あすはひのきになろう

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後宮の烏/白川紺子(集英社オレンジ文庫)【感想】

 

2022年9月8日読了。

 

あらすじ

後宮の奥深く、〈烏妃(うひ)〉と呼ばれる妃が住んでいる。
後宮の奥深く、妃でありながら夜伽をすることのない、「烏妃」と呼ばれる特別な妃が住んでいる。その姿を見た者は、老婆であると言う者もいれば、少女だったと言う者もいた。彼女は不思議な術を使い、呪殺から失せ物さがしまで、何でも引き受けてくれるという――。時の皇帝・高峻は、ある依頼のため烏妃の元を訪れる。この巡り合わせが、歴史を覆す禁忌になると知らずに。

出典:http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086801884

 

 

感想

 不思議な力を使う「烏妃(うひ)」こと寿雪が、帝をはじめとする依頼人からの依頼を受けて、幽鬼騒ぎを解決したり落とし物の持ち主を捜したりするお話。短編連作形式で、終盤で「烏妃」という役職がどのように生まれたかという国の成り立ちにも関わる逸話が絡んできます。

 中華風のファンタジーですが、あくまで架空の時代・舞台の物語っぽい。人名やら宮の部署名やら難易度の高い読み方をする固有名詞が多く、一回ルビ振ってもらっただけでは覚えられなくて、「こいつ何て読むんだっけ……」と立ち戻ることがしばしば。ただまぁ、さして中国の文化に詳しくなくても雰囲気で読めるとは思います。宦官って何?みたいなレベルだとちょっと厳しいかもしれませんが。

 後宮のお話かつ今の王朝が先の王朝の一族を皆殺しにして成立していることもあり、まぁまぁの頻度で処刑だの謀殺だの殺人だの血なまぐさいエピソードが来ます。一方で、基本死者にも生者にも救いをもたらすお話が基本でもあるので、そこまで胸糞が悪いことはないです。生まれの事情から人を寄せ付けず生きてきた寿雪が、帝の依頼をきっかけに人々との交わりが増え、反発しながらも次第にそれを受け入れていく展開には心温まるところもあります。ともに亡くした親に悔いを持つ帝と寿雪の境遇もそこに重なり、二人の距離が少し縮まったところで1巻は終わりです。それぞれのエピソードにそれほど引き込まれるところはなかったものの、全体的な雰囲気がよく、主人公が今後心を開いていく様が見られそうなので、機会があれば続刊も読んでみたいと思います。そういえば来期からはアニメもやるみたいですね。