージェントの子会社・サムザップ、『魔界戦記ディスガイアRPG』『アイドルマスター シャイニーカラーズ』などに開発協力しているドリコム、『カードファイト!! ヴァンガード』『BanG Dream!』などのIPを擁するブシロードの3社が手がけるメディアミックス作品。9月末よりスマホ向けゲ-ムも配信も始まりました。ストーリー原案はゲーム『女神異聞録ペルソナ』『Caligula -カリギュラ-』などのシナリオを担当した里見直。監督は『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』CGディレクター『新サクラ大戦 the Animation』副監督の今義和、シリーズ構成は『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』『現実主義勇者の王国再建記』の大野木寛。キャラ原案にはWikipediaだとドリコムのグループ外支社で、本作を中心となって企画した(ソース)ブラストレイン名義になってるんですけど、ゲームの方やアニメのOPだとイラストレーターの くっか がクレジットされてます。キャラデザは『新サクラ大戦 the Animation』(共同)『D4DJ First Mix』キャラデザの茶之原拓也と『アルゴナビス from BanG Dream!』作監のShin Joseph。アニメーション制作は3DCGアニメーション制作会社のサンジゲン。
悩みを抱える人が願いを捧げることで現実に侵食してくる悪夢を倒す能力を持った主人公たちの戦いが描かれます。主人公が結構三枚目っぽいキャラで、良い奴なのが良かったですね。ただ、ストーリーの方はかなりとっちらかっていて、単話完結で社会派ぶった話をやってたかと思えば、終盤にかけて突然クトゥルフ神話要素が出てきて、よくわかんないうちに友人は裏切ってるしヒロインは闇堕ちしてるし、なんかもうめちゃくちゃだよ~ってなってたらなんか丸く収まったって感じでした。基本的に話の細部が雑なんですよね。オチで殺人犯が偶然燃え死んだり、仲良くなったモブキャラが死んでも次話になったら主要キャラがケロッとしてたり……。ただまぁ個々のキャラの性格とか配置は悪くなかったし、武器とか敵のデザインとかも良かった。ジェシカ、一人だけガトリング砲が武器なの強すぎん?
CGアニメとしての出来はかなり良くて、キャラのモーションや表情、戦闘の描写とかも『ブブキ・ブランキ』のころより格段に進化していて感動しました。
転生したらスライムだった件(第2期第2部)
冬クールの前半戦に続き春クールの『転スラ日記』を挟み、いよいよ後半戦。何でこんなに人気なのかが本当に分からなかった。会議が長すぎるってのは一旦措いておくとしても、ここまで1期から延々引っ張ってきたクレイマンに敵としての魅力がなさ過ぎる。こんなクソザコのために4クール費やしてきたんか……とがっくりきました。敵に魅力がないから、主人公たちの戦闘にも全然燃えない。一番盛り上がるのが許諾を取った上で他作パロやるってところだったってのがもう……。余程キャラが好きとかじゃないとなかなか楽しめなかったんじゃないと思うんですが、どうなんでしょう。外交・内政に関する会議パートも、見せ方にもうちょっと工夫できなかったんかと思います。喋りベースで進む面白いアニメなんてごまんとあるんだから、いくら会議がくっちゃべるだけのパートだったとしても、アニメとして興味を惹きつける方法はいかようにもあったはずだと思います。原作人気におんぶに抱っこの作り方に見えました。続きは映画らしいですが(リンク)、見に行くかどうかはかなり怪しい。
NIGHT HEAD 2041
もともと『世にも奇妙な物語』内で放送された『常識酒場』『トラブル・カフェ』というエピソードをもとにした1992年のSF特撮テレビドラマ『NIGHT HEAD』の派生作品。2006年にもドラマを原作とするアニメ『NIGHT HEAD GENESIS』が制作されたようですが、本作はドラマとは別のオリジナルアニメだそう。原作・構成・脚本は原作ドラマを手がけた飯田譲治が自ら担当。監督は『えとたま』CG監督の平川孝充、キャラ原案は『エア・ギア』『化物語』の漫画家・大暮維人。アニメーション制作は『revisions リヴィジョンズ』の白組。あらゆる創作物・フィクションが「非科学的なもの」として禁じられたディストピアを舞台に、超能力を持つ二組の兄弟の運命を描きます。
これも割と出来が良いCGアニメで、戦闘シーンとかはすごい迫力あったし、主要キャラのデザインも結構良かったです(サブキャラはちょいちょい不気味な奴もいたけど)。が、もともと24話2クール分あったものを12話1クールにまとめることになったそうで(ソース)、駆け足感は強かったですね。最初らへんは結構面白かったんですけど、世界の真実的なのが明かされてから爆速で話が進んで、結局何が何だかよく分からんまま終わってしまったというのが正直なところです。もう少し集中して見れていればもっと理解できていたのかもしれませんが……。こういう話だと、大概超能力者側が弾圧されていて可哀想、みたいな描写が多いと思うんですけど、本作の超能力者兄弟は普通にガンガン一般人に迷惑かけていく*20ので、「いや、やっぱ超能力者は弾圧するのが正解では……」みたいな気持ちになりました。ちびっ子超能力者も感情爆発させてめちゃくちゃやってたし。個人的には、気に入ってた特殊部隊の可愛い女の子が、最後の最後まで気持ちいいくらいの噛ませ役のまんま退場していったのが心残りです。
ひぐらしのなく頃に卒
結末までのネタバレがあります!未視聴の方はご注意下さい。
2020年秋クールに放送された新作『ひぐらしのなく頃に業』に続く事実上の解答編。スタッフは『業』から変更なし。終盤、僕はすごい笑わせてもらいましたけど、昔からのファンが同じように笑って見れたかは疑問です。「どうやってクスリを注射したのか」を明かす謎解きパートとしては物足りず、ひたすら沙都子が悪辣な所業を繰り返していくのを眺めるのが前半話でした。マジで全員浄化されてるのに沙都子がひとりで全部めちゃくちゃにしていくんですよ。これまで悪役だった人たちの新たな可能性が拓かれたのは新鮮でしたが、こんなに沙都子にヘイトためてどうするんだ……?という困惑が先に立ってましたね。単純に沙都子嫌い!ってなるよりも話のたたみ方ばかり気になってました。や、彼女が一流のエンターテイナーであることは否定しませんが……。再放送と揶揄されていたとおり、既に結末(しかもバッドエンド)がわかりきっている話を延々見せられるのはなかなか厳しいものがあります。
で、ようやく『業』に追いついたと思ったら*21、突然始まるドラゴンボール展開。沙都子と梨花がシンエヴァ的な場面転換を繰り返しながら殴り合うんですが、いやマジでずっと爆笑してた。やたら壮大だし、作画良いし、何より原因が沙都子の「勉強したくない」なのがめちゃくちゃ面白い。これはエウアさんも爆笑ですわ。笑ってたらなんかいつの間にか「you」が流れて終わってて、本当に意味が分からなかった。何がしたくて作ったんだろう……。もしかしてきれいな鉄平が出したかっただけ?
ピーチボーイリバーサイド
2ちゃんねるの掲示板を発祥とするWeb漫画掲載サイト「新都社」にて連載されていたクール教信者の漫画作品……のリメイクとして作画にヨハネを迎え「少年マガジンR」にて連載中の漫画作品が原作。人を食う鬼が跋扈する世界を舞台に、鬼を倒す力に目覚めた元お姫様の冒険を描きます。監督は『メルヘン・メドヘン』『ゲキドル』の上田繁、シリーズ構成は『ゲキドル』でもチーフライターを務めた大知慶一郎。キャラデザは『ひなろじ from Luck&Logic』(共同)『3D彼女 リアルガール』の栗田聡美と『なむあみだ仏っ!蓮台 UTENA』の加藤真人。アニメーション制作は『お前はまだグンマを知らない』『天地創造デザイン部』『WAVE!!〜サーフィンやっぺ!!〜』の旭プロダクション。放送・配信形態が少々特殊で、原作エピソードの時系列をシャッフルした「オンエア版」と、dアニメストアで視聴できる原作通りの順番になっている「時系列版」の2形態が存在します。時系列をシャッフルした意図は下記の監督インタビューから確認できますが、お世辞にも成功したとは言いがたいです。
時系列シャッフルによってキャラ同士の関係性や発生した事件の順番が煩雑になるため、視聴者側は当然非常に混乱します。知らないキャラがいきなり「もうご存知ですよね?」みたいな状態で出てきたり、引きとなる事件が起こっても別のエピソードで中断されるせいで結局フックとしての機能を果たせていなかったり……。確かに終わり方だけは綺麗でしたが、そのためにここまでの混乱を引き起こす必要があったかは甚だ疑問です。どちらにせよ、原作が未完結な以上俺たたエンドになることはわかりきっていたことですし。
ストーリーは良くも悪くも凡庸です。時系列通りに見せてもらえていればもっと楽しめていたかもしれませんが、話が飛び飛びになるシャッフル版では全体としてのつながりが不明瞭に感じられました。それでも、終盤のサリーが唱える鬼と人間の共存志向は、本人の行動だけ見てると「ぶん殴ってから宥和を求める」態度を地で行くように見え、ちょっと言動の乖離が気になりました。あとこういうのにお約束の人型の鬼だけやたら生き残るところも、まぁ見た目上多少仕方ない面はあるにしても引っかかります。ミコトの過去編とかは面白かったし、作画も質アニメとまでは呼べないにしても頑張ってた方だとは思いますが、総じて成功したとは言えないアニメ化でした。
100万の命の上に俺は立っている(第2シーズン)
2020年秋クールの第1シーズンに続く2クール目。スタッフは変更なし。
1クール目よりは多少盛り上がっていたようには思いますが、やはりクオリティとしては微妙。戦闘シーンはメリハリがなく、キャラごとの有能無能に差がありすぎるせいで、不満がたまるシーンもしばしば。5周目は、petit miladyのライブがあったのには笑ったけど、過剰に訛りを強調する演出に意図を感じられず、終盤にかけては、自然災害にかける作者の気持ちが先行して物語に十分昇華できていないと感じました。キャラが作者の気持ちを代弁するだけでは描写に説得力を持たせることはできません。6周目は、原作漫画ではなく小説版「~死出の旅編~」のルートが描かれたようです。こちらは新キャラのグレンダさんが有能なのに加えて割と続きが気になるサスペンスな展開で、もしかすると今までで一番面白かったかもしれません。ただ結局敵が何をしたかったのかよくわからんし、全体を通して中途半端な印象は拭えませんでした。身も蓋もない言い方をすると、完結したらオチだけ教えて、となるような作品なんですよね……。
不滅のあなたへ
2クール目。全20話と言うことで、他作に先駆けて一足早く放送終了となりました。個人的には総じてグーグー編がピークでした。トナリ編くらいになると、「この子たちもフシに会っちゃったばっかりに不幸な目に遭って死んでしまうんやろなぁ」みたいな目で見てしまって、それまでの過程に何があってもいまいち集中しきれないんですよね。続編も決定したようですが、このパターン自体を大きく崩さないと、自分の中でグーグー編を超えることは難しいんじゃないかと思ってしまいました。最終回で新天地?に到着したっぽかったので今後の展開に期待です。
平穏世代の韋駄天達
『異種族レビュアーズ』の原作でおなじみ天原がかつて「新都社」にて連載していた漫画作品をもとに、作画にクール教信者を迎え、「ヤングアニマル」にて連載中の漫画作品が原作。ちなみに今期クール教信者は関連作品が3作品同時期にアニメ化されるという前代未聞の人気漫画家になっています。アニメーション制作は『ゾンビランドサガ』『ドロヘドロ』『呪術廻戦』などで知られる今をときめくMAPPA。監督は『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』助監督『はいからさんが通る 後編 -花の東京大ロマン-』監督の城所聖明。MAPPA作品では『体操ザムライ』で絵コンテを担当しています。シリーズ構成は『ドロヘドロ』『デカダンス』『呪術廻戦』の瀬古浩司。キャラデザは『BEASTARS』の大津直。声優陣が異常に豪華なのも特徴で、主要キャラのCVが朴璐美(49)、緒方恵美(56)、堀江由衣(44)、岡村明美(52)、石田彰(53)と、堀江由衣が一番若手とかいう訳の分からない事態になっています。
「韋駄天」と呼ばれる神々と魔族との戦争が終結して800年、生まれてから一度も戦いを経験したことのない「平穏世代」の韋駄天たちと、復活した魔族たちとの戦いが始まる……みたいなお話なんですが、基本的に韋駄天側の戦力が魔族側をめちゃくちゃ上回っているので、なんか「俺TUEEE」を見てるみたいな気分になります。でもそういう楽しみ方を想定して作られてるわけじゃないっぽいんですよね。ちょろっと苦戦することはあっても最初から最後までず~~~~っと韋駄天側が有利ですし、少年ジャンプ的なバトル展開も勝敗が見えるのでそれほど高揚しない。なんだか魔族側に同情してしまうストーリーでした。アングラっぽさを押し出すエログロや、韋駄天たちを「人間の価値観から離れた存在」とやたら強調する中二病的世界観にもさほど心惹かれませんでした*22。スカしたメガネのイースリイくんは一度ボコボコにされてほしい。終盤でちょっとされてたけどあんなのじゃ全然足りない。
ただ、女性キャラのデザインが全体的に好みで、使い捨てっぽいキャラもいちいち可愛かったです。お気に入りはピサラ大将。洗脳されたり解かれたり忙しそうでしたね。終わり方はものすごい中途半端でしたけど、これはWeb連載されていた原作に追いついたからみたい。アニメーションとしては、全体的にポップな色使いが画面によく映え、ド派手な戦闘もよく動いていて良かったと思います。
ぼくたちのリメイク
木緒なちによるMF文庫Jのライトノベルが原作。ちなみに作者はデザイナーとしても活躍しており、『ご注文はうさぎですか?』『ひだまりスケッチ』などのロゴデザインも手がけています。監督は『うたわれるもの』『アカメが斬る!』『<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-』の小林智樹。シリーズ構成は原作者である木緒が自ら担当します。キャラデザは『まよチキ!』『フレームアームズ・ガール』『ISLAND』の川村幸祐。直近では『おちこぼれフルーツタルト』のEDアニメも手がけています。アニメーション制作は『ヨスガノソラ』『この美術部には問題がある!』『月がきれい』のfeel.。
ゲームディレクターの主人公が、突然10年前にタイムスリップ。当時入学しなかった芸大へ進学し、後に「プラチナ世代」と呼ばれることになる仲間たちとシェアハウスすることに、みたいな話。タイムスリップした舞台が2006年ということで、『凉宮ハルヒの憂鬱』、『マブラヴオルタネイティヴ』、『すーぱーそに子』など往年の名作コンテンツとコラボしていたのも印象的です。原作ファンではありますが、アニメは正直言って悪い側面ばかりが強調されていた(されているように見えた)ように思います。これは見せ方が悪いのか、そもそも映像化した時点でもう避けられない本作の特徴だったのかは判断が難しいですが、いずれにせよ、高い評価は得がたい作品でした。ヒロインズは可愛かった。シノアキのふわふわした感じとかイメージ通りだったし、ナナコも愛美だけあって歌上手かった。河瀬川はママだった。「すごい」映像とかを「すごい」と言うだけで全部内容はカットしてくのは気になったけど、作画も十分及第点でした。本作で大きな引っかかりとなったのは主人公の傲慢さと展開の唐突さです。これは絵と声がついたことによる功罪でしょう。「ぜってぇなんとかする」という台詞、パッと聞くと熱いですけど「自分が一人で何とかする」の意味なんですよね。ディレクターという立場も相まって、仲間を自分の思い通りに操ろうとしている感がすごい。失敗と挫折を経るのは良いんですが、いまいちそれを反省している様子が見えない。あとは、そこはかとないサイコパス感も漂ってましたね。別の未来で出会った自分の嫁や娘との別れが淡泊だったり、側で同僚がキレられてるのにヘッドホンでニコニコ見出したり……。展開も、書籍と違って巻をまたいでリセットとかがないので、未来行ったり過去行ったりに唐突さがありますし、学費をエロゲで稼ごうというのにもなんで?となります。いずれも原作では特に違和感を覚えなかったので、媒体によってヘイトの向き方が変わってくるなぁ~っていう印象でした。繰り返しますが原作は好きなんですよ。でもアニメには向いてなかったかなぁと思わざるを得ません。結局終わり方もめちゃくちゃぶった切りで、消化不良感が強かったです。
個人的には主人公の声優さんも苦手でした。本人の経験が浅いのか、ディレクションによるものなのか分からないんですけど、ずっと感情が薄いというか、かすかに棒なんですよね。主人公のサイコパス感が余計増してた気がします。
マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-
人気アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の外伝作品となるスマートフォン向けゲームアプリが原作。2020年冬クールに放送された第1期に続く第2期。「覚醒前夜」というサブタイから伝わってくるまだ終わらんよ感の通り、第3期「Final SEASON -浅き夢の暁-」が年末に放送予定だそう。スタッフは概ね1期から続投していますが、副監督だった宮本幸裕(『荒川アンダー ザ ブリッジ』『魔法少女まどか☆マギカ』『電波女と青春男』シリーズディレクター)が監督に繰り上がっていたり*23、シリーズ構成に高山カツヒコ(『バカとテストと召喚獣』『アルドノア・ゼロ』『サクラダリセット』)が追加されていたり、伊藤良明(『ひだまりスケッチ』キャラデザ)と岩本里奈(『クビキリサイクル』総作監)が総作監になっていたり、メインアニメーターに川田和樹、長田寛人が追加されていたりと細々した違いが。
作画、ものすごく頑張ってるんですけど、今回も間に合ってないところが散見されました。序盤の戦闘シーンとかすごい動いてて、これ最後まで保つんか?と思ってたら案の定保たなかったみたい。総集編&ごまかしカット乱発のダブルパンチでした。
1話の見滝原組の話が最高で、「このまままどマギ2期やってくれん?」と思ってたんですが、1期の小エピソードが続く感じではなく、マギウスの翼をめぐるバトルがガンガン展開していくので、1期よりはお話も画面も結構楽しめたと思います。新旧主人公の共闘も割とアツかったし。内容は大体由比鶴乃が可哀想、でまとめられちゃうんですけどね。ただ、やっぱりまどマギありきって感じは強くて、アニメ勢としてはやっぱり本編のメンツの方が思い入れ強い分、相対的にマギレコキャラにはいまいち興味が湧かなかったり……。人数も多いし、関係性も色々ですしね。
あと、話の良いところで区切られるのはやっぱりキリ悪く感じます。間隔空いちゃうとどうしても熱も冷めちゃうし。
魔法科高校の優等生
佐島勤による電撃文庫のライトノベルのスピンオフである森夕・作画の漫画作品が原作。本編の「入学編」「九校戦編」をお兄様の妹、深雪の視点から描きます。2020年秋クールに原作第2期となる「来訪者編」が放送されたことも記憶に新しい。本編の続編となる「追憶編」の放送も決定しました(リンク)。一方、こちらのスタッフは本編とは完全に異なる座組。監督は『武装少女マキャヴェリズム』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ』の橘秀樹、シリーズ構成は『モモキュンソード』『ぱすてるメモリーズ』『WIXOSS DIVA(A)LIVE』の玉井☆豪、キャラデザは『ド級編隊エグゼロス』の山本亮友と『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』の佐野隆雄。アニメーション制作はSILVER LINK.の子会社だったCONNECTですが、昨年7月の時点でシルリン本体に吸収合併されている(ソース)はずなので、シルリンのブランド名みたいなもんと思えば良いのでしょうか。
作画の方は優等生とはいかなかったようで、なんだか全体的に絵が不安定でした。お兄様はなんかずっと覇気のないモブ顔だったし……。その上で、話が本編の焼き直しでしかないんですよね。「お兄様の裏で実は深雪とか雫とかほのかがこんなことやってたんだよ」的なエピソードが続くんですが、何がどうなるかは大体知ってるし、驚きとか新鮮さは全くない。特に九校戦編*24では一高をライバル視する娘たち(画像左側の皆さん)が出てくるんですけど、どんなにその娘たちが優秀な描写を入れようが、彼女たちが努力しようが、感動エピソードを入れようが、「どうせ深雪が勝つんだよなぁ……」みたいな醒めた目でしか見れなかったのはホントに良くなかった。女の子がわちゃわちゃしてるのを楽しむには作画もちょっと足りないし、あまり意義のあるスピンオフとは言えなかったような気がします。でも、お兄様のチート技術によって他チームから見ればほぼズルみたいな手で勝利を重ねていく一高女子チームを見てるのは面白かったです。
迷宮ブラックカンパニー
マッグガーテンのWeb漫画配信サイト「MAGCOMI」および「月刊コミックガーデン」にて連載中の安村洋平による漫画作品が原作。監督は『政宗くんのリベンジ』『すのはら荘の管理人さん』の湊未來、シリーズ構成は今期3本掛け持ちの赤尾でこ、キャラデザは『政宗くんのリベンジ』『つうかあ』『賢者の孫』の澤入祐樹。アニメーション制作はSILVER LINK.。
個人的今期のダークホース。今期最もシンプルに楽しむことができた作品かもしれません。誰が言ったか「異世界こち亀」というたとえがわかりやすいと思います。金持ちになって悠々自適のニート生活を送ろうとした矢先に異世界に飛ばされた可哀想な主人公ですが、異世界のブラック企業でも持ち前のゴーイングマイウェイな精神を発揮して成功と失敗を繰り返していくお話です。序盤は「こち亀」的な一話完結の話もテンポが良く、安定して面白かったんですが、中盤大きく話が動き出してから、思っていた以上にしっかりしたストーリー展開があって、それも非常に面白かった。テンポも相変わらず良いし、引きも上手いし、既出のキャラと新キャラがつながったりして、行き当たりばったりじゃなく、しっかり考えられた展開だったのが良かったですね。とにかく主人公の二ノ宮が良い性格*25をしてて、なんかそのカリスマ性みたいなのにすごい惹かれましたね。汚いカミナ。基本ドライなんだけど、身内にはなんだかんだ甘いのも好き。女性陣だとリムが好きですね。久野美咲さん、ハマり役しかねぇ。
OP・EDも良曲で、後半EDの謎ダンスも自分は結構お気に入りです。ただEDはともかく、OPはアニメの内容に寄せる気ゼロで笑ってしまう。
女神寮の寮母くん。
「月刊少年エース」にて連載中の日野行望による漫画作品が原作。初監督となる中重俊祐は、『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』OPアニメ*26や『ランウェイで笑って』OPアニメ、今期では『うらみちお兄さん』OP『RE-MAIN』EDで絵コンテ・演出を担当されています。もちろん本作でもOP・EDを担当。シリーズ構成は『SHUFFLE!』『織田信奈の野望』『プランダラ』の鈴木雅詞、キャラデザ・総作監は『未来日記』『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』総作監(いずれも共同)の岡田万衣子。アニメーション制作は『SHUFFLE!』『未来日記』『勇しぶ。』『ありふれた職業で世界最強』(WHITE FOXと共同)のアスリード。単独元請は2016年の『ビッグオーダー』以来ですかね。
内容はちょっとエッチなおねショタコメディ。主人公は男の子ですが、寮母です。本人がそう言ってるのでそうなんでしょう。自主規制の度合いが異なる「風紀まもるくん修正バージョン」、「風紀まもるくん無修正バージョン」、「風紀まもるくんシースルーバージョン」の3種類が存在。また、OP・EDを歌唱するキャラの中の人が、本編で声をあてる声優ではなく、「公式2.5次元キャラクター」であるコスプレイヤーたちとなっているのも特徴*27。謎のレイヤー推しはアニメ本編でも存在し、街の広告にゴリゴリの実写レイヤーの写真があったりと、なかなか目立っていました。
ストーリーはエッチなイベントあり、誰得微シリアスありと、まぁこの手の作品としては十分な出来。絵も可愛かったですし。女性キャラもみんなどっか意味わからんぶっ飛んだとこがあって、よくキャラ立ちしてたと思います。僕はせれね推し。
ラブライブ!スーパースター!!
スクールアイドルを題材とする『ラブライブ!』シリーズ第4作。NHK Eテレの日曜19時からという、どの層を狙っているのかよく分からない時間帯で放送されました。オリパラの影響をもろに受けた途切れ途切れ放送も印象深いですね。2020年秋クールの『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が『ラブライブ』シリーズの中ではストーリー、スタッフともにややイレギュラーだったのに対し、本作では監督・京極尚彦、シリーズ構成・花田十輝の無印、『サンシャイン!!』コンビが復活し、室田雄平もキャラ原案としてクレジットされています。キャラデザは京アニ出身で『ソードアート・オンライン』『ハイスクール・フリート』でメインアニメーターを務めた斎藤敦史が担当します。アニメーション制作はこれまでと同じくサンライズ。放送終了後、イベントでアニメ2期の制作決定が告知されました(リンク)。
開校したばかりの結ヶ丘女子高校を舞台に、主人公たちがスクールアイドルユニットを結成します。正直に言うと、演出と作画、そして音楽と演技によって脚本を補強している印象が強かったです。インタビューで脚本家本人も「物語よりエモーションに重きを置きたい作品の時は、いい台詞(せりふ)や会話が書けたら、ストーリーの方を変えて台詞を生かす」と言われてるんですけど、その良い面悪い面が両方出てきちゃったなぁという感じです。例えば、ギャグっぽいシーンであってもあんまりな扱いのすみれは可哀想に見えるシーンが度々ありましたし*28、恋のエ〇サイト云々みたいな話も後々まで擦るし、そういうちょっと引っかかる、みたいな描写は結構頻繁にありました。ストーリー上の根幹に関わるところでキャラ同士がギスるのは全然良いんですけど、ギャグシーンとかで「お前らホントに仲良いんか?」みたいなシーンがあったのはちょっと残念かな~と。まぁもっと首をかしげたのは前半の山場となる、恋のユニット入りをめぐるゴタゴタです。「廃校」と明言はされてなかったと思いますが、ま~た学校存続の危機かい!!という呆れがなかったかと言われると嘘になります。しかも今回は新設校やぞ。生徒会長選も、音楽科、普通科双方の一般生徒のことを考えると非常にモヤモヤしました。これも無印のころからずっと変わらないこのシリーズの特徴なんですが、「世界が主人公たちのために回っている」感がすごいんですよね。いわゆる神モブ*29ってやつもそうですが、生徒会長選に関しては恋に対するヘイトが相当溜まってたはずなのに、ものすごくあっさりモブたちも納得してて違和感がありました。終わり方も、これまで以上に2期以降を前提とする終わり方で、もう最初から2クールでやれや!という気分になってしまいました。
一方で、グループの人数が5人に絞られたことで、それぞれのキャラがよりフォーカスされてたのは良かったところだと思います*30。すみれのセンターをめぐるお話とか、かのんと千砂都の関係性とか。あと、唐可可という逸材をこの世に生みだした功績は大きいと思います。中国総領事館に「どんな人でも馴れ馴れしい、不満ならすぐ言い出すなど、中国人らしい性格を持っており、中国でも大好評」とまで言わしめた女ですからね。ホントに褒めてる? 冗談はさておき、その行動力と積極性は物語を動かす原動力となってましたし、シンプルに可愛い。カタコトの喋り方とかね。声優さんの演技も良かった。特にかのんは、その歌唱力はもちろんのこと*31、新人とは思えない表情豊かな演技が魅力的で、ラブライブ!コンテンツにとどまることなく広く活躍の場を広げて欲しいなと思います。
作画演出も非常に良かった。毎話「おっ」ってなるようなカメラワークとかキャラの動きとか、隠喩的な表現とかがあって、SNSとかでもちょいちょい話題になってましたね。個人的には、これまでのシリーズより一層キャラが表情豊かだったかなと思います。顔ももちろんだけど、動きもすごい生き生きしてて、それがとても良かったですね。ライブシーンや音楽ももちろん良かったんだけど、個人的には、全体的に虹ヶ咲の方が好みだったかなぁ(小声)。これに関しては完全に趣味嗜好の問題なので、どっちが優れてる優れてないの話ではないですが。曲としてはEDが一番好き。アニメーションもすごく良いんですよ*32。すみれと可可が「ぐわし」みたいなパネル?を突き出してくるがすごい好き。恋・かのん・千砂都の3人が左右に揺れてるとこの、なんというか体重が移動してるなって感じも好き。もちろんそこに続くかのんのアホアホダンス→だんだんメンバーが揃っていく展開も大好き。公式が動画挙げてくれているので、是非見ていって下さい。
といった感じで、好きなところもたくさんあったんだけど、う~んってところも多かった、ちょっと悩ましい作品でした。
RE-MAIN
『TIGER & BUNNY』で知られる西田征史が原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督を務める、水球を題材としたオリジナルアニメ。監督は『うちタマ?! うちのタマ知りませんか?』の松田清、キャラデザは『BANANA FISH』各話総作監の田中志穂。アニメーション制作はMAPPAで、今期2本目。事故によって水球トップ選手として活躍した中学時代の記憶を失った主人公が、入学した高校の弱小水球部で頑張るお話。
1話がいきなり主人公が記憶喪失になりました!というところから始まって、えぇ……って感じだったんですが、終わってみれば(多少の強引さには目をつぶるとして)、結構綺麗なストーリーだったと思います。序盤はやたらガキくさい主人公とか、事故のせいでギクシャクしてしまっている家庭環境とか、デリカシーの欠片もないメガネとか、全体的にノリの厳しいところがあって、なかなかハマりきれませんでした。が、8話からまた様相が変わってきて、それ自体はかなり強引な展開だったんですが、そこから最終話にかけての主人公の印象のコントロールの仕方が非常に上手かった。記憶喪失というギミックをストーリーのレベルでしっかり落とし込んでいたと思います。水球の技術的な面でも*33、精神的な面でも、主人公の成長の描写が非常に丁寧に描写されていたのが良かったです。1クールの割にはサブキャラの抱える事情とかもしっかり掘り下げられていて、様々な背景を持ったキャラたちが、チームとして一つにまとまっていく過程を楽しむことができました。部長がマジで聖人過ぎるんですよね……。水球シーンは割とふわっとした感じで見てたんですが、最後の試合はめちゃくちゃアツかった。主人公がシュートを打とうとして……からのあれがもう、ね。
以上、全35作品、約3万字の感想でした。ちなみに再放送では、配信や放送局の関係でリアタイできなかった『オッドタクシー』を見たんですが、「やられた!」って感じでした。こりゃみんな褒めるわ。秋クールも個性的な作品が多くて、毎日楽しませてもらっています。できればもう少し早く感想を仕上げたいところですが、なかなか難しいかも……。
*1:とまで言えるかは微妙だけど
*2:この二作の制作会社である「Ezo'la」がディオメディアとスタジオブランの事実上の共同ペンネームという説もある
*3:今期だと『ジャヒー様はくじけない!』のEDも担当してる
*4:『暁のヨナ』で脚本を何話か担当しているのでそのつながりか?
*5:主語がでかい
*6:「さあ、君の夢は/始まったばかりだ!!」の「!!」が狂おしいほど好き
*7:監督つながりか、挿入歌として『スレイヤーズNEXT』OPテーマ「Give a reason」が使用されました
*8:優良進行の証
*9:コップの水によってトールが反転するとことか印象的です
*10:ちなみに僕はカフが好き
*11:ちなみに監督が謙虚なシリーズでもある
*12:死んどるなやいか
*13:本人が売れる前に実際に貧乏暮らしをしていたというところまで含めて
*16:厳密に言うと違うけど
*17:OP終わりの美少女連打参照
*18:通常EDが別に用意されてるのも笑った
*19:当然のようにめちゃくちゃ強い
*20:特に霧原兄
*21:ループバレの原因もしょうもなかった
*22:人間のギルや宗教国家の盟主を使ってそれをことさら強調するくだりには、かゆみさえ覚えます
*23:1期にはそもそも監督という役職がなかった
*24:というか5話からずっと九校戦編なんですけど
*25:性格が良いの意味ではない
*26:「Resolution」と「ANIMA」どっちも
*27:八月朔日せれね役の夜道雪だけは本編と歌唱どっちも兼ねてる
*28:逆に可可が異常に当たりのキツい意地悪なやつになってた
*29:今作でも、最終話で本職大道具もびっくりの豪華な舞台を建設してくれていました
*30:恋さんは後半空気だった気もするけど……
*31:スバラシイコエノヒト