あすはひのきになろう

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僕が答える君の謎解き 2 その肩を抱く覚悟/紙城境介(星海社FICTIONS)【感想】

 

2022年1月18日読了。

 

あらすじ

明神さんの推理が間違ってるかもって、少しも思ってないでしょ?

生徒相談室の引きこもり少女・明神凛音は真実しか解らない。
どんな事件の犯人でも神様の啓示を受けたかのように解ってしまう彼女は、無意識下で推理を行うため、真実に至る論理が解らないのだった。
臨海学校に参加する凛音の世話を焼く伊呂波透矢だったが、ふたりは深夜に密会していた疑惑をかけられてしまう。
立ちはだかるのは35人の嘘つきたち。
誰も信じてくれない凛音の推理を、透矢は証明することができるのか。

本格ラブコメ×本格ミステリ、恋も論理も大激突の第2弾!

出典:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000355964

 

 

感想

 このおっぱい表紙からは想像できないくらいゴリゴリのパズラー小説。前振りとなる4話の謎解きは、やっぱり「そうはならんやろ」感がなきにしもあらずですが、5話のクラスメイトの嘘をひとつひとつ崩していくことで真相を解き明かしていく謎解きはドラマティックで、ヒロインの成長が見られるのも良い。ミステリ展開の中に自然にラブコメ的シチュエーションを持ち込んでおり、両者の融合のさせ方も巧みです。どっちかというと芙蓉先生っぽい考え方の人なので、個人的には主人公の思想とは若干相容れないところもありますが、起承転結がしっかりしている展開で、一転攻勢の展開は程よいカタルシスがあります。

 しかしながら、事件そのものはめちゃくちゃしょぼく、絵的な派手さは欠片もない。時系列と見取り図を頻繁に見返さなければ、もしくは見返していてもなかなか話についていけないところもあり*1「こんなしょうもない事件にそんなにこだわらなくても……」という気持ちにならなくもない。まぁこういうなぁなぁで済ませようという気持ちを糾弾することこそ本作のテーマなので、その構造は上手いと言えば上手いのですが……。また、4話の犯人と紅ヶ峰との関係性はどうなったんだとか、犯人呼ばわりされたり嘘を暴かれたりした割にクラスメイトが主人公たちに好意的だったり、サブまで含めれば一クラス分キャラがいるとはいえ、やや主人公周り以外の人間関係の解像度が低いのは気になります。敵役となる登場人物も、謎解きパートでは小物ムーブが目立ち、主人公の対立軸としては弱いと感じます。まぁ先生がいるからそこは別にいいのかもしれませんが。あとそんなキャラでもないのに急に「運動部帝国」とか「意識高い首長国連盟」とか言い始めた時には笑ってしまった。どういうウケ狙いだよ。

 ただ、ブコメとしてもミステリとしても確かな強度があることは確かですし、主人公とヒロインの成長も気になる。続刊も楽しみに待ちたいと思います。ラブコメの行方の方は……敗戦処理の仕方だけ気になりますかね。ラストのイチャイチャ、押し入れで体張った紅ヶ峰さんがピエロみたいじゃん……。

*1:伏線となる文章をもう一度繰り返してくれるのはありがたい、ちょっと水増し感はあるけど……