あすはひのきになろう

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消失グラデーション【感想】

 

2021年9月28日読了。

 

あらすじ

横溝正史没後30年目に現れた衝撃の傑作!
とある高校のバスケ部員椎名康は、屋上から転落した少女に出くわす。しかし、少女は忽然と姿を消した!? 監視された空間で起こった目撃者不在の“少女消失”事件。絡み合う謎に、多感な若き探偵たちが挑む! 
おすすめコメント
横溝賞の選考に関わって長いが、歴代受賞作の中でも三本の指に入る逸品!
――綾辻行人

ひとつ取れば崩れるようなブロックが、誤りなく組み上げられた建築である。感心した。
――北村薫

選考委員を務めるようになって三年になるが、間違いなく、わたしが読んだ中で最高の傑作である。
――馳 星周氏

出典:https://www.kadokawa.co.jp/product/201106000205/

 

 

第31回横溝正史ミステリ大賞《大賞》受賞作品。受賞時のタイトルは『リストカット/グラデーション』。受賞時のペンネームは「眼鏡もじゅ」。

 

感想

 もちろんミステリではあるんですが、青春小説としての側面が強かったです。事件が起こるまでは少々長いですが、登場人物同士の人間関係が紐解かれていく描写それ自体も面白く、さほど気にはなりませんでした。ミステリの醍醐味とも言える「それまで読者が前提として描いていた情景を一気にひっくり返す」手腕は見事で、それがそれまでの細かい引っかかりをきちんと回収しているところも好感触でした。ただ、「ヒカル君」の存在の強引さ≒都合の良さは拭いきれませんし、肝となるどんでん返し自体もそう重ねられるとちょっとリアリティに欠ける、という意見も理解できます。個人的には、オチとなる終章になって主人公が急に宗旨替えしたように見え、そこは強い違和感を覚えました。事件のトリックそれ自体よりも、多感な時期にある登場人物の感情の流れが追いやすく、その描写に優れていたところが大きな魅力だったと思います。