あすはひのきになろう

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サーキット・スイッチャー/安野貴博(早川書房)【感想】

 

 

2022年7月7日読了。

 

あらすじ

第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。東大卒の現役ソフトウェアエンジニアが放つ、恐るべき完成度のデビュー作

完全自動運転車が普及した2029年の日本。自動運転アルゴリズム開発会社の社長・坂本は、仕事場の自動運転車内で突如拘束された。襲撃犯はその様子をライブ配信し首都高の封鎖を要求、さもなくば車内に仕掛けた爆弾が爆発すると告げる……迫真のテクノスリラー

出典:https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015023/

 

 

第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作品。

 

感想

 自動運転車をめぐるサスペンス。もし事故を防ぎきれない時、どういった人物の命を奪うことを許容するのか?というトロッコ問題を取り上げて、AI時代の功罪を描きます。

 ストーリーラインが明確で、文章が読みやすい。提起したい問題も時代に沿った非常に現実的なもので、「未来は自分の手で作るもの」というキーワードに象徴されるように、伝えたいメッセージもまっすぐです。犯人の主張も、ある意味で論理的な筋は通っており、我々は常に選択を迫られている、ということに気づかされます。非常によくできている一方で、優等生すぎるというか、逆にインパクトに欠けるという面もあったかもしれません。軸となるカージャック事件の被害者であるプログラマのお話が、「技術者だからって技術のことばっかり考えてるだけじゃ駄目だよね、それに付随する倫理的な問題にも目を向けようね」というシンプルすぎる教訓に換言できてしまいそうなところも、もう少し工夫があっても良かったかもしれません。ただ、読みやすく面白いサスペンス小説であり、なおかつ現実への問題提起も含んでいるという点で、非常によくできた作品だったということに変わりはありません。