あすはひのきになろう

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お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険/阿藤玲(創元推理文庫)【感想】

 

2021年11月6日読了。

 

あらすじ

授業が終われば速やかに帰宅し、成績は平均以上、通学区域で社会奉仕をすべし──帰宅部といっても佐々木幸弘が入学した御出学園の場合、正式な部活動としての規定がある。ベニヤ製の人形が夜な夜な徘徊していると聞いて調査に乗り出したのは、地域の皆さんのためにと燃えたわけではなく単なる成り行きだったが、結果的に帰宅部メンバーの認知度は上がり、相談と称してささやかな事件が持ち込まれるようになる。それなりに、または懸命に、使命を果たすべく奮闘する生徒たち。笑いのち友情ときどき謎の高校生活を描く、軽やかなデビュー連作集。解説=佳多山大地

出典:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488483111

 

 

感想

 重要でない登場人物が多すぎました。名前だけ出てきて、特に活躍することなく終わったキャラや、そこの二人、合体して一人にできん?みたいなキャラが目につき、そのせいで文章がやたら煩雑になっていたと思います。キャラ同士の掛け合いもぎこちなく、情報を伝えようという意図が先行しているように感じられるせいで、血の通った会話になっていない印象を受けました。新人作家とはいえ、リーダビリティの低さは大きな問題点と言えます。

 副題に「帰宅部」と掲げている割には、それっぽい描写に欠けるのも気になります。部活として確立された帰宅部という着想は良いとしても、別に帰宅途中の謎ばかりと解くわけではなく、一般的な学園を舞台にした日常の謎もの、という感じで、舞台設定に必然性が見受けられませんでした。

 各エピソードの方向性も散漫です。解説者は自身が白眉と見なす「左利きの月」に付け足す形で執筆されたのではないかと考えていますが、確かに1冊全体を見通した時につながりが曖昧で、もう少し一貫性がほしいと思ってしまいます。特に最終話の「お姫様たちの文化祭」は学園もののミステリというよりはミステリ風味の学園ものです。

 全体として満足したとは言い難いですが、収録作の中でお気に入りだったのは「たたかうにんじん」。短編だからこそのテンポ感と、子どもの心理に対する大人の盲点を活かしたオチの微笑ましさが良かったです。ミステリ読みが惹かれるのは解説者の言う「左利きの月」なのかもしれませんが、謎と描写が追いつけず、個人的には混乱が先に立ってしまいました。