あすはひのきになろう

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負けヒロインが多すぎる!【感想】

 

2021年8月14日読了。

 

あらすじ

「え? マケインって誰のこと?」
クラスの背景である俺――温水和彦は、あるとき人気女子・八奈見杏菜が男子に振られるのを目撃する。

「私をお嫁さんにするって言ったのに、ひどくないかな?」
「それ、いくつの頃の話?」
「4、5歳だけど」

それはノーカンだろ。
これをきっかけに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花など、負け感あふれる女子たちが現れて――?

「温水君。女の子は2種類に分けられるの。幼馴染か、泥棒猫か」
「なるほど、大胆な分類だ」

負けてこそ輝く彼女たちに、幸いあれ。
負けヒロイン――マケインたちに絡まれる謎の青春が、ここに幕を開ける!

出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09453017

 

 第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作品。受賞時のタイトルは『俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』。変えて正解。ゲスト審査員のカルロ・ゼンによる講評は以下の通り。

原稿としての完成度と、物語の完成度の二つで優れていました。まず、原稿としての完成度からご説明しましょう。新人賞の審査に際してですが、原稿の読み方は普通の読書とは少し違っています。なぜかといえば、『出版される際には、改稿される』という前提があるからなんですね。物語の流れやキャラクターたちは変わらないにせよ、欠点に見えるところは『修正』され、長所に見えるところは『強化』されうるわけです。だから、完成した原稿を楽しく想像しながら、『可能性』込みで読むと言い換えてもよいでしょう。ところが、今作の原稿は最終候補作の中でも特に洗練されていて、その武器がよく磨き上げられていました。物語の完成度というと、あまりネタバレを書くべきではないと思うので、ちょっと表現に迷うのですが……この作品ではキャラクターたちの関係が三角とでもいうべき構図で形成されています。これは自分の主観ですが、『関係が三角の構図ではあるが、必ずしも三角関係を意味するものではない』というのが上手いな! と。偶に、構図を意図的に崩されるところもあり、どこかで『キャラクターとして不快な存在が飛び出し、読んでいてストレスになるのでは?』と危惧も感じたのですが、読み終えた時に『まさか、こうもスムーズに駆け抜けるとは!』と驚愕したというのが本音です。予見可能性があるようで適度に緩急をつけてくる物語運び、そして何よりも『どのキャラクターにも、明確な不遇さがあるようでないバランス感覚』には惚れ惚れとせざるをえません。次点となると、しかし、相当に悩みました。お世辞ではありません。どの作品も長所と短所がそれぞれに独特で『どれを重視するか?』という点で好みの差が強すぎました。剣を並べて、どれが一番切れるかを比較するのであれば、簡単でしょう。ですが、剣と槍と弓を並べて比較するとなれば、悩ましいものです。

出典:https://gagagabunko.jp/grandprix/entry15_FinalResult.html

 

感想

 ヒロイン、青髪、……あっ()

 刊行前から編集部のプッシュがすごくて、「へぇ、そんなに言うなら読んでやろうじゃねぇか」*1つって読んだら面白かった、ってやつ。

 個人的にいみぎむる絵が好物すぎるのでそこで既に+1000点くらいは稼いでるんですが、それを差っ引いても十分面白かったと思います。途中で変に説教くさくなったり価値観説いてきたりすることなく、着想を活かした「ラノベらしいラノベ」として最後まで突っ走ってくれたのが良かったです。「負けヒロイン」という言葉に引っ張られすぎて暗くなったり過度に悲壮感出ちゃったりすることなく、適度に笑える軽さで描かれてるので読みやすかったですね。主人公とヒロインたちの掛け合いのテンポの良さは大きな魅力です。構成に無理な強引さも感じませんでした。懸念点はこっからどう話を膨らませられるかという点と、主人公があんまり魅力的じゃない点。悪い奴じゃないんだけど、読者に「なんでコイツがモテてんの?」って思われないよう頑張って欲しい。描写によっては傷心のところにつけ込んだクズ男になっちゃうしね。というか、恋愛関係に発展せずこのままコメディとして続いていくのも個人的には全然ありだと思います。そういえば、先生たちのキャラが特に必然性もないのにやたら濃かったのは今後の展開につながるんですかね?

*1:何様?