月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 3/黄波戸井ショウリ(オーバーラップ文庫)【感想】
2021年11月16日読了。
あらすじ
お隣さんとの楽しい毎日はどこまでも続く
松友裕二(まつともゆうじ)が隣に住むOL・早乙女(さおとめ)ミオに「おかえり」と言う仕事に就いて半年。年末に九州の実家へ帰省する予定の松友であったが、仕事のトラブルでミオも九州へ出張すると発覚。出張先でも急遽ミオのお世話をすることになる。
福岡市内の案内やホテルへの送迎などミオのサポートをこなす松友。そんな折、ミオの要望を受けて二人で実家へ行くことになった松友はある頼み事をして――「俺の嘘に付き合ってもらえませんか。実家で彼女のふりをするみたいなやつです」
“偽の彼女”を迎えた松友家は大騒ぎ。それは図らずも、二人の関係に変化をもたらす切っ掛けとなり――。孤独なお隣さんとのアットホームラブコメディ、第3巻。
感想
無事完結ということで、ひとまずおめでとうございます。ただ、やはり展開に苦慮しているのではないかという気がしてしまって、引っかかるところがしばしば。
松友とミオの至った結論自体に異論はありません。これまで、ラブコメを謳いながらも「ラブ」要素は限りなく薄かったですし、最終巻でいきなり「付き合いましょう!」となっていたらその方がよっぽど違和感を覚えていたと思います。一方で、1巻で「契約という形でないと人を信用できない」という性格であったミオが、トラウマを乗り越えてもなお「契約」という形で松友との関係を維持していこうというのは、物語として、また一読者の心情としてもかなり寂しさを感じます。もしかすると、二人の言う「契約」はもう形だけのもので、もう完全に信頼し合ってて大丈夫!という感じなのかもしれませんが、それに説得力を持たせるには、その周辺のシーンの描写とか心情の掘り下げが全く足りてないんですよね。というか、明らかに3巻の中心となる場面はここのはずなのに、この場面が終わったあとにある婆ちゃんのお出かけについて行く話に結構尺割かれてて、ずっと「ここいる?」と思いながら読んでました。いや婆ちゃんの過去話とか急にされても知らんがな……としか思いません。ここに尺使うくらいなら二人の話にもっと紙幅を割いて欲しかった。
こういった全体的に割と行き当たりばったり感の強い展開からはシリーズ全体を俯瞰してみる視点が不足しているのではと思わされますし、やたら料理の話やボドゲの話を擦る引き出しの少なさにはまだまだ課題を感じざるを得ません。ギャグも「相手の言ったワードを繰り返す」ワンパターンのツッコミ(といっていいのかわかりませんが)を多用しすぎていて、食傷気味。1巻の出来は結構良かった(からこそ続刊が出ているのでしょうが)ですし、着想や文章からは磨けば光りそうな気配を感じるだけに、非常に残念でした。