あすはひのきになろう

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青のアウトライン 天才の描く世界を凡人が塗りかえる方法/日日綴郎(富士見ファンタジア文庫)【感想】

 

2022年2月26日読了。

 

あらすじ

努力は才能を超えるのか――青春芸術エンタメ!

『見惚れる』『圧倒される』『中毒性がある』『心奪われる』
彼女の描いた絵を見た誰もが抱く感想の数々は、
画家を志す高校生の俺にとって、喉から手が出るほど欲しいものだった。
何を描かせても“天才”と称される、芸術少女・柏崎侑里。
「ただ顔を見に来ただけ。絵は、描きたいときにしか描かない」
一番近くて一番遠い場所にいる、俺の幼馴染だ。
ある日から絵を描かなくなった彼女の影を追い、俺は絵筆を振るい続ける。
「何度だって描いてやる。才能を言い訳に、諦めたりはしない」
侑里に再び絵を描かせ、俺の絵で彼女を見返す、その日まで。
これは、青春を絵筆に捧げた凡人が“天才”に挑む物語だ。

出典:https://fantasiabunko.jp/product/202201blueoutline/322109001130.html

 

 

第34回ファンタジア大賞橘公司特別賞》受賞作品。受賞時のタイトルは『星を掴んだ凡人の話』。選考評は以下の通り。

橘公司
面白い。青春ものとしてレベルが高い。文章も、やや画面が黒い感はあるものの、こなれており読ませる力があります。全ての要素で高い水準の作品だと感じました。キャラの鬱屈した感情や葛藤、後悔を描くのが上手い。これは明確な武器かと思います。侑里が最後まで宗佑への恋愛感情を表に出さなかったのも、個人的には評価しています。

● 羊太郎
凡人と天才。それぞれの葛藤と苦悩が動き出していく様が、心情描写を中心にものすごく綺麗に展開される作品です。絵画・芸術という、ややとっつきにくい題材ではありますが、ストーリーの起承転結がしっかりとしており、非常に高いストーリーテーリング能力が光ります。天才という読者と乖離した存在の感覚を、いかに読者達に共感・理解させるか? それをどうエンタメにするか? それが次なる課題だと思います。

出典:https://www.fantasiataisho.com/contest/

 

感想

 受賞時タイトルを見るに、編集部が漫画『ブルーピリオド』に寄せていってるのを隠す気が全くなくて清々しい。本編に「青のアウトライン」要素全然なかった気がするんですが……。

 「天才」であるメインヒロインがどのようにすごいのかが、文章ではいまいち伝わってい来ないし、話を盛り上げるきっかけにとりあえず毒親出してみる、という手つきは少し雑に見えます。とはいえ、メインヒロインをあくまでも主人公の理解の外に置くために頑なにその本心を語らせない姿勢は良かったと思いますし、展開自体はある程度筋が通っていたと思います。が、「天才」や「才能」をテーマとするにはその掘り下げが非常に浅く、その点のあまり満足感はありませんでした。

 一方で、ラブコメ……というかハーレムもの?として見ればそれなりに面白くなくもないですが、それにしたって主人公以外の男が全然登場しなくて笑ってしまった。典型的なヒロインズを振り回すタイプの主人公であり、最近ここまで男女比に偏りある学園もののラノベも珍しいのではないでしょうか。久しぶりに「なんでこの主人公こんなにモテてるんだ……?」と野暮なツッコミをしてしまいそうになりました。既に本命を決めている主人公に、先輩、メインヒロインからも矢印が向いていて、その恋愛話をやってくれた方がドロドロして面白くなりそうな気もします。というか、物語的にも芸術の話よりそっちに目が行くようになっているように感じましたが、どうなんでしょうか。