月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1【感想】
2020年9月3日読了。
あらすじ
転職先はお隣さん
社畜の松友裕二(まつともゆうじ)が残業から帰ると、隣に住むOLの早乙女ミオ(さおとめみお)が家の鍵をなくして立ち尽くしていた。雨でずぶ濡れのミオが不憫になった松友はベランダからミオの家に入り、玄関を開けて言う――「おかえりなさい。今日は大変でしたね」
そんな何気ない「おかえり」が心に刺さったミオに、松友は衝撃の提案を受ける。
「私の月収は五十万です。月に三十万円であなたを雇います」
実は生活力ゼロで極度の人間不信だったミオと、彼女の身の回りの世話をする仕事を引き受けた松友。ゆっくりと距離を縮めていく二人の間にあるのは単なる雇用関係かそれとも――。孤独なお隣さんとのアットホームラブコメディ。
感想
どうでも良いですが始めて購入したオーバーラップ文庫作品でした。
内容について言えば、割と典型的なタイトルで損してるラノベだと思います。本編読了後に改めて見ると、そもそもミオさんのことを「月50万もらっても生き甲斐のない」人と形容することに強い違和感を覚えます。確かに仕事人間ではあったようだけど、生き甲斐がないというのはかなり言い過ぎな気が……。あと本作で強調すべき魅力はヒロインが月50万稼いでいるところでも主人公が30万で雇われているところでもないでしょう。「小説家になろう」原作のようですが、書籍化の際にタイトルを変えるべきだったと思います。
ヒロインの造形はかなり人を選ぶものだと思います。僕はストライクゾーンでは無いとは言え許容できましたが、いくら美人で巨乳だろうが疲れると幼児化する28歳女性は受け入れがたい、という読者がいる可能性も十分考えられます。これをギャップ萌えとして受容できるかが本作を楽しめるのかの鍵と言っても過言ではないと思います。それ以外は途中で増える主人公の元同僚たちも含め、主要キャラは良い奴ばっかなのでそこは不快感がなく読みやすいです。
話としては、「契約関係、仕事上の関係でしか人を信じられないヒロインが次第に周囲の人々に心を開いていく」というのが基本骨子だろうと思うんですが、それにしては最後まで主人公とヒロインの関係は雇用関係に終始しますし(多少仲は深まっていますが)、そもそも人間不信の人物が急にお隣さんをヘッドハンティングするか……?という矛盾も感じます。まぁミオさんの人間不信は裏を返せばドライな関係であれば信用できる、というものなので矛盾しないという見方もできますが。
とはいえ、ラブコメ部分も面白かったですし*1、先述した物語の大筋もヒロインの過去と絡めてきちんと昇華しており、タイトルで敬遠するにはもったいない作品でした。今巻で話がまとまっていることもあり、次巻がどう展開するのかわかりませんが、一応チェックしようと思います。
*1:特にたまご酒のエピソード好き