あすはひのきになろう

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推理大戦/似鳥鶏(講談社)【感想】

 

2021年11月10日読了。

 

あらすじ

日本のある富豪が発見したという「聖遺物」。
世界的にも貴重なその「聖遺物」を手に入れるため、世界中のカトリックそして正教会は、威信と誇りをかけ「名探偵」を探し始めた。
いったい、なぜ?
それは、「聖遺物争奪」のために行われる、前代未聞の「推理ゲーム」に勝利するため。
アメリカ、ウクライナ、日本、ブラジル――。選ばれた強者たちは、全員が全員、論理という武器だけでなく「特殊能力」を所有する超人的な名探偵ばかりだった。つまり、全員が最強。しかし勝者は、たったひとりだけ。
つまり、真の名探偵も、たったひとり――。

世界最強の名探偵は、誰だ?

出典:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353945

 

 

感想

 聖遺物を賭けた推理ゲームに、世界中から異能を持つ「名探偵」が集められるお話。「AI探偵」、「クロックアップ探偵」、「五感探偵」、「霊視探偵」、そして「強奪探偵」(ネタバレにつき反転)。……なんだか非常に西尾維新っぽいですが、さすがに西尾作品よりはちゃんとミステリしています。それぞれの名探偵の小エピソードが第三者視点から語られたあと、推理ゲーム本番という流れになっていて、この小エピソードが結構面白い。いずれも名探偵のキャラがよく立っているし、探偵ごとに事件が用意されているので、結構謎解きの大盤振る舞いな印象がありました。ただ、この構成も難ありと言えば難ありで、肝心の推理ゲームの方が、トリックはともかくストーリーの流れが容易にメタ読みできてしまい、いまいち盛り上がりに欠けたのは残念でした。あれだけ煽っておいてオチが大山鳴動して鼠一匹を地で行く展開なのはちょっと肩すかし感。途中で全員一回失敗するのもすぐわかっちゃうし、読者視点なら犯人も大体の当たりが付いてしまう。名探偵紹介パートをそれぞれ独立させるのではなく、推理ゲームの過程で、推理を通して紹介する、という構成でも良かったんじゃないかなどと思いました。でもそれだとサブキャラと名探偵の掛け合いが見られないし、名探偵のキャラ付けが弱まってしまってたかもしれず、なかなか難しいところです。

 キャラ重視のエンタメミステリとしては面白いですし、小エピソードで各国の文化風俗社会をしっかり取り込んでいるのも楽しい。ただ、もう少し本番の推理ゲームが盛り上がって欲しかった、といったところ。