あすはひのきになろう

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霜月さんはモブが好き/八神鏡(GCN文庫)【感想】

 

2022年8月2日読了。

 

あらすじ

あなただけが特別なの。 WEBで大反響の超話題作がついに書籍化! 恋するヒロインが少年の運命を変える――。

「あなただけが、特別なの」

放課後、忘れ物を取りに学校に戻った中山幸太郎は、誰もいない教室で眠りこける霜月しほに遭遇する。


クラスでハーレムを形成中のモテモテ男子・竜崎龍馬の大本命と噂の彼女だが、いつも無表情で笑ったところを見た者はいない。


なのに今、その白い指が幸太郎の手を握って――⁉ 


ヒロインとモブ男子の「秘密の関係」が始まる!

出典:https://gcnovels.jp/book/b1241.html

 

 

感想

 マイクロマガジン社の新レーベル、GCN文庫の創刊タイトル。といっても発売はもう大分前ですが……。

 ざっくり言うと、女を侍らせつつもメインヒロインに執着を示すハーレム主人公みたいな男子に、メインヒロインに何故か好かれたモブっぽい男子が対抗していく、みたいなお話で、作中世界を「物語」に見立てた語りが特徴。こういう変則的なラブコメは、最近だと『ラブだめ』なんかが上手くやってた印象。

 メタな語りは、慎重に上手くやらないとノリはキツいわ話は大して面白くならないわで結構扱いが難しいと思うんですが、本作はどうも色々言及が足りないような気がしました。「ハーレム主人公」の描き方があまりに一面的な悪役に過ぎるというのもそうだし、そもそも一応ラストに理由付けがあったとは言え、急に美少女に好かれるようになった主人公くんも十分現実基準で考えれば「物語」チックでしょう。ハーレム主人公くんの「主人公っぽさ」を強調しながら、主人公自身のそうした都合の良さをスルーしてしまうのは、片手落ちの感が否めません。

 ヒロインが全体的にやたら幼い口調なのも引っかかるし、メインヒロインの異常な耳の良さはほとんど特殊能力の域で浮いた設定ぬ見えます。メタな語り故の中二っぽい文章も個人的にはちょっとキツかった。主人公の頭の中でスイッチが切り替わって演じるキャラクターが変わる、みたいな特徴もちょっとイタいんだけど、描写によってはもっとキャラの魅力につなげることもできた気も。コンセプトは悪くないものの、展開もキャラも、総じて非常に大味なために十分に作品のポテンシャルを引き出せていないのではないかと思いました。