あすはひのきになろう

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僕らのセカイはフィクションで/夏海公司(電撃文庫)【感想】

 

2022年6月4日読了。

 

あらすじ

自作小説のキャラが現実世界に? 作者の知識で理想のヒロインを守り抜け!

 学園事件解決人・笹貫文士の高校生活は忙しい。学園内外のトラブルを引き受けながら、創作活動――Webで小説を連載する作家としても人気を博していた。
 最新作『アポカリプス・メイデン』の評価は高く、有名イラストレーターがファンアートを描いてくれるほど。しかし今、文士の筆は止まっていた。この先の展開に詰まっていたのだ。
 定期更新の締切が迫る中、学校からの帰り道でも、ヒロイン・いろはが活躍する山場のシーンに思考を巡らせる。ようやくイメージがまとまりそうになった瞬間──そのいろはが文士の目の前を駆け抜けて行くのだった──。
 超常現象(ファンタジー)と現実(リアル)の境界を超えて、作者知識で無双せよ!? 謎が謎を呼ぶボーイ・ミーツ・ヒロインここに開幕!

出典:https://dengekibunko.jp/product/322106001048.html

 

 

感想

 『なれる!SE』『ガーリー・エアフォース』の作者さんですね。作品を読むのはこれが初めてかな。

 ベテランだけあって、安定感のある面白さだったと思います。常に何らかの謎が提示されているので物語に牽引力があるし、入れ子構造というか、視点が逆転するようになっている構成にもひねりが利いています。まぁ何となく構造の察しはつきますが、主人公のキャラがよく立っているのと、テンポも良いのでそれでもちゃんと面白い。作中作の設定も結構凝っていて、作中で自己韜晦しているほどテンプレくさくは見えなかったですね。個人的なハイライトは終盤の〈ゴルディアスの剣〉のシーン。それまでで一度ツッコミが入れられたレトリックを逆手にとって起死回生の一手とするところが良かったです。

 タイトルに「セカイ」と入っているとおり、女の子が世界の命運を握っているいわゆる「セカイ系」の流れを汲むところもあり、特に後半に明かされるこの世界の真実的なアレコレは、正直既視感あるというか、その点そのものにあんまり惹かれはしませんでしたが、プログラムに喩えた説明なんかは、元SEである作者ならではと言えるかもしれません。

 落としどころも妥当ですし、総じてよくまとまった一冊だったと思います。