あすはひのきになろう

ライトノベルを中心にいろんなコンテンツの感想を記録していきたいブログ

星降る夜になったら【感想】

 

2021年9月16日読了。タイトルはフジファブリックの同名楽曲から。がっつりネタバレありです。未読の方はご注意下さい。

 

あらすじ

今と違う設定で、 もう一度出会いたかった――。


この身が滅びようとも、佳乃を救いたい――。だけど、

《それだけを願っても救われないことは分かっていた》

花菱准汰の日常は、起きる⇒学校へ行く⇒遊ぶ⇒寝る。ただそれだけ、省エネで適当であることは彼らしさだった。渡良瀬佳乃は真逆。作業BGMでも、この作業に聴く音楽コレ、食べ物のベスト温度はコレと超が付くほどのこだわり派。
そんな2人はとある補修を通じて出会い、恋にも似た感情を抱くようになる。が、佳乃は謎の奇病に伏すことに。……しかし、奇跡は起きた。彼と彼女は他人となり、性格も変更され、生きることが許された。

――両思いが故にすれ違うことを選んだ、最高に美しくも儚い命の物語。

出典:https://mfbunkoj.jp/product/hoshihuru/322002002159.html

 

 

感想

 予めことわっておくと、自分は本作に否定的な立場です。そういった感想を目にしたくない方にはブラウザバックを推奨します。

 漢語や比喩をやたら好む文体で、一人称にしては持って回った言い回しが目立ち、時たま妙に客観的な視点からの語りになるのも気になります。一文を読解するに当たって求められるカロリー量が他のライトノベルの文章よりも多く、慣れるまでは読み進めるのに苦労しました。ただ、これは好みに左右される面も大きいと思います。文章としておかしい、という引っかかりはあまりなかったので。

 内容はMFのレーベルカラーからは結構離れてる感じで、どっちかというとメディアワークス文庫とか新潮文庫nex寄りの雰囲気。彗星というモチーフ、異なる世界線の記憶が混濁するという描写からは、男女二人の恋愛物語という大筋も手伝ってなんとなく映画『君の名は。』を想起されますが、僕だけ? それは置いといて、僕が否定的なのは本作のオチについてです。ここまで明快にバッドエンドなのは近年のラノベとしてはかなり珍しい気がします。ハピエン厨なつもりはありませんでしたが、ちょっとこれはいただけなかった。もちろん自分の趣味嗜好に合わなかったってだけではあるんですが、このオチだとまた主人公が4年後彗星に願って、ヒロインが願って……みたいな延々ループになるんじゃないかと想像してしまって、どうにも宙ぶらりんな気持ちになる。ヒロインのために願った伊澄の行動は(結果的にではありますが)無意味なものに映ってしまう。ヒロインの行動は残される叔父や主人公のことに考えが及んでいない、自分が満足するためのもののように思われ、ちょっと肯定しがたいです。そもそも感情がなくなるとか言ってる割にはメッセージカードとか挟んできたりして、それ感情ないとやらんくね?と思ったり。「感情がなくなる」というくらいならもっと徹底して冷淡に描写して欲しかった。中盤の謎の激重家族パートも生々しい割には必然性が感じられなかった。確かにハマる人ががっちりハマれば感動できるとは思うし、絵を描く時の描写とかは結構良かったけど、全体としては不満の多い作品でした。