あすはひのきになろう

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魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 8/甘岸久弥(MFブックス)【感想】

 

2022年12月23日読了。

 

あらすじ

スライム製品に補助魔導具――ダリヤの開発で騎士の背中を守る!
遠征訓練へ同行するなど、魔物討伐部隊との関係を強固にしていく女性魔導具師のダリヤ。
彼女は魔物討伐部隊員から、ヴォルフのアンダーシャツに『背縫い』をしてやってほしいと頼まれる。『背縫い』とは、戦いに赴く者の無事を願い、その者の衣服の背に施す縫い取りのことだった。
彼らの頼みを引き受けたダリヤは、シャツへ縫い取りのみならず、スライムを使ったとある付与ができないかを試すのだが――。
「ロセッティの『商会紋』になりそうだ。このシャツも、防具に使えるかも……」
思わぬかたちで、ダリヤは『商会紋』とともに新たな開発品を生みだしてしまう。さらに各界の重鎮をも巻き込み行われた新製品の実験の場で、魔物討伐部隊を引退した侯爵家元当主の義足の不調に遭遇したダリヤは、その改良を試みることにもなり――!?
魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、挑戦と前進の第八弾、開幕!

出典:https://mfbooks.jp/product/dariya/322110001101.html

 

感想

 魔物討伐部隊の遠征について行ったり、匂わせ感のすごい商会紋を決めたり(かつそれをヴォルフのアンダーウェアに縫い付けたり)、スライムから衝撃吸収材やらクッションやらを作ったりしつつ、今巻はマルチェラの祖父であることが明らかになった侯爵家の前当主、ベルニージとのアレコレがメインでした。今作の登場人物の例に漏れずこの人も喧嘩別れしてしまった直後に息子を亡くすという重い過去を背負っていますが、マルチェラとの出会い、そしてダリヤの作った魔導義足を通じて元気を取り戻していく姿は、人柄の良さも相まって心打たれるところがありました。マルチェラがベルニージを受け止めるシーンや、ベルニージの過去が明らかになるくだりは今巻でも特に良かったです。

 商品開発パートはメンバーがこれまでで一番豪華でしたね。新たに生まれた一つの素材からいろいろな用途の製品に派生していくいつものパターンでしたが、豪華メンバーによる実験のくだりも面白かった。一見役に立たないと思われた素材が、後々思いもよらないところで真価を発揮するところも技術開発史のそれっぽさがある。とはいえ、そのせいでまたもやダリヤは無自覚に危ない橋を渡りそうになるのですが……。

 恋愛面では、ダリヤをスカルファロット家の養子に!?みたいな選択肢が生えてきてせいで今後ヴォルフが一層迷走しそうな気配……。ダリヤの鈍感さもさることながら、彼の恋愛に対する頑なな忌避感を改革しないことには進展は望めそうにないですね……。

 番外編では、父カルロが何故妻と別れなければならなくなったか、が描かれます。毎度短いエピソードながら描写が勘所を押さえていて、突然妻と引き裂かれたカルロや周囲の人々の心境を思うと、やりきれない気持ちになりました。今後母方の家族が本編に絡んでくることはあるのでしょうか?

 遂に最新刊に追いつきました。「小説家になろう」の方では単行本に比べてかなり更新が進んでいるようですが、とりあえずは時間を楽しみに待ちたいと思います。