あすはひのきになろう

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陽キャになった俺の青春至上主義/持崎湯葉(GA文庫)【感想】

 

2023年2月5日読了。

 

あらすじ

GA文庫大賞《金賞》受賞。
せっかく陽キャになったのに――ヒロインは全員陰キャ!?
読めばきっと自由になれる、陰陽混合のネオ・アオハルコメディ!

陽キャ】と【陰キャ】。
世界には大きく分けてこの二種類の人間がいる。
限られた青春を謳歌するために、選ぶべき道はたったひとつしかない。
つまり――モテたければ陽であれ。

陰キャの俺、上田橋汰は努力と根性で高校デビューし、陽キャに囲まれた学校生活を順調に送っていた。
あとはギャルの彼女でも出来れば完璧――なのに、フラグが立つのは陰キャ女子ばかりだった!?
ギャルになりたくて髪染めてきたって……いや、ピンク髪はむしろ陰だから!

GA文庫大賞《金賞》受賞、陰陽混合ネオ・アオハルコメディ!
新青春の正解が、ここにある。

出典:https://ga.sbcr.jp/product/9784815618667/

 

 

第14回GA文庫大賞《金賞》受賞作品。受賞時のタイトルは『陽キャになったのに陰キャにばかりモテる俺』。受賞時の選評は以下の通り。

高校デビューした陽キャの少年が主人公、という学園ラブコメでは中々珍しいタイプのキャラクター配置に目を惹かれました。
主人公が行動的でヒロイン達の抱えた問題を解決していく様は格好よく、自分もこうなりたいという憧れを伴って主人公を応援したくなります。
ストーカー気質でちょっと危ない雰囲気の遊々など、ヒロイン達の強烈な個性も魅力的で、陰キャ陽キャが混ざり合ったカオスな学園生活が瑞々しく描かれていました。
陽キャとは? 陰キャとは? 学生に永遠に付きまとう課題であるスクールカーストに切り込んだ、新しい青春ラブコメの形をお楽しみにお待ちください。

出典:https://ga.sbcr.jp/novel/taisyo/14/index.html

 

感想

 作者はパパ活JKのやつの人。パパ活JKはあんまり合わなかったんですが、こちらは結構楽しめました。あんまり別の作品を引き合いに出して云々するのはあまり行儀がよくありませんが、俺が『チラムネ』に求めていたのはこういう展開なんだよな~ってなりました。

 お話としては、見事高校デビューを果たし陰キャから陽キャへクラスチェンジした主人公が、陰キャっぽい女の子やら女の子っぽい男の子やらを気にかけてたら何か好かれるようになって……みたいな感じ。ハイスペック主人公がヒロインその他のカーストを引っ張り上げる(嫌な言い方!)、的な作品も最近チラホラ出てきましたが、本作もガワはそれであるものの、結論となるテーマはちょっと違います。言ってしまうと、「陰キャ陽キャも個性の一つ!別にムリに陽キャっぽくする必要はないよね!でも『陰キャ』『陽キャ』として自分を規定してしまうのはよくないよね!」ということ。当たり前じゃん!って思うかもしれませんが、これをしっかり言語化したうえで物語の展開としても説得的に描いている点が非常に良かったと思います。

 ギャグ描写っぽい髪についてた鮭とばが後半の展開につながる布石になってるのも上手いし、フォント芸を駆使しつつ天丼多めのコメディ部分も悪くなかった。キャラ立ちがしっかりしてるのも商業作家らしくこなれている印象。主要キャラ全員に奥行きがあるというか、陰側も陽側も各々キャラごとに陰陽って考え方に対するスタンスがあって、それ自体が読者に対するロールモデルにもなってるんですよね。かつ悪役となるいじめっ子ギャルの心情にまで短いながらも的確な目配せが効いてる。しっかりと読者のことを見据えたうえで、優れたバランス感覚によって書かれていると感じました。

 題材自体は既視感あるものの、このネタを扱ったものの中では明らかに頭一つ抜けた作品だったと思います。