あすはひのきになろう

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ジェリーフィッシュは凍らない/市川憂人(東京創元社)【感想】

 

2021年3月11日読了。読んだのは単行本版。

 

あらすじ

特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。21世紀の『そして誰もいなくなった』登場! 選考委員絶賛、精緻に描かれた本格ミステリ。第26回鮎川哲也賞受賞作。

出典:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488025519

 

 

感想

 捜査が進む現在の視点と、事件が進行する過去の視点、さらに事件のきっかけとなるさらに過去の視点と、結構視点がごちゃつくので読みやすさはやや微妙。ただこれが物語を牽引する要素にもなっているので難しいところ。より気になったのは謎解きに当たる刑事コンビが悪い意味でラノベ的なキャラ付けをされていたところ。いい大人が女性を年齢でイジったり、意味もなく胸を強調させたりする表現はキャラに魅力を付与しないし、作品の雰囲気にもそぐわないと思います。

 一方で、飛行機とも飛行船とも異なる「ジェリーフィッシュ」という乗り物の設定自体は面白いですし、『十角館の殺人』のレベルには及ばないものの、いわゆる「1行でどんでん返し」に挑もうとする気概は感じられました。犯人の動機も個人的には納得感があったし、ミステリとしては十分面白かったと思います。