あすはひのきになろう

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後宮の烏 4/白川紺子(集英社オレンジ文庫)【感想】

 

2022年12月21日読了。

 

あらすじ

晩霞の前には、木箱に詰められた生糸の束があった。
今宵も、夜明宮には訪いが絶えない。泊鶴宮の蚕室で、大切な繭がなくなったという宮女……。一方、花娘を通じ城内での謎多き失せ物探しも舞いこむ。烏妃を頼る者は日に日に増え、守るもののできた寿雪の変化に、言いようのない感情を抱く高峻。やがて二人は、真実眠る歴史の深部へ。鍵を握るのは名もなき幽鬼か、あるいは――。待望の第四弾!

出典:http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086803143

 

 

感想

 短編連作形式なのは変わらずですが、いわゆる串刺しの側面がかなり出てきました。今巻では、ついに烏妃の周囲に人が集まることで生じる危うさが如実に表面化します。賀州の朝陽&巫術師の白雷と烏妃との対立や、烏妃=寿雪を解放したいという高峻の目的意識も一層はっきりしてきて、作品を貫く大きなストーリーが見えてきた印象があります。

 勝手に人々が幽鬼を神に祭り上げていく、という一編目「蚕神」のオチが、後々に烏妃を狂信的に祭り上げていく今巻の展開を導いてる点が秀逸。二編目「金の杯」では、淡海の過去が明らかになります。過去が明らかになるエピソードを通して淡海の寿雪に対する忠誠心が厚くなるのですが、四編目「禁色」で描かれた、寿雪の振る舞いによって人々が救われ、人心を集めれば集めるほど帝に対抗する勢力と見なされるリスクも高まるというジレンマが今後の焦点になりそうです。手の届く親しい人々を守ることで間違いを正す、という寿雪の危うさをはらんだ決意もどこか嫌な予感がしてきます。父と袂を分かった晩霞や、寿雪との血のつながりに心乱される衛青など、サブキャラたちの行く末も気になるところです。全7巻の本作もいよいよ折り返し。後半も近いうちに読みたいですね。