あすはひのきになろう

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探偵は教室にいない【感想】

 

探偵は教室にいない 真史と歩シリーズ

探偵は教室にいない 真史と歩シリーズ

 

 2021年2月9日読了。

 

あらすじ

わたし、海砂真史(うみすなまふみ)には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。幼稚園の頃から妙に大人びていて頭の切れる子供だった彼とは、別々の小学校にはいって以来、長いこと会っていなかった。変わった子だと思っていたけど、中学生になってからは、どういう理由からか学校にもあまり行っていないらしい。しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼――鳥飼歩は、九年ぶりに再会を果たす。
日々のなかで出会うささやかな謎を通して、少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。
青春ミステリの新たな書き手の登場に、選考委員が満場一致で推した第二十八回鮎川哲也賞受賞作。

 出典:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488025595

 

感想

 あらすじの通り、2018年の第28回鮎川哲也賞受賞作で、受賞時のタイトルは「学校に行かない探偵」。ちなみに前年度の受賞作は今村昌弘の『屍人荘の殺人』。だからってわけでもないですが、ちょ~っと印象に残りにくい作品かなという印象。いわゆる日常の謎を扱った学園もので、探偵役となるのは不登校の少年。短編連作ですし、主要登場人物が中学生ということもあって、中高生にも読みやすそうとは思いました。『氷菓』とか好きな人は好きそう。特に気に入ったのは第一話「Love letter from...」。ラスト一文がオチとして非常に秀逸で、ミステリというよりは青春小説として非常に洗練された一編だと思いました。メインとなるキャラも一見引っかかりは少ないですが、それぞれの短編を通して奥行きが生まれていたところも良かったと思います。その分、探偵役の子の掘り下げがほとんどなかったのは次回以降に回されたからですかね。一方で、日常の謎ものにしても謎がささやかすぎない?と思わなくもなかったです。探偵役本人も言っていましたが、推理というよりは確度の高い推測じゃない?と思うこともしばしば。あとは、他の人の感想見てると「爽やか」って単語をよく見かけ、選考委員にも「読後感も爽やか」(p.215)と書いてる人がいたのですが、個人的にはそうは感じませんでした。何故かと言うとどの話も(三話目は例外かも)謎の原因がさっぱり解決されたわけではないからです。一話は言わずもがなですし、二話も結果的には良かったという話。四話も家出のきっかけは別に解決されてません。そういう点から僕は爽やかというよりも清濁併せ持つ青春とか、ちょっとビターな青春を描いていると思うのですが、どうでしょう。