あすはひのきになろう

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みんな蛍を殺したかった/木爾チレン(二見書房)【感想】

 

2022年6月21日読了。

 

あらすじ

――みんな誰かを殺したいほど羨ましい。

美しい少女・蛍が線路に身を投じる。
儚く散った彼女の死は後悔と悲劇を生み出していく――


「女による女のためのR-18文学賞」優秀賞受賞者である著者が、原点に立ち返り、少女たちのこころの中に巣くう澱みを鮮烈な感性で抉り出す。

京都の底辺高校と呼ばれる女子校に通うオタク女子三人、校内でもスクールカースト底辺の扱いを受けてきた。そんなある日、東京から息を呑むほど美しい少女・蛍が転校してきた。生物部とは名ばかりのオタク部に三人は集まり、それぞれの趣味に没頭していると、蛍が入部希望と現れ「私もね、オタクなの」と告白する。次第に友人として絆を深める四人だったが、ある日、蛍が線路に飛び込んで死んでしまう。真相がわからぬまま、やがて年月が経ち、蛍がのこした悲劇の歪みに絡みとられていく――
少女の心を繊細に描く名手による初のミステリ作品

出典:https://www.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576211015

 

 

感想

 お話としては面白かったですが、ミステリとしてはちょっと厳しい。一番のギミックが現実で成立するとは思えず、そこで醒めてしまったら評価は下がるかもしれません。読み進めるにつれ、人間関係が色々つながっていき、そこが面白くもあるのですが若干複雑なうえ、世間が狭すぎると思わなくもなかった。総じて出色の出来とは言い難いのですが、一方で真に迫るというか、ある種の迫力がある作品でした。

 デュピアを食べるアロワナみたいな割と直球の比喩の通り、オタク娘三人組に美人転校生が寄ってきて、舞い上がってたけど気づいたら大切なものを奪われていた、みたいなお話で、登場人物が大体みんな不幸になるタイプの作品。これ普通に三人は何も関係ないのに逆恨みしてきた蛍が全部悪くない?と思っちゃったんですが、どうなんでしょう。そりゃオタク娘にも悪いところというか、褒められはしない振る舞いがあったにせよ、あんなことになるのはかなり気の毒に感じました。

 前半の女子高生時代パートが2007年頃のお話で、当時のオタクに対する風当たりの強さとか、容姿の美醜が評価に直結し自分の心まで引っ張られる感じとかがよく描き出されていて、妙に読ませる文章でした。結局美人が一番得というか、損してないっぽいところもなんだかなぁという気分になる。美しさは失ったとはいえ、なんかオチではちょっと救われてるっぽいし。