あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

サンタクロースを殺した。そして、キスをした。/犬君雀(小学館)【感想】

 

2021年12月1日読了。

 

あらすじ

クリスマスを消すため僕は少女の恋人になる
聖夜を間近に控え、街も浮き立つ12月初旬。先輩にフラれた僕は、美しく輝く駅前のイルミネーションを眺め、どうしようもない苛立ちと悲しさに震えていた。
クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに……。
そんな僕の前に突如現れた、高校生らしい一人の少女。
「出来ますよ、クリスマスをなくすこと」
彼女の持つノートは、『望まない願いのみを叶える』ことが出来るらしい。ノートの力で消すために、クリスマスを好きになる必要がある。だから――
「私と、疑似的な恋人になってください」
第14回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作品。
これは、僕と少女の奇妙な関係から始まる、恋を終わらせるための物語。
〈 編集者からのおすすめ情報 〉
第14回小学館ライトノベル大賞にて、その独特かつ突き抜けた作風により、優秀賞を受賞。

圧倒的な筆力によって描かれるその「青春」は、心の痛いところを抉るような苦さがあり、ここちよい甘さも備えています。

ぜひ一度、手に取って体験してみてください!

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09451853

 

第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品。受賞時のタイトルは『サンタクロースを殺した。初恋が終わった。』。ゲスト審査員の若木民喜による講評は以下の通り。

心の痛いところ突いてきますねぇ……。ボクも大学生の時のくよくよ感をもう一度呼び覚まされてしまいました。恋愛って怖いですねぇ。とても文章がよかったと思います。こういう文章書けるようになりたい。
ただ全体的に自己言及に傾きすぎて「この犯罪者君と少女の二人が、なぜ一緒にいるのか?」という部分がしっくりこなくて……。序盤で2人をもっと好きになれていたら、最後の展開でそれはそれはものすごいインパクトがあっただろうと思います。

出典:https://gagagabunko.jp/grandprix/entry14_FinalResult.html

 

 

感想

 作者が読んでるかどうかはわかりませんが、位置づけとしては三秋縋のフォロワーということになるかと思います。現実ベースの世界観に少しだけファンタジー要素を加えた悲恋です。

 語りも比喩も結構クサい感じで、合う合わないは分かれるタイプでしょう。あとがきにも「自分の体験談を加工して小説を書いている」みたいな話がある通り、全体的に私小説のような趣もあって、個人的にはどうしても他人事として距離をとって見てしまうというか、なかなか物語に入り込みづらいところがありました。ポンと出された登場人物が、典型的な「気の毒な人」のように見えて、描写を読んでもただ「気の毒ですね」としか思えなかったのが痛いところ。疑似恋愛関係を結ぶまでの展開は強引に見えましたし、煙草や酒、洋画洋楽といった要素をお洒落なアイコンとして使うことからもいずれは脱却してほしいです。

 ただ、「サンタクロース」にまるわる根幹となるギミックは悪くなかったし、話がもっと整理されていればより際立っていただろうと感じました。また、「三文字変えた替え歌」みたいな妙にもったいぶろうとするオチのつけ方はあまり好みではないものの、ヒロインが消え、主人公もいずれ消えるもののヒロインが焼失し一人残された(ネタバレにつき反転)ところをラストとする幕の引き方は非常に印象的でした。悲恋、ここに極まれりって感じ(本人たちはそう思ってないかもですが)。作者の処女作ですし、この方向でまだまだ伸びしろはあると思いました。