あすはひのきになろう

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結婚が前提のラブコメ 5/栗ノ原草介 (ガガガ文庫)【感想】

 

2021年12月14日読了。

 

あらすじ

それぞれの結婚、それぞれの幸せ。
「牡丹と男爵の縁を結んでほしい」

――編集長の神代からの依頼をきっかけに、可能性を探しはじめた縁太郎。

しかし、牡丹にとって男爵は“ライバル"であり、どんなにいっても“お友達どまり"であると断言されてしまう。
うなだれ筆も進まない男爵に、編集部も焦りを募らせる。

アシスタント時代は仲がよかったというふたり。
デビュー後にすれちがってしまったことを知った縁太郎は、マンガを婚活に使うことを考えるが……? 

熱き筆にのせて、かつての想いが鮮やかに蘇る! 
大人気婚活ラブコメ、恋と青春の第5幕!

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09453034

 

 

感想

 今巻では、エロマンガ家・牡丹の婚活に焦点があてられます。前巻で登場した男爵とくっつくんやろな~っていうのは既定路線なんですが、その過程がとても良かったと思います。

 主人公に好意を抱いていたヒロインがポッと出の男キャラ(あまり良くない表現ですが)とくっつく展開は、ともすればやっつけ感が出てしまって非常に悪い印象をもたらしかねないのですが、今巻では牡丹と男爵がくっつくに至る二人の気持ちと、二人の距離が縮まっていく過程が非常に説得的に描かれていて、大変満足でした。漫画家という二人の共通の職業を活かした漫画の共作をラブレターのアナロジーに使う(ネタバレにつき反転)のがロマンチックで、また牡丹が最終的に下した決断も自由かつ多様性を感じさせる、彼女らしい奔放な結論に思われるとともに、「婚活」をテーマとする本作でこのような幸せを描くことも、非常に意義深いと感じます。

 あとがきによればいよいよ次巻で完結ということで、黒峰を中心とした結婚相談所業界の流れと、主人公がカレンと結衣のどちらを選ぶのかという、シリーズを牽引する要素であった二つの題材をどのようにまとめあげるかも非常に楽しみです。特に後者の方は、主人公の気持ちは結衣に傾いている一方で、結衣はどちらかというと今の白城結婚相談所の雰囲気を壊したくない、という気持ちが強まってきているようで、こうした気持ちの向きの違いが物語にどう反映されるかに注目したいところ。個人的には、気持ちを前面に押し出していこうという姿勢のはっきりしたカレンを応援したいのですが、かといって結衣にも幸せになって欲しい……。是非、キャラクター全員が大団円で終わるフィナーレを期待したいと思います。