あすはひのきになろう

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屈折する星屑/江波光則(ハヤカワ文庫JA)【感想】

 

2022年6月6日読了。

 

あらすじ

死にたいけど、死ねなかった。

太陽系のどこかに浮かぶ廃棄予定の円柱型コロニーには、いまだ一定数の住人が暮らしていた。ヘイウッドとキャットもここで生まれ育ち、唯一の愉しみ――ホバーバイクで人工太陽に衝突寸前まで接近する度胸試し――を繰り返している。将来の展望も生産性もないまま、流されて生きる鬱屈した毎日。だが火星から戦争を嫌って亡命してきた元軍人ジャクリーンとの出会いから、ヘイウッドはどう生きていくのかを模索し始める。

出典:https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013496/genre_001005/page6/disp_pc/

 

 

感想

 恐らくタイトルの元ネタはデヴィッド・ボウイのアルバム『ジギー・スターダスト』

 あまりピンとこなかった、というのが正直なところ。こういう語り口の作品をかっこいいと感じられるセンスに欠けていた気がします。

 退廃的な環境のなか、自分とごく少数の仲間だけの世界にしか目を向けず、刹那的に生きてきた主人公が、とある事件をきっかけに少しずつ変化していく、みたいなお話。死を覚悟のチキンレースに興じたり、ヤクキメてトんだり、みたいな描写にいまいち魅力を感じなかったものの、だんだんと主人公の視野が広がっていくお話の流れ自体は嫌いではなかったです。

 個人的なハイライトは終盤の以下のシーン。

その悪ぶった・・・・・・薄気味悪い・・・・・汚い喋り方を今後一切するな・・・・・・・・・・・・・ヘイウッド・・・・・

(中略)

「それから私を姉御と呼ぶのもやめろ、不愉快だ。人の名前はちゃんと覚えて、さん付けで口にしろ。何が酩酊病だ、酔ってましただ、そういう言葉に甘えるのも、いい加減にしてくれないか? 恥ずかしくて付き合いきれんのだ。こっちは」(p.301)

 悪ぶった主人公がムキムキの年上女性にボコボコにされるのが単純に面白いし、表面上社会性を身につけたように見えて、反抗する意志は折れてない撃墜のシーンも静かな狂気みたいなものが感じられて良かったです。