あすはひのきになろう

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JKハルは異世界で娼婦になった【感想】

 

 2020年2月10日読了。

 

あらすじ

11月9日、コミカライズ第1巻発売!(新潮社)異色のウェブ小説、ついに文庫化

普通の女子高生・小山ハルは、ある日交通事故に巻き込まれ――気づくと異世界に転移していた。生活のため酒場兼娼館『夜想の青猫亭』で働くと決めたハルだが、男尊&女卑の異世界では嫌なことや理不尽なことがありすぎた。同じく現実世界から来た同級生の千葉、娼館仲間のルペやシクラソ、ハルに思いを寄せるスモーブと出会い、異世界に溶け込みはじめたハルを待つ過酷な運命とは……。絶賛を受けた異色のウェブ小説、文庫化

 出典:https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014373/

 

 

感想

 期待よりもずっと面白かったです。タイトルで敬遠しているなら、ちょっともったいないと思います(当然R-18要素に耐性があるとして)。

  例えばこういう文脈で当時批判されてたんですけど、さすがにこれは的外れな批判と言わざるを得ません。というかこの人*1読み切ってないので当たり前っちゃ当たり前なんですが。『スター・ウォーズ』の宇宙の戦闘シーンで、真空空間なのに爆発が起こっているのはおかしい、といういちゃもんと同じ印象を受けます。重要なのはそこじゃねぇだろ、っていう。

 この作品を僕が一言でまとめると多分「ギャルとオタクはわかりあえない」になります。主人公のハルは、クラスの陰キャオタクの千葉と一緒に事故に遭って転生するんですが、この二人は教室ではもちろん、転生後の異世界でも徹底的に理解し合えないんですよね。ハルが繰り返し千葉を諭しても、千葉が本音をぶつけても、結局はわかり合えない。この点を取り上げて、キャラが不愉快みたいな批判をするのは多分論点がずれていて、わざと彼ら彼女らはそのように描かれているのだから、神の視点にいる読者は彼ら彼女らを批判的に見て反面教師にしなきゃいけない、自己を省みなければならないのだと思います。少なくとも作者の意図はそこにあるのかなぁ、と僕はそう読み取りました。ストーリー展開的にも、イケおじのへんを解決しないあたりこういう読み方で合っている(少なくとも完全な誤りではない)はず……。で、これを上手くエンタメに落とし込んでいるんところがすごい。終盤に向けての伏線もきちんと提示しているし、ギミック自体も十分面白い。その上で、露骨なエロ描写とかなろう的な文脈を隠れ蓑に、痛烈な男女批判を盛り込んでいる作品だと思いました。当然好き嫌いは分かれると思いますし、僕も好きな作品かと言われると容易に肯定しがたい部分はありますが、一読の価値は間違いなくあると思います。

 ネタバレ注意ですが、以下の記事も参考になると思います。というか、以下の記事が僕の言いたいことをより正確に成文化していると思います。

movienobel0000.com

*1:ちなみにこの人の書いた『翼を持つ少女』とか『MM9』とかは面白いので良かったらどうぞ