あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

現実でラブコメできないとだれが決めた? 4/初鹿野創(ガガガ文庫)【感想】

 

2022年2月14日読了。

 

あらすじ

これは、彼女が彼女になる前の話--。
激動の生徒会選挙は、だれも予想しない結末で幕を閉じた。
「こんなはずじゃなかった」耕平は混乱し、後悔し、それでもみなの想いが、成し遂げたい理想があるから、次の策を必死に考える。だが彼の前に、“メインヒロイン“が姿をあらわす。
「こんな現実でも――認めるしか、ないんだよ」彼女の口から語られるのは、かつてあった、そしてこれから起こるであろう“現実“の話。――清里芽衣という一人の少女の、過去と現在の話。
『実現するラブコメ』は、現実の大きな壁に阻まれる。

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09453028

 

 

感想

 まさかの1巻まるごとヒロインの回想で、結構賛否両論ありそうですが、個人的には評価したいです。バッドエンドなのは初めからわかっているので、正直読んでて楽しくは全くないのですが、今後の物語を進めていくうえで必ず描かれなければならない内容を、しっかりと尺を使って丁寧にやってくれたのは良かったと思います。

 「みんなの笑顔のため」とは言いつつも、やってることは自分の都合の良いように他人を動かすことに他ならなくて、まぁそんなの上手くいくわけないよね、というお話でした。良かれと思ってやっていたことがかえって悪く受け取られてしまう芽衣はもちろん同情に値するんだけど、彼女から離れていく「普通」の人たちの気持ちも理解できるから難しいですよね。あまりに善性が強いと周りが悪にならざるを得ない、みたいな。前巻から引っ張っていた彩乃の「普通」という言葉に対する引っかかりを回収していくのも上手かったですね。

 どんなに打たれても他人を責める発想にいかない芽衣*1は、確かに普通じゃないですが、彼女が自分と類似していると見なしている主人公は、多分そこまで振り切れてなくて、という違いとか、感性でコントロールしている芽衣と計算でコントロールしている主人公とか、そういう違いも浮き彫りにされてました。抜きん出た能力を持つがゆえに周囲と不和を引き起こしてしまう「異常」な存在である芽衣を今後どう攻略していくか、何はともあれ、次巻の展開も目が離せなさそうです。

*1:今の振る舞いも結局はみんなのため