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ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒/菊石まれほ(電撃文庫)【感想】

 

2021年12月8日読了。

 

あらすじ

孤独な天才捜査官。初めての「壊れない」相棒は、ロボットだった。

★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!! 

 脳の縫い糸〈ユア・フォルマ〉――ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
 縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
 電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
 過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む! 
 第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕!!

出典:https://dengekibunko.jp/product/yourforma/322011000154.html

 

 第27回電撃大賞《大賞》受賞作品。受賞時の選評はこちら。受賞時のタイトルは『ユア・フォルマ 電子犯罪捜査局』。

 

 

感想

 シンプルに出来が良かったです。舞台設定、キャラ、ストーリー、いずれも突き抜けたところはないものの、全てがある程度高いレベルで手堅くまとまっています。

 固有名詞を全部言い換えてざっくり言うと、記憶に潜る技術みたいなのが確立され、誰もが脳にコンピュータチップ的なのを埋め込んだ近未来的世界を舞台に、アンドロイド嫌いの天才少女と、つかみ所のない男性アンドロイドのバディが、そのコンピュータチップを悪用した犯罪を追うSFクライムサスペンス。

 主人公とアンドロイドの掛け合いが小気味よく、鍵となる主人公の天才少女の過去がしっかり物語を牽引していくので途中でダレることもない。主人公を通して、男性アンドロイドの多重的な性格が段階的に明らかになっていく過程も良い。主人公が寒がりで男性アンドロイドは寒い方が好きみたいな暗喩的なところとか、人の記憶を探るのに有線接続が必要という象徴的なデザインも好き。謎解きはやや駆け足でごちゃついている印象も受けたものの、文章、展開ともに追いやすいリーダビリティの高さも良かった。総じて非常に手堅い印象を受けました。

 あえて気になった点を挙げるとすれば、せっかくの「記憶に潜る」というシーンが物語全体から見てあまり重要ではなかったところ。記憶や過去が中心的題材に据えられてはいるのですが、「記憶に潜る」という行為自体はあくまでも事件解決の手段といった感じなのがやや残念でした。

 そういえばこれもそうだったけど、最近の電撃文庫作品は、QRコードを活用するのがブームなんでしょうか?