あすはひのきになろう

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オルタネート/加藤シゲアキ(新潮社)【感想】

 

2022年11月5日読了。

 

あらすじ

私は、私を育てていく――。誰しもが恋い焦がれた青春の普遍を真っ向から描き切る、加藤シゲアキ、これが新たな代表作。

高校生限定のマッチングアプリが必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、3人の若者の運命が、鮮やかに加速していく――。恋とは、友情とは、家族とは、人と“繋がる”とは何か。悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描く。著者3年ぶり、渾身の新作長編。

出典:https://www.shinchosha.co.jp/book/353731/

 

 

第42回吉川英治文学新人賞、第8回高校生直木賞受賞作品。第164回直木賞候補作。第18回2021年本屋大賞第8位。吉川英治文学新人賞及び直木賞での選評の概要はこちら

 

感想

 どことなく輪郭を捉えがたい作品だった。タイトルにあるマッチングアプリ「オルタネート」がなくても成立する話のような気もするが、あえて「オルタネート」との距離感が様々な登場人物を配置することで、立体的に世界観を描き出したかったのだろうと思う。3人の主人公の距離感からもそうした意図がうかがえる。ただ、主人公3人とその周囲の人物という人間関係と、恋愛に料理に音楽にと取り扱う題材の多さから、ごちゃついている印象は否めない。一方で、終盤の料理対決とセッションを重ね合わせるハイライトの盛り上がりには高揚感があり、それぞれの抱える問題に対する決着の付け方はいずれも清々しい。瑞々しい青春小説としての体裁を整えている一方、解決が持ち越されている問題も散見される。瑕疵では決してないが、そういったところが捉えがたさにつながったのかもしれない。しかし、確かに読ませる筆力を持つ作品だったことは間違いないと思います。