あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

今日から彼女ですけど、なにか? 1.一緒にいるのは義務なんです。/満屋ランド(オーバーラップ文庫)【感想】

 

2021年11月29日読了。

 

あらすじ

卒業するために、私の恋人になってくれませんか?
卒業条件は恋人を作ること――少子化対策のため設立されたこの高校で、訳あって青偉春太には恋人がいない。このままいけば退学の危機迫る中、下された救済措置は同じく落第しかけの転校生・黄志薫と疑似カップルを演じることで!?
放課後は二人で仲良く(見えるように)下校し、休日には街で(楽しそうに)デート。お弁当を食べさせ合ったり、身体を密着させてツーショットを撮ったりと、“退学を回避する”ため結託した春太と薫は恋人(?)のように振舞う。しかし、学校からの課題はますますエスカレートするばかりで……? 
疑似カップルから始まる青春交錯ラブコメディ、堂々開幕!

出典:https://over-lap.co.jp/%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%8B%E3%82%89%E5%BD%BC%E5%A5%B3%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%91%E3%81%A9%E3%80%81%E3%81%AA%E3%81%AB%E3%81%8B%EF%BC%9F%E3%80%80%EF%BC%91%EF%BC%8E%E4%B8%80%E7%B7%92%E3%81%AB%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%AF%E7%BE%A9%E5%8B%99%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82/product/0/9784865548204/?cat=BNK&swrd=

 

第7回オーバーラップ文庫大賞銀賞受賞作品。受賞時のタイトルは『アオハルが征く!』。オーバーラップ文庫編集長コメントは以下の通り。

突飛な舞台設定から巻き起こる青春ラブコメ
非常に前向きな性格の主人公をはじめとして、個々のキャラクターが立っています。それぞれが好き勝手に喋らず、関係性や行動の必然性を構築できるとなお良し。
その粗さを差し引いたとしても、主人公の怒濤の勢いに引っ張られ、気がつけば心から楽しんで読み切っていました。
読後にはきっと前向きな気持ちになれる、選考中、最もパワーをもらえた物語です。

出典:https://over-lap.co.jp/bunko/award/2019/announcement.aspx

 

 

感想

 主人公の一人称文体が絶望的に合わなかった。「~なのである」とか「~まいか」とか、出番の限られたサブキャラならまだしも、300ページ全部この口調なのはかなりキツい。合う合わないってのはあるとは思いますが、この点に関しては多分「この文体がこの作品の魅力でしょ!」って人より、この文体のせいでこの作品の評価を下げちゃう人の方が多いんじゃないかと思います。ハイテンションで熱血なキャラにしたかったのは理解できますが、そこまでのリスクを負ってこの口調にする意味ある?と思ってしまいました。

 舞台設定も10年前ならいざ知らず、今の作品としてはちょっと古くさい。作風や主人公が異性恋愛規範丸出し*1なのは全然良いんですけど、国の制度として恋愛至上主義的な政策を推し進めてるってのは、リアリティの面はさておくとしても、エンタメとしても時代にちょっとそぐわないんじゃないかと思ったり。「男女」とか「乙女」とかのワードが繰り返し登場したり、主人公が「男は女をリードし導くもの」的考えをしていたりと、表現の端々からちょ~~~っと引っかかるところがあって、なんか気になってしまいました。気にしすぎかもしれませんが、個人的には学校の描写に男男とか女女のカップルもいる、みたいな描写を入れるくらいのバランス感覚が欲しかったかもしれません。まぁこういう配慮がいきすぎるとまた問題になるんですが……。

 個人的には青春=恋愛みたいな恋愛脳にも苦言を呈したくなってしまう。親友と夜の学校に忍び込む、みたいなシーンで、主人公が「乙女と忍び込むんじゃないと青春じゃない!」みたいなこと言ってたのは、主人公のために身を張ってる親友に対してシンプルに感じ悪かったですね。あとがきを読む限り、作者自身が青春=恋愛と考えているわけではないと思うんですが、それなら本文で青春と恋愛をほぼ同一の扱いにするのに違和感はなかったんでしょうか。

 キャラは今巻の時点では完全に持て余してるのが何人かいましたが、メインの暴力ヒロイン*2自体は悪くなかったし、ストーリーもなんとかかんとか及第点レベルだとは思うんですが、作品の肝のところに違和感が強すぎてのめり込めなかった作品でした。

*1:同性愛者っぽい気配を漂わせてるキャラはチラホラいるけど

*2:これも古い