わたし、二番目の彼女でいいから。【感想】
2021年9月29日読了。
あらすじ
俺たちは「二番目」同士で付き合っている――危険な三角関係の行方は?
「私も桐島くんのこと、二番目に好き」
俺と早坂さんは互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている。
それでも、確かに俺と早坂さんは恋人だ。一緒に帰って、こっそり逢って、人には言えないことをする。
だけど二番目はやっぱり二番目だから、もし一番好きな人と両想いになれたときは、この関係は解消する。そんな約束をしていた。
そのはずだったのに――「ごめんね。私、バカだから、どんどん好きになっちゃうんだ」
お互いに一番好きな人に近づけたのに、それでも俺たちはどんどん深みにはまって、歯止めがきかなくて、どうしても、お互いを手放せなくなって……。
もう取り返しがつかない、100%危険で、不純で、不健全な、こじれた恋の結末は。
感想
恥ずかしながら舞城王太郎作品一つも読んだことないんだけど、もう完全に変なイメージついてしまった。舞城王太郎はこの作者にキレて良い。それくらいエッチなシーンはインパクトが強い。脱帽です。官能的なライトノベルってそれもうラノベじゃなくない? あと耳に対してやたらフェティシズムを煽るのは何?
お互いに「一番」の好きな人がいる男女が互いを「二番目」と自覚した上でお付き合いする話。だが、お互いの「一番」にもそれぞれ事情があって……という感じ。整合性をとれない感情が暴走し、混乱していく描写がべらぼうに上手い。前述した「官能的」とさえ言えるようなシーンの描写や、たたみかけるようなセリフの掛け合いなど、文章が作品全体の背徳的で淫靡で倒錯した雰囲気に適したチューニングを施されていますが、それでいながら嫌悪感を催させません。これはコメディ成分によって中和されている部分も大きそう。ただ、心情を語るセリフ回しが説明的すぎる点は時折引っかかりました。
シチュエーションは特殊なものの、ダブルヒロインものとしての構成が上手かったのも印象的です。ダブルヒロインを立てる上でヒロインがどちらも魅力的であることは大前提ですが、クリアするのが難しいことも事実でしょう。本作は、「一番」も「二番」も、ヒロインとして魅力的になるよう、できるだけ主人公に対してイーブンな条件を整えることによって、それを達成しているように見えます。ヒロインを描く上でのバランス感覚に優れている、と言っても良いでしょう。サブキャラの配置も無駄がなく、要所で少しだけヒロイン視点を盛り込むのも上手い。オチまで含めて、シリーズ1作目としての出来はかなり高いと思います。
あとがきでは、「ちなみに作者はこの物語の結末はまだ考えていません。というのも本作のテーマは世間のイメージや定型にとらわれず、オリジナルの恋愛の形を探すことなので、桐島、早坂、橘、それぞれが試行錯誤し、自分たちでその結末にたどり着くべきだからです。」(p.333)と述べられています。この登場人物たちが今後何を考え、どういう行動を取っていくのか、今後が気になる作品でした。