あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

線は、僕を描く/砥上裕將(講談社)【感想】

 

2022年2月9日読了。

 

あらすじ

2020年本屋大賞第3位!

「ブランチBOOK大賞2019」受賞!
「未来屋小説大賞」第3位
「キノベス!2020」第6位

小説の向こうに絵が見える! 美しさに涙あふれる読書体験

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

絶賛の声、続々!!!

自分の輪郭を掴む、というのは青春小説の王道たるテーマと言っていい。それを著者は、線が輪郭となり世界を構成する水墨画と見事に重ね合わせてみせた。こんな方法があったのか。
青春小説と芸術小説が最高の形で融合した一冊である。強く推す。
                               ――大矢博子(書評家)

水墨画という非言語の芸術分野を題材にした小説で、架空の登場人物が手にした人生とアートの関係性、時空をも越えたコミュニケーションにまつわる真理を、反発心や違和感など一ミリも感じることなく、深い納得を抱いて受け取ることができた。それって、当たり前のことじゃない。一流の作家だけが成し遂げることのできる、奇跡の感触がここにある。
                               ――吉田大助(ライター)

"点"は意志を持てば"線"になり、
誰かと誰かを繋ぐ
いつしか"縁"となる
線は、僕を描く
新しい自分を何度でもはじめよう
                               ――金井政人(BIGMAMA)

心の中に静かな水滴が落ちて、
その波紋が何処までも残っている
この先の僕を描く
一部になってくれた本です
                               ――加藤慎一フジファブリック
                                
美しさに温かさに涙があふれる。いつまでも読み終わりたくない傑作。
漫画版センボク、全4巻完結!!!
漫画は『この剣が月を斬る』の堀内厚徳さん。漫画内の水墨画は砥上裕將さんによるものです!!

出典:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000317710

第59回メフィスト賞受賞作品。受賞時のタイトルは『黒白の花蕾』。

 

感想

 作中に登場する水墨画を作者本人が描いたコミカライズもあるそうで、そっちも若干気になったり。

 水墨画」という馴染みのない題材に触れるには良い作品……ですが、展開にあまりひねりがなく、エンタメ作品としては微妙に感じました。

 作者本人が水墨画家というだけあり、水墨画という芸術の考え方や、文章による絵の表現、主人公やライバルの絵師としての成長の描写といった点は見所がありました。しかし、ストーリーは主人公が巨匠に偶然才能を見出され、あれよあれよという間にその才能を開花させていく、という一本調子の単純なサクセスストーリーでいまいち面白味に欠け、物語とはいえちょっと出来過ぎな感があります。また、まるで教科書や試験問題に出てくる登場人物のような人間味に欠ける会話ももうちょっと何とかして欲しかった。やたらと陰気で内省的な主人公の語り口は好みの分かれるところでしょうが、ある種の陶酔感はあって、引き込まれないこともない。掻き回し役の友人、師匠、ライバル兼ヒロイン、技術派キャラ、感覚派キャラ等々キャラ配置も結構テンプレ的ではありますが、知らない題材なだけに、語られる内容自体はへぇ~そうなんだ、となります。とはいえ、全体的に「雰囲気小説」って感じは否めなくて、ただそういう系統の作品が好きな人には刺さるような気もします。