あすはひのきになろう

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魔眼の匣の殺人【感想】

 

魔眼の匣の殺人

魔眼の匣の殺人

  • 作者:今村 昌弘
  • 発売日: 2019/02/20
  • メディア: 単行本
 

 2020年12月25日読了。

 

あらすじ

その日、“魔眼の匣”を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。

出典:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488027964 

 

 

感想

 『屍人荘の殺人』で鮮烈なデビューを飾った作者の第二作。やはり前作をシリーズ化するみたい。前作はゾンビ(ネタバレにつき反転)を利用したいわゆる「陸の孤島」ものですが、今回も同じ「陸の孤島」系のお話。

 今回の話の中心は「予言」で、往々にしてあるようにこの予言がインチキであることを暴くのではなく、予言が的中することを前提とした話運びになっているところが特徴でしょう。前作もそうでしたが、リアリティが重視されるミステリ(しかも本格ミステリ)において、こうした超常的なギミックを果敢に持ち込む姿勢は素直にすごいと思います。しかも面白いですし。

 割と終盤まで謎解きパートに移行しなくて、残りページ数見ながら「これ話たためるんか?」と思いながら読み進めてたんですが、きっちりまとめられていたように思います。トリック自体に大きな面白みがあるわけではないですし、最後の最後にあるちょっとしたどんでん返しも、もちろんすべてを見破ることはできずとも、何となく引っかかっていたところが回収された、という印象で「気持ち良くだまされた!」という感じではありませんが、エンタメ作品としては十二分に及第点だと思います。これはキャラ付けがいわゆる本格ミステリよりもラノベライト文芸系の作品よりで、僕が日頃読み慣れてるジャンルに近しいこともあるでしょうし、文体が読みやすく、描写も複雑さがなく情景を脳内に描きやすいという点も大きいでしょう。一方で、やはり前作と比較すると驚きとか斬新さという点で見劣りしてしまう感は否めません前作のインパクトが強すぎた、というのが正直なところです。

 とはいえ、主人公コンビもまだまだ掘り下げる余地はありますし、大きな物語はまだ始まったばかりなので、今後のシリーズの展開に期待したいと思います。

 蛇足ですが、結構可愛くて気に入りかけてたキャラが初っぱなで死んでまぁまぁショックでした(ミステリで人が死んでショック受けるのは結構久しぶりな気がする)。前作も似たような展開がありましたが、今後はこういう作者だということを念頭に置いて読み必要がありそうです……。