二度めの夏、二度と会えない君【感想】
2020年9月25日読了。
あらすじ
この夏、俺は、君を二度失った。
きっと、「好き」という言葉は罪だった。森山燐(もりやま・りん)は生まれつき不治の病を患っていた。
俺は、それを隠して高校生活を送っていた彼女を好きになってしまっていた。高校最後の文化祭で、一緒にライブをやり、最高の時間を共に過ごし――そして、燐は死んだ。死に際の彼女に、好きだ、と――決して伝えてはいけなかった言葉を、俺は放ってしまった。
取り乱す彼女に追いだされて病室を後にした俺には、一言「ごめんなさい」と書かれた紙切れが届けられただけだった。あんな気持ち、伝えなければよかった。
俺みたいな奴が、燐と関わらなければよかった。そして俺は、タイムリープを体験する。
はじめて燐と出会った河原で、もう一度燐と出会ってしまった。
ずっと、会いたいと思っていた燐に、あの眩しい笑顔に再び……。だから、今度こそ間違えない。
絶対にこの気持ちを伝えてはいけないから。最後の最後まで、俺は自分の気持ちを押し殺と決めた。
彼女の短い一生が、ずっと笑顔でありますようにアニメ化企画進行中の『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』原作者:赤城大空が贈る健全青春ラブストーリー。
感想
数年前に実写映画化もされてる見たいです。ちょっと前の記事で「自分からタイムリープものと自己紹介してくる作品も珍しい」みたいなこと書いたんですがこれもそうでした。実はそう申し出るのが普通なんか……?
あらすじの通り作者は『下セカ』の人なんですがそっちに触れたことがないのでギャップにびっくりみたいなことはありませんでした。多分『下セカ』読んだらびっくりするんだろうけど。
さて、肝心の内容なんですが、意外な結末とか衝撃の真実とかに頼ることなく、ひたすらまっすぐ決定された結末に向かって進んでいくという感じでした。タイムリープ、不治の病、仲間集め、バンド、文化祭などなど要素としてはありきたりなものの、主人公やヒロインをはじめとするキャラクターたちがいきいきと描かれており、感情移入しやすいです。展開も王道なんですが、凡庸さを感じさせなかったのは作者の筆力でしょう。みずみずしい青春パワー(なにそれ)に終始圧倒された感じでした。
題材としては1回目で拒絶されてしまった主人公の「伝えてはいけない気持ち」が中心なんですが、恐らく僕の価値観と違ったのか、思ってた結末とは違うのに到達して、「おお、そう終わるのか」みたいな感じでした。なので、読み終えた直後は微妙に違和感というか、「本当にあれで良かったのか?」とか考えてたんですが、エピローグ含めてきちんとまとめられていたし、本作にはあの結末しかなかったのかなぁ、と今は思っています。
あとは全部を語らないところも興味深かったですね。主人公の主観で進んでいくので、ヒロインが何を考えているのかは最後までわからないままですし、校長と楽器店の店長の過去とかも軽く触れられただけで多くは語られません。詳しく知りたいような気も知りますが、物語上必ずしも必要な情報では無いと言うことなんでしょう。
最後に、気になったんですけど、途中ヒロインもタイムリープしてるんじゃないかと思ったんですがどうなんでしょう?