あすはひのきになろう

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「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。/隙名こと(ポプラ文庫ピュアフル)【感想】

 

2022年5月18日読了。

 

あらすじ

「15分で一万円のバイトに興味はありませんか?」

クラスでも目立たない男子高校生・駒田に、
笑わない美少女、水品さんが声をかけてきた──
謎めいた展開に思わず一気読み!
涙のラストが待ち受ける、感動の青春ミステリ登場!
第7回ポプラ社小説新人賞<特別賞>受賞作


駒田悟理は、子どもの頃の出来事がきっかけで友達をつくらなくなり、学校でも目立たない存在の男子高校生。ある日、久しぶりに登校してきたとなりの席のクールな美少女、水品さんが、ひそかに声をかけてきた。「15分で一万円のバイトに興味はありませんか?」
思わず興味アリと答えた駒田が指示されたのは、電車に乗って席に座り、雑誌を読むこと。後日、その仕事の本当の目的に気が付いた駒田は、水品さんの変わった仕事を手伝うことになり、決して笑わない彼女の秘密にも近づいていく。
悪意のない集団の行動が人を傷つける現代社会特有の問題に触れ、またその流れを変えていくこともできるという勇気をも描いている、優しい青春ミステリー。

出典:https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8111259.html

 

第7回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作品。受賞時の講評は以下の通り。

クールな美少女・水品は、クラスメイトの主人公・駒田に怪しげなバイトをもちかけてくる。やらせに加担して、小さな奇跡を起こす、という微妙なバイトだが、駒田はだんだん面白く感じるように。過去に家族に起こった事件を自分のせいだと感じている水品は、かたくなに笑うことを拒んでいたのだが――。
軽妙でリーダビリティの高い作品だが、考えさせられる現代的なテーマもはらむ。下ネタの必然性など、気になる点も多々見受けられたが、将来性を感じさせられるという点で、特別賞の受賞となった。

出典:https://www.poplar.co.jp/award/award1/7.html

 

 

 ジュブナイル味の強い文体がやや苦手なところもありましたが、基本的に読みやすく、「なぜ水品さんは笑わないのか」という疑問を中心に、常に何らかの謎が提示された状態で物語が進むので、割と牽引力のあるお話だったのかなと思います。

  とはいえ、バイトの具体的な内容とか、細野さんの印象の変化とか、今一歩リアリティを詰め切れてなかったり、描写力が追いついていなかったりして、やりたいことはわかるんだけど惜しいところもしばしば。最も肝要な「水品さんが笑わない理由」に関わる部分が社会への問題提起を含んでいる以上、ある程度作品全体にリアリティを担保して欲しかったところですが、ちょいちょいそれは無理筋じゃなかろうかとか、そんなに上手くいくか?とか思ってしまうところがあり、まぁそこは新人作家さんらしいのかもしれません。

 「笑わない理由」に関わる本作のテーマとなる部分も、それで一冊物語を書くか、というちょっとした驚きがあり、「うんうん、現代ならではの一人一人が気をつけなければならない大事な問題だよね」となるか、「え、こんだけ紙幅を費やして言いたかったのそれだけ?」となるかは人によって違いそう。個人的には、そりゃ水品さんは気の毒だし、そうした振る舞いを問題視することもわかるんだけど、とはいえそれを指摘するだけで終わってしまうとちょっと物足りない、と思ってしまいました。