ストライクフォール/長谷敏司(ガガガ文庫)【感想】
2023年1月23日読了。
あらすじ
SF界の俊英、ガガガ文庫に電撃参戦!
近未来、人類は宇宙に進出し、惨禍のはてに戦争をやめた。
……いや、正確には、形を変えた。代理戦争として発展した宇宙競技、ストライクフォール。
広大な宇宙をフィールドに、敵のリーダーを屠るべく戦うチーム闘技に人々は熱狂した。万能の泥、チル・ウエポンによって作られたストライクシェルに身をつつみ、プレイヤーたちは宙を駆ける。
故郷のため、栄誉のため、家族のため、あるいは己が夢のために……。鷹森雄星も、ストライクフォールに魅せられたひとりだ。
弟は、トップリーグでのプロデビューが決まった若き天才、鷹森英俊。幼なじみの環のやさしさに見守られながらも、雄星は宇宙を目指すが――。
「知ってるか、兄貴。宇宙では、あらゆるものが落ちている最中なんだ。
――落ち続けるなら、オレはほしいものを手に入れる」なら、翔ぶ。翔んで、宇宙に手を伸ばす。
これは、宇宙を「掴む」兄弟の物語。
SF界の俊英が放つ新たなライトSFエンタテイメント!
感想
作者は『円環少女』とか『BEATLESS』とかの人。昨年刊行の『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』でも話題になっていました。本作はロボットに乗って戦う代理戦争的な宇宙のスポーツ・ストライクフォールの選手を目指す少年が主人公。主人公の弟は一足先にプロチームの一軍入りが決まっており、兄としての焦りもありつつ、幼馴染の女の子はそんな危険なスポーツにのめり込む兄妹を心配していて……みたいな感じのお話。
複数回挟まれるロボットバトルにはある程度熱量があるし、チル・ウエポンの色んなことに利用できる代わりに人間の体温を奪うという設定も面白い。後半出てくる主人公機の特殊能力もいろいろな可能性を感じさせる。立場や考え方を巡って対立する兄弟の関係性をめぐる展開もまぁありがちっちゃありがちで、既視感はあるけどスポ根王道的ではある。ただ、幼馴染ちゃんがスポ根王道ものでありがちな「銃後で主人公の帰りを待つ」系の紋切り型ヒロインすぎるのがかなり気になってしまいました。弟くんが彼女を半分トロフィー扱いしてるところもあって、明らかにメインキャラなのに何か血の通ったキャラクターに感じられなかった。性格の差はあるにしても、アデーレの方が全然生き生きしてたのには、表紙飾ってる割にちょっと……という気持ちになる。展開をスポ根王道ものにしたために、ヒロインが話に全然介入できていなかったように見えました。文章もところどころ「~だ。~だ。」みたいな同じ文末が続いて引っかかるところがしばしばあり、やや洗練されきっていない印象を受けます。SF作家らしい発想の面白さはあるものの、キャラの描き方に難のある作品でした。