あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

ただ制服を着てるだけ【感想】

 

2021年8月16日読了。

 

あらすじ

「お兄さんみたいな人、初めてかも。」

俺が出会ったJKは19歳――その制服はニセモノ
ニセモノJK×ワケアリ社畜 いびつな二人が紡ぐ、心温まるラブストーリー。

同居相手は19歳 彼女が着てる制服はニセモノ。
若手のエース管理職として働く社畜 堂本広巳。日々に疲れていた広巳は、偶然から関係を持った少女 明莉が働く、ある店にハマってしまう――
「今日も……抜いてあげるね――」
そんな毎日の中、休日の職場トラブルで呼び出された広巳を待っていたのは、巻き込まれていた明莉だった!?
「私行くとこないんだよね―― お願い、一緒に住ませて!!」
突如始まった同居生活の中、広巳と明莉は問題を乗り越え、二人で新たな道へと歩み始める。
社畜×19歳の合法JK!?
いびつな二人の心温まる同居ラブストーリー、開幕。

出典:https://www.sbcr.jp/product/4815611774/

 

 

第13回GA文庫大賞金賞受賞作品。受賞時のタイトルは「かげひなたになる」。選評は以下の通り。

日々に疲れた社畜の主人公とJKリフレで働く合法JK(?)が同居を通じて温かな関係を築く日常ラブストーリー。
それぞれに生きづらさを抱えた二人のキャラクターが紡いでいく関係性のドラマが丁寧に描かれており、心を打たれるような作品でした!
人間関係の複雑さや現代社会のいびつさという、重くなりがちな設定を盛り込みながらも、エンターテイメントとしてのバランス感を維持して書き上げた筆力は、まさに金賞の実力。
JKリフレで働くヒロインということで、選考会では問題作として議論されましたが、特殊なキャラクターを巧みな心理描写で違和感なく魅力的に表現しており、ドキドキしながらキャラにも惹かれてしまう物語も評価されたポイントでした。
ヒロインと同居する日常の楽しさ、二人のドラマに思わず読み入ること間違いなし!
7月の発売を楽しみにお待ちください。

出典:https://ga.sbcr.jp/novel/taisyo/13/index.html

 

感想

 どちらかというとカテゴリーエラーの感が強い。ちょっと前から流行ってる「JK×おっさん」の流れを汲む作品ではありますが、ストーリーはかなりシリアスなところもあり、社会派な雰囲気も漂わせています。悪くはないのですが、いわゆるラノベのお約束」的な要素がむしろ展開の幅を狭めている気がしました。こういう話がしたいのなら、挿絵の入れどころ的なラッキースケベイベントや主人公を中心とするゆるやかなハーレム構造に紙幅を割かず、主人公とヒロインの掘り下げをより深くやって欲しかったです。ラノベとしてはかなり踏み込んだ題材とはいえ、やはり同じような現代に生きる若者を取り扱う非ライトノベル作品と比較すると見劣りを感じざるをません。描写や展開の制約に縛られない一般文芸の方が、より自由に書けるのではないでしょうか。著者自己紹介のところに「イカつくてポエミーな文章が得意」とあるように、ノローグの文章は自己陶酔感が強くどこか一歩引いた醒めた目で見てしまいがちになりますし、「主人公が見返りを求めないため不安になったヒロインが身体を差し出す」みたいな展開は既存の先行作品と類似しているように見え、気になりました。しかしながら、「JKリフレ」をはじめとする随所の描写から感じられる生々しさは他と一線を画しており、終盤の「自己責任」論について語られるシーンに代表されるように、ラノベ現代社会を描こうという強い気概は感じられました。本作を金賞に推した編集部の判断も興味深いです。改題前の「かげひなたになる」というタイトルからも作者の本懐が察せられます。この題材でライトノベル市場でどこまで戦えるか、ラノベの裾野を広げる可能性を感じられる作品でした。