あすはひのきになろう

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まるで人だな、ルーシー【感想】

 

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)
 

 2020年9月8日読了。

あらすじ

第21回[秋]スニーカー大賞《優秀賞》受賞作!
第21回スニーカー大賞《優秀賞》受賞作!

「代償は、悲しみだけど?」
「ああ。そいつは僕にいらないものだ」
「そっか!」
景色をその身に纏った少女・スクランブルはうれしそうに笑うと、小さく握りしめた拳で御剣乃音(みつるぎのおと)の腹を抉る――。
人身御供となった御剣の願いを叶える神代タイム1分間の代償は【打算】【キスのうまさ】【愛情】etc. 
人の感情を贄にして、エキセントリックボックスはヒトに近づく……。

最終選考会騒然の異色作!

出典:https://www.kadokawa.co.jp/product/321610000480/

 受賞時の講評を探したんですが、スニーカー大賞は直近のもの以外は結果発表ページが残ってないみたいです。

 

 

感想

 タイトルに惹かれて購入。最近自分があらすじをよく確認せずにタイトルだけでラノベを買うことが多いことに気づいてきた。

 あらすじに「最終選考会騒然の異色作!」とある通り、尖った作品であることは確かです。いわゆる刺さる人には刺さるといった感じの作品で、明らかに万人向けではないですね。中学とか高校の多感な頃に読んでたらまた違った印象を抱いたかも知れませんが、そんなに変わらないような気もします。

 人間の要素を代償に願いを叶えるエキセントリックボックス(幼女)という着想は非常に面白いと思います。人間がその要素をエキセントリックボックスに渡すことで人間味を次第に失い、逆にエキセントリックボックスがその要素を獲得することで次第に人間に近づいていく、という構造や、主人公の内面が実際に人間離れしていく描写も巧みでした。具体的には、幼馴染ちゃんと一悶着(と言うとなんか軽い感じですが)あるあたりまでは楽しみながら読めました。しかし、終盤にかけてキャラ達の思考をトレースすることが難しくなり、よくわからないまま何か良い感じで終わってしまった、という印象を受けました。特にお隣のお姉さんはマジで何考えてるのかよくわからんかった。いやまぁ彼女の死生観みたいなものは共感はしづらくともなんとなく理解はできるんですが、からの主人公への告白は、え、なんでそうなる????(ネタバレにつき反転)となりました。

 また、文章も癖が強く、読み手を選びそうです。個人的には嫌いな感じでは無いんですが、何故か一貫して飛行機のことを「鉄板」と表現していて、そこは純粋になんで?と思いました。僕がよく理解できなかったストーリーやキャラの思考や独特な文章表現も作者にとっては恐らく全て意味があって、つじつまの合うものになっているのだろうとは思うのですが、どうも僕の読解力と作品の伝達力とが上手く噛み合っていない感じがしました。

 ところで、作中では明示されなかったタイトルにあるル-シーとは結局何を指してるんでしょうね。元ネタは多分これだと思うんですが、だとするとスクランブルのことかな?すると発言者は多分主人公になるんですが、そう想定するとなんかすごい皮肉っぽいタイトルですね……。